第102話:嫌だ
「ッ」
一応俺にも性欲はあって。その性欲をどう処理するか……という話になると、まぁ色々と。
「生臭いね」
バディを務めてくれたエリが、俺のアレを口に含んで、そんな感想。言っておくが、そのアレを含んだ状態でキスするなよ。
「ねえ。ネバダ。あの威力使徒は襲ってくると思う?」
「十中八九」
十中九十でもいいかもな。
「ボクは……どうすればいい?」
「適当に対処すればいいんでない?」
「ネバダが殺されるのに?」
「死ぬ気はないんだが」
俺がそう言うと、裸のままエリは俺を抱きしめた。ギュッと。怯える赤子が親を求めるように。
「……嫌だ」
呟かれたのは純粋な恐怖。俺を失うことを本当に恐れている。
「ネバダがいなくなるのは……嫌だ」
「じゃあ生きるしかないな」
「ネバダさえ肯定してくれるなら……ボクが威力使徒を刺すよ?」
「俺を殺人の言い訳に使うな」
「でも……そうしないと……ネバダが」
だから死ぬ気はないんだって。
「でもイモータルキャンセラーが……」
「あたらなければどうということはない……って格言知ってるか?」
「当たったら?」
「死ぬしかないな」
俺のオルフィレウスエンジンは無尽蔵に魔力を生むので自壊の術式とは相性が悪すぎる。
「そういうことを聞いてるんじゃないの」
じゃあなんだ?
「ネバダは、死んでいいの?」
「まったく良くはないが。死んだらエリのおっぱいも揉めなくなるし」
「ボクのおっぱいを揉むために、ネバダは生きて?」
「考慮はしよう」
「ちょっと口すすいでくる」
俺のアレを口内で味わっているしな。ジャーと水場で水が流れる音が聞こえる。
「ネバダ先輩……」
「……ネバダ……」
心配そうにしているのはエリだけではないらしい。カーマもレアスも同様に困惑している。大丈夫だ。死ぬ気はないから。そう言ってしまえば簡単なのだが。
「でもネバダ先輩が死ねば、エッチできなくなっちゃうんですよ?」
「……このおっぱいはネバダのモノ。……所有権を主張したのはネバダ」
「だから他の男には揉ませるなよ」
「ネバダ先輩が揉んでくれないなら意味ないよ」
「一応死ぬ気はないんだが……」
「で、とりあえずネバダを襲ってくるリンカを殺せばいいんだよね?」
「即物的な解決方法としては、そういうことになるな」
「ネバダ先輩は望んでない?」
「基本的に暴力による解決を俺は望んでいないな」
「非暴力不服従?」
イエスアイドゥー。
「なんでそんなことを主義主張にするようになったの?」
「特に理由はない」
マジで。大切な人を暴力で失ったからとか。ツクモと再会するまで暴力を用いない呪術誓約とか。そういう感じでは全然ない。単に、俺がそのことを大切に思っているだけ。ただ暴力によって解決する手段を俺が好まないというだけ。殴って解決できることは殴らなくても解決できるんじゃないかと俺は思っている。
「聖人を気取るつもりは全然なくて。俺自身もなんでだろうと自問自答している感じだ」
「ネバダはそれでいいの?」
「特に暴力で生き延びようとも思っていないしな」
「だからそういうところがですねー」
ジト目のカーマと、哀愁のレアス。
「ネーバダッッ」
その二人がどうにかしようとするより先に。
「口洗ってきたよ? 歯磨きもしたし」
「だから」
「キスしよ?」
「まぁ構わないっちゃその通りなんだが」
「えへへ。ネバダのとのキス……感じちゃうね」
言って、俺とキスをするエリ。その情熱的な光景に。
「あのー。先輩? 何をされていらっしゃるので?」
「……ネバダ……何してる?」
キス。エリと。それも情熱的な奴。
「ん♡ ちゅ♡ ぁは♡」
俺と何度もキスを交わして嬉しそうにエリは瞳を蕩けさせる。俺がいなくなったらコイツは何を思うのだろう?
「だからぁ。ネバダ……ボクとキスするために死なないで」
「それは意地でも死ねんな」
「ネバダ先輩? いったい何をなさっているので?」
「……なんか……ネバダが遠い」
まぁ他の女とキスしていればな。
「ネバダ。ボクが一番好きって言って?」
「エリを世界で一番愛してるぞ」
「えへへぇ。ボクもネバダが一番好き♡」
「なんでしょうか。脳が破壊されていくんですけど」
「……ネバダ……拙が一番好きだよね?」
「愛してるぞ。レアス」
「私は? 先輩」
「もちろん好きだ」
レアスにもカーマにも適当なことを言う。別に虚偽ってわけでも……あるか。
「でもボクのことが一番好きだよね?」
「エリが一番可愛いよ」
「あは。ネバダが一番カッコイイよ?」
??? ……と意味不明ながら自分の覚える悪寒が何処から来ているのか。ソレを理解できないカーマとレアスは、人間としてはまぁ自然で。
「ネバダ先輩。安藤先輩と私ならどっちが好きですか?」
「面倒だからノーコメント」
「……拙のおっぱいが好きって」
まぁ好きだけどさ。
「とりあえず」
俺はベッドの縁に座って、駅弁の体勢でエリと向かい合っていた。そのまま何度もキスをして、彼女と愛を確かめ合っている。なのにそれをどうしてもカーマとレアスは認知できない。
「俺の寵愛を受けたい時はするんだ?」
俺がからかうようにそう言うと、カーマとレアスは傅いて、土下座の格好をして俺の足を舐める。
「ネバダ先輩♡」
「……ネバダ♡」
俺の足を舐めることを何とも思っていないらしい。人間の尊厳を辱められても、彼女たちはそれより俺の寵愛が欲しいのだから。




