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第108話:欠けているピース


「先輩!」


「……ネバダ!」


 俺がスタブの一席で優雅にコーヒーを飲んでいると、カーマとレアスが現れた。二人とも息を切らして、ゼェゼェ言っている。よほど慌ててこの場に駆けつけたと見える。


「生きて……いるんですよね?」


「こうして無事にな」


「……なんで?」


「ソレを今俺も考えているんだが……その様子だとカーマもレアスも俺に蘇生魔法を使ったりしてない……よな?」


「魔法使えないし」


「同じく」


「だよなー」


 とにかく何かの魔法効果で俺が蘇ったのは事実で。ではそれが何かとなると。


「うーん」


 とりあえずはめでたいことなので、俺はコーヒーを飲む。


「ネバダ先輩を蘇らせる」


「……どれだけの呪術誓約を」


 言うほど重くはないと思うが。それはそれとして。


「すまんな」


「何を謝っているの?」


「お前らの心に配慮が足りなかった」


「それは……口先に乗ったのは私ですし」


「……ネバダを信じ切れなかった」


「まさかそのことをあそこまで思い詰めるとは思わなかったんだよ」


「ネバダ先輩……」


「何か注文するか? 奢るぞ?」


「ぎゅ」


 そうしていきなりカーマが俺を抱きしめた。


「何してる?」


「ネバダ先輩を感じています」


「……せ……拙も」


 ギュッとレアスも抱きしめてくる。


「ネバダ先輩だぁ♡」


「……ネバダぁ♡」


 いいから飲み物注文して来い。


 巨乳と超乳に押し潰されながら、俺はそのように勧めた。


「で、なんでネバダ先輩が生きてるかって話ですけど」


「カーマじゃないんだろ?」


「何もしていません」


「レアスは?」


「……何も」


「アキラなわけじゃないし。とすると後他にやってそうなのは……」


 ????


 どこかで困惑。何かわからないけど、大事なことを忘れているような。


 月影の女神こと常闇アキラ。


 恋堕の天使こと須藤カーマ。


 高嶺の唯華こと安藤レアス。


 これで全員のはず。他に対象はいなかった。はずなのだが。何か大切なことを忘れているかのような焦燥感。三人が俺に蘇生魔術をかけるかと言われるとそれも無しだが。じゃあ誰がという話にもなり。もちろん陰陽省を通じて魔術師とも知り合いはいるが、蘇生魔術を俺に使ってくれるかと言うと、それもちょっと考えられず。そもそもアンデッドの魔王番台。六十番台の一体である俺ベルゼバブを疎ましく思っているのは何も唯神教の教会だけではない。陰陽省も俺を葬れるなら異存はないだろう。だがそうすると、俺はどうして生き返ったのか。


「――――――――」


 誰かの声が聞こえた気がした。何かの想いをぶつけられた気がした。けれどそれが何かも分からず。俺は困惑だけする。


「どうかしましたか? 先輩?」


 なんかえっらい長い呪文のようなペチーノを頼んで俺の隣に座るカーマ。コーヒーをブラックで頼んでいるレアス。二人が俺を不思議そうに見て、だが俺は。


「いや……別に……」


 何とも思っていない、というのは嘘だが。


「じゃあ監禁していいですか?」


「……拙も……そう思う」


「なんでだよ」


 監禁される意味が分からない。


「ほら、外は危ないし」


「……また殺されるかも」


 無いとは言わんが。んなもんお前らも一緒だろ。


「ネバダ先輩に死んでほしくないの!」


「……ネバダは拙に……どれだけ愛されているか知るべき」


 東京ドームくらい?


「宇宙の膨張くらい」


 大きく出たな。


「とにかくネバダはもう死んじゃダメ」


「一応オルフィレウスエンジンは正常に機能してるから」


「そういう問題じゃないですよ。またイモータルキャンセラーを撃ち込まれたらどうするんです?」


「死ぬ」


「ですから監禁ですよ」


 ですから、と、監禁を繋げるな。


「ネバダ先輩も私といたいですよね?」


「……拙を愛してるよね?」


「ああ、好きだよ。大好きだ」


「このおっぱい。ネバダ先輩以外には触らせたくないんだよ?」


「……ネバダにだけ……揉まれていいおっぱい」


「あのな。だから俺にも性欲はあってな?」


「ここで抱く?」


 さすがに警察に捕まると思う。


「……じゃあ拙のマンションに行こ? ……ずっと一緒にいようね?」


 監禁は嫌だ。俺は自由に生きたい。とはいえだ。それを言ってしまうのもなんだかなぁという話で。俺が殺されてカーマとレアスが絶望したのも事実で。だから二人を悲しませないために、俺は何をするべきなのだろうか。スタブでコーヒーを飲みながら、そんなことを考える。


「でも、それより」


 願いが叶う。それだけは確かなことで。確信として俺の中にあって。


「何で生きているんだろうな?」


「先輩が愛されているからですよ」


「……ネバダは愛を知らないんですか」


 言葉の意味としては知っているが。


「だからぁ。今夜はいっぱいしましょうね」


「言っておくが墓穴効果の呪いは解かれてないからな」


「要するに私が先輩の一番になればいいんです。先輩の中で一番好きな子に童貞を捧げる墓穴効果ですよね?」


 まぁそうなんだが。あんまり公衆の面前でな?


「……挟むくらいはいいよね?」


 ダメとも申しづらいのは、俺も思春期の男の子の証だが。実年齢には二十超えてるがな!


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