第109話:どこか空虚なラブコメ
「……むに」
俺が目を覚ますと、隣にカーマがいた。俺が死んだことで引き払うはずだった駅近マンションも、俺が生きていることで問題は解決。結果、彼女の住居費も問題解決。俺に寄生しているとかそういう話も無いではないが、別に俺は気にしてない。ていうか国民の血税だし。
「ふわ……」
隣で寝ているカーマのおっぱいに顔を埋めて、その体温を感じる。さすがにEカップのおっぱいは気持ちがよすぎる。しかも母性が溢れていて男としてはメイド・イン・ヘブン。
「はー。幸せ」
「それは嬉しいですね」
…………。
「起きてたのか?」
「いえ、先輩がおっぱいに顔を埋めたあたりで目を覚ましました」
「ママみが強かったもので」
「いっぱい甘えていいんですよ?」
ではその通りに。彼女の谷間に顔を埋めて、そのままグリグリと顔を擦らせる。相手はパジャマを着ているのでギリギリセーフではないかと思う。ほら、問題事を英語にしたラブコメ漫画でもやってたし。単行本になるとさらに過激になったが。
「じゃあ朝飯作りますか」
「今日はお前の番だったな」
俺の周りの女の子ってメシマズいないよなー。アキラがフグ毒持ったのはメシマズどころではなかったが。
「ごちそうさまでした」
そして今日も学校に通う。隣には恋堕の天使がいて、イチャイチャしながら学校に通ってカーマも俺が好きだと公言しており、恋堕の天使を推しにしている男子生徒は血の涙を流していた。
「……ネバダ……おはよう」
で、学校につくと、偶然レアスと出会う。こっちもこっちで高嶺の唯華という二つ名を持っており。可愛いというか綺麗な顔をした美少女で、そのおっぱいはデカァァァァァいッ説明不要!!の領域。恋堕の天使と高嶺の唯華。二人が俺とラブコメチュッチュしており、二人のファンは俺に殺意の波動を向けているのだが、まぁ知ったこっちゃないね。
「――――――――」
そして二人とデレデレしていると、何か無意識に聞こえる声が俺の脳内をよぎる。何を感じているのか分からないが、分からないことが不満というか。
「ネバダくん!」
で、当たり前のように俺に声をかけてくる常闇アキラに。
「フシャーッッ!」
「フシューッッ!」
警戒する猫のように威圧するカーマとレアス。月影の女神が俺に近づくのを良しとしないらしい。気持ちはわかる。最終的に俺を殺したのは唯神教でも威力使徒でも無くて、常闇アキラであるのだから。
「おはようアキラ」
「えへー。おはようございますネバダくん」
「ネバダ先輩。早く教室に行きましょう?」
「……昼休みは拙とね」
というか全員教室は違うのだが。カーマは一年。レアスは三年。アキラは同学年だが進学コース。俺は普通科の教室だ。学年一位だけど。
「…………」
そうして学内三大美少女とイチャイチャしながら男子生徒のヘイトを買い、そのまま刺されても不思議はない状況で、俺は席替えのない担任の意向をくんで窓際最後方の席に座っているのだが、これがまぁ退屈で。何か大事なことを忘れているような。俺の教室でのやり取りって誰かとしていた気がするのだが、レム睡眠時の夢のようにフワフワしている感じである。教室で楽しく過ごしていたような気はするが、現実の今の俺は女の敵として教室全体から嫌われているボッチ男子。それでも構わないと思っていた俺は何を心のよりどころにしていたのだろうか?
キーンコーンカーンコーン。
ウェストミンスターチャイムが鳴る。
「ネバダくん」
「ネバダ先輩」
「……ネバダ」
昼休みになると学内三大美少女と昼食をとって。俺はちょっとお高めのうな丼を頼んでいた。マジで米糠高校の学食は何でもありだ。
「ちょっとアキラ先輩? ネバダ先輩殺しておいて図々しいですよ?」
「えー、それは威力使徒による粛清を止められなかった須藤さんに言えることかなー」
「……拙はネバダが好き」
なわけで、俺を取り合って喧々諤々。俺たちは四人で完結していた。
「うーん」
誰か。大切な人を忘れているような。その事に何も覚えていない俺を、どこかで俺自身が否定している。
「……ところでネバダ……ここの展開だけど」
放課後は文芸部室で部活動。バスケ部にはたまに顔を出すが俺の本意はこっち。部室の窓はカーテンで遮り。扉は鍵をかけている。そうして外からは全く見えない状況を創り出して何をしているかというと。
「ネバダくん?」
「ネバダ先輩?」
制服を脱いで、下着姿で俺に迫るアキラとカーマ。レアスは小説を書いているが、やはり制服を脱いで下着姿。ブラとパンツだけの際どいというかレーティングが心配になる部室の光景に、俺はちょっとだけ活ホッキ。
「ねぇえ。エッチィことしませんか?」
「私の方がアキラ先輩よりおっぱい大きいですよ」
そこでマウント取られても。
「それで言ったらレアスの一人勝ちじゃないか?」
「……ネバダになら……いいよ?」
「可愛い!」
俺はギュッとレアスを抱きしめる。Pカップの超乳がタユンタユン揺れて、その大質量を俺がどうしたかって言うとどうしたんでしょうね? 後ろから抱きしめて、スベスベの肌を感じ入る。女の子の身体って抱きしめると幸福に包まれるんだが、果たしてこれはどういう理論なのか。
「安藤先輩ばかりズルい」
「ネバダ先輩。私にも……」
「今はレアスを抱きしめていたい」
「……えへへ。……大好きだよ……ネバダ」
俺はレアスを背後から抱きしめて、そのまま彼女の頬にキスをする。
「……嬉しい……逝っちゃいそう」
「愛してるぞ。レアス」
「……拙も……愛してる」
「「むー……」」
それがアキラとカーマには不満らしく。
「カーマは帰ったら愛でてやるから」
「ネバダくん。私には?」
「とりあえず俺を殺したペナルティは受けろ」
「生き返るなんて思わないじゃないですかー」
「残念だったな」
イモータルキャンセラーで確実に死んだと思ったのは俺も結構覚悟していたが。
「ネバダくん♡」
「ネバダ先輩♡」
「……ネバダ♡」
だから三人とラブコメしながら俺は学校生活を過ごしていたのだが、何か致命的なことを忘れていることが俺にとっては喉の小骨で。




