1話 魔王城跡
『ここが、魔王城のある場所』
「おい、見事になんもねぇぞ!」
『魔王を消滅させたから、一緒に消えた? 後ろにあるっていう塔までない』
今私達は、魔王城のある場所へとやって来た。私の住む国の、丁度真北だ。
ここは、荒廃した様な大地で気温も低い。草花も暖かい季節しか咲かないし、だいたいが岩だらけの土地ばかり。寂しい場所って感じもするから、ここに魔王城があったら目立つね。
ただ、今はクレーターの様に大きな穴が空いているだけで、そこに何かがあったなんて想像も出来ない程に、見事に何もなかったんだ。
そして、その中央に何か居る。
「ありゃ、誰だ? 人?」
『ん〜? 良く見えないけれど、ここからでも見えるって事は相当大きいね』
「もしかして、八聖神のお一人でしょうか?」
そう。ここにも八聖神が居るとされている。
その名も、鉄鋼王「ガガール」だ。一番硬く、戦っても傷どころかダメージも与えられない程の存在で、出会うだけならまだしも、そのガガールの機嫌を損ねたり、彼の武士道に反する様な事をすれば斬られる。な〜んて事まで噂として伝わる程なんだ。
つまり、あそこで鎮座しているのも、何か理由がある。無闇に近付いて機嫌を損ねる訳にもいかないし、ここからでも声が届くのかな? 話をしたい所だけれど……。
「まぁ、あいつを退かせばまた城が作れるのなら、俺が何とかしてやるよ! おらぁ! 新魔王様の到ちゃーー」
『だから、何でそんな無計画で無遠慮な事をするんですか!?』
「ぐえっ!?」
思わず尻尾をルリアちゃんの首に巻き付けて締めちゃったよ。
「何すんだよ?! あいつも八聖神なら、魔王の誕生をあそこで待っているんじゃないのか?!」
『それが違っていたらどうするの!!』
何でそう自信満々なんですか。で、着いて来たエデン君はリーシアさんと何か話しているし。
「なぁ、ミレアは何が好きなんだ? とりあえずプレゼントとか、安直だけど何かやっとかないと」
「あら〜いいですね〜えっと、そうですねぇ」
『こっちはこっちで何話してる?』
「はっ!?」
「あ、いえ、ミレアさん……その〜」
全く緊張感無いなぁ、この2人は。仕方ないから、しばらく正座しておいて貰おう。
「ミ、ミレアさん。この姿勢、地味に辛いです……」
「くっ! お前の居た世界のザゼンってやつか?」
『残念、これは正座です。というか、遊びに来たんじゃないでしょう? エデン君の帰り道は作っておかないと。というか、異常な事になっているのを報告してもらって、私達の天恵スキルを何とかして貰わないと。この世界、滅んじゃうかもしれないんだよ!』
「そうそう。父様がもうどうしようもないと判断したら、削除っていうか、捨てると思う。そうしたら、お前等もこの世界の人達と一緒に、仲良く消えてしまうぜ。だから、僕に協力しておいた方がいい。ちゃんと働いてくれたら、父様に口利きして、お前等だけでも消滅はさせないようにしてやるよ」
「くっ……このガキ……」
この前の夜の話で、人が微睡んでいる時にまた「あっ、そう言えば!」なんて言うから、何だと思ったらこれですよ。それは一番最初に言ってほしかったものですね。よく忘れる子だよ。学校でもあれば、忘れ物が多そうなタイプじゃないかな。
それで、その塔の復活というか作成の第一段階というか、これはしておかないと話にならないのが、魔王城の建設です。
新たな魔王が覚醒し、力を順当に上げていけば、その魔力で魔王城を生み出せるみたい。今は、まだ何も出来ないかも知れないけれど、行ってみる価値はあるらしいから、こうして遥々やって来たけれど、八聖神がいるなんてね。
しかも、そんな私達のやり取りを感知して、例の八聖神ガガールがこっちを向いてノシノシとやって来てしまったよ。
何というか、やっぱりその姿は鎧姿で、和風の甲冑と西洋のフルフェイスタイプの鎧が混ざったような、そんな出で立ちをしていました。一言で言うと、ゴテゴテしてる。
「むぅ、その力に先程の会話。なるほど。お主が新たな魔王か」
そしてガガールは、私達を見るとそう言ってくる。それを聞いたルリアちゃんが、腰に手を当てて偉そうにしているけれど、何故か相手が見ているのが私何ですよね。なんで?
「新たな魔王よ。この世界でぐちゃぐちゃになった光と闇の力を、闇を……再び集め固定させるんだ。この世界の安定の為に。我々も、協力を惜しまん」
と、そう言いながら私の前で膝まづいた。待って、新たな魔王は私じゃない!!
『新たな魔王は私じゃないです。この子この子』
あまりの出来事に呆けているルリアちゃんを引っ張ってきて、そう伝えるけれど、ガガールはルリアちゃんを見ると鼻で笑いました。
「あぁ? こいつぅ? あぁ、本当だこいつか。チッ、何だこの弱さ。誕生したてとは言え、こうも弱いと不安しかないな」
「おい、待てこら。何だその態度? どこが武士道に熱いだ。スッゴい態度悪いな、おい」
「当たり前だろう。我々より弱い奴を慕うか。何ならこの狐の娘の方がまだ魔王として成熟しかけているぞ」
『ちょっと待って。何で私が……』
「世界を自分の好きに書き換え、自分に有利なようにしていくなど、正しく魔王たる器だろう!」
反論出来なくなった。図星過ぎました。いや、確かにそうなんだけれど、それには訳が……って、その訳も私がもっとしっかりと意識していれば防げたものだろうから、何というか逃げ場がないや。
「ぐっ、またお前が……」
「まぁ、僕はどっちでも良いが。塔さえ復活すればね」
「私も〜どっちでも〜それで何か変わるわけではないでしょうし〜」
何だかほんわかとしながらリーシアさんまで……そしてルリアちゃんはまた私を睨む。どれだけ睨むだろう、この子。
「それでも選ばれたのは俺だぞ!」
「あ〜そうだな。だから、お前が頑張らないとな」
「へ?」
ルリアちゃんが納得いかないといった様子で話すと、ガガールもそれに合わせて話してきた。
「魔王城を誕生させるには、その小娘が大成せねばなん。とりあえず、周りにいる魔物達を従えていくんだ」
そう言うガガールの言葉に、ルリアちゃんが少しご機嫌になってきた。
あ、そうか。この子がこの世界でやりたいことって、異世界ならではの事をする事だ。それは無双もよし、ハーレムもよし、魔王の活躍でもよし。とにかく異世界っぽい事が出来たらいいんだった。今回のは、そういうイベントっぽい感じだからね。ようやくと言った感じで、ルリアちゃんが元気になってきましたよ。
「は、はは。よしよし、やっとだ! やぁっ〜とーーって、今度はさせるか! リーシア、エデン! ミレアの口抑えろ!」
「ふむぐ?!」
「あぁ〜身体が勝手に!」
「んなっ?! 何だこの強制力?! これがこいつのスキルか!? 強すぎだろ!」
くそ。また私の力を使って、辺りの魔物達をルリアちゃんに懐かせようとしたら、思い切り止められちゃいました。そう言えば、ルリアちゃんにも強力な天恵スキルがあったね。エデン君でも抵抗出来ないとか、どれだけ強力なんだろう? そうなると、やっぱり私達のスキルはちょっと普通じゃないようだ。
『分かった分かった。ルリアちゃんの好きにしていいから、魔王城が完成したら言ってね』
「あ?」
ん? なんか、驚いた表情しているんだけど。2人は何とか腕が動かせるようになって離れたけれど、今度はルリアちゃんが近付いていくる。
「お前も手伝うんだ」
『え、嫌』
「無理。じゃなくて、嫌かよ! 何でだよ!」
『だって、これに関しては本当にルリアちゃんが頑張って貰うしかないじゃん。因みに、私達は魔王の手先になんかなりたくないからね』
「なりたくなくても、俺をこんな風にした張本人だろう? それだったら、最後まで付き合って貰うぞ」
別に友達とかでもないのに、そんな傲慢な。というか、一人じゃ不安だから手伝って下さいって言えばいいのに。頑固だねぇ。




