9話 唯一の帰れる方法
巻き貝達が逃げていったので、後はつつが無く事が進んで、釣り大会も終わりを迎えた。
二人の海賊は……まぁ、どういう採点式かは知らないけれど、同点だったので二人が優勝となった。良いの? それで。
「ちっ、あんの女海賊と引き分けってのは癪だが、まぁいい」
「で、船長どうします? この子達は」
「あ、そりゃぁお前ーー」
陸に上がろうとしたらこれだもん。リーチャの海賊団員皆が、こっちをゲスイ目で見てるよ。
あのね、一番最初に言った事を覚えていないのかな? そうだとしたら、頭悪いね。それか、この程度なら何とか出来るとでも考えたのかな?
残念ながら、無理だよ。だから、私達に近付いて来た瞬間にこう言います。
「何か津波で海賊船流されちゃったね〜救出ついでに国の兵達に捕まるなんて、運が無い人達だな〜」
「おいおい……」
ルリアちゃんがドン引きした様な表情していたけれど、元々こっちは最初から全てを信用していないよ。海賊だもん。だからさ、こうなった時の為に、ちゃんと用意をしていた。
というわけで、海賊達は何が起きたのかってくらいに混乱し、突然現れた津波にひっくり返され、これまた何故か突然現れた兵達に助けられるついでに、1人ずつ順番に捕まっていきました。
「こ、こんな……嬢ちゃん……全く信じてなかったのか!」
「リーチャー! なにこれ! 一体何が……というか何この子?!」
「くっそ、さすが狐だぜ。騙すのもお得意ってか?」
『別にそんな訳ではないけれど、海賊に協力を依頼するんだから、これくらいは警戒していましたよ。バカなのはあなた達です。何もしなければ、こんな事はしなかった。言いましたよね?』
そう宙に書いて見せた瞬間、リーチャさんは観念したような顔になり、そのまま大人しく縄につきました。
というか、言ったよね? 私達に手を出したらどうなるかって、見せたし言ったよね? それすら忘れているのなら、よっぽどですよ。
「何だよ、そのスキルは。僕も知らないし、父様もこんなスキルは知らないと言っていた。本当、お前は何者なんだよ」
それを見ていたエデン君がそう言ってくる。だけど、それは私も知りたいよ。私も知らないし、私にこんな力を与えたのは誰なんですか? あの儀式は皆と変わり無かったのに……何が介入してきたのだろう。
そんな疑問を抱きながら、私達は帰路についた。
◇ ◇ ◇ ◇
数日後、帰宅早々に父親から言われたのは。
「何故問題解決をしにいったはずが、新たな問題を引っ張ってくるんだ」
と、エデン君を見て言われました。
そうは言ってもなんですよ。私だって予想はしていないしね。ただ、これ以上八聖神の所にいって、何か変化がないかって調べる必要は無くなるからさ、メリットはあるはずなんだよ。空の亀裂は消えていないけれど、そもそもその原因の子かも知れないんだから。
「君、爵位級の家柄だったのか……」
『何か?』
「全く上品さがない」
『良く言われますよ。って、そこは今関係ない。理由はある。それも、君が解決したいって言っている部分と関係してる』
「なに?」
父親にエデン君の事を話し、一旦我が家で預かる事になった。私の部屋に行く途中で、エデン君がそう言ってきたから、私もそう返した。
『そもそも、私があなたの父親ではない、別の何者かの意図でこうなっているって言ったでしょ?』
「そうだな」
『確かに、私が目を付けられたのは分からなくもないけどね。だって、転生者だし』
「なにっ?! ちょっと待て、マジか!?」
『え? そんなに驚くところ?』
何か意外な表情で驚かれたよ。だから、私も思わずそう言ったけれど、そう言えばもう一人居たよ。転生者。
『そこのグッタリとして伸びてる新人魔王も、私と同じ転生者。当然、異常な天恵スキル持ちだよ。絶対服従ってやつ』
「あぁ? おかしいぞ。父様は転生者も嫌いなんだよ。何かと鼻持ちならないってさ、嫌ってるんだ。だから、この世界には転生者を使用、利用しないようにって……いや、待て。そうか、お前のせいでもあるけれど、父様が放り出した一番の理由はそれか! 誰かが勝手に、お前達転生者を放り込んだのか!?」
あぁ、つまり勝手に世界設定をいじくられたから、やる気無くして放り投げた。って、なんか本当にラノベみたいな事が……。
『そうなると、尚更君は戻れるの?』
「う、駄目かも……」
聞いた通りに子供の数が多いなら、わざわざ嫌になって放り投げた世界を探そうとはしないだろう。あとは母親次第だけれど、兄弟姉妹が多いとなると、それもまた難しいだろうね。
『君の方の母親は、他にもお子さんが?』
そう書いた私の文字を見て、エデン君はコクリと頷く。とりあえず部屋に通して、適当な所に座らせたけれど、泣きそうだ。
『何人?』
「40人程」
うっわ、予想はしていたけれどそうなるよね。実際に聞くと、やっぱりドン引きしちゃうな。
「はぁ……やっぱ、自力脱出か〜」
「あ、でも。世界をリセットするその杖、それを探してこの世界を見てくる可能性はありますよね?」
「ってなると、また亀裂から目が覗いたりするのか?」
そして当然のように、リーシアさんとルリアちゃんも居ます。まぁ、両親共々に晩御飯くらいとか、折角だから泊まっていってとか言っていたよ。なんか企んでいるな、これ。
「最早それしかないのか……くっそ〜父様に怒鳴られる! それなら、せめてこの世界をマシなものにして、父様の鼻をあかしてやる! その為にはーー」
「ん、ちょっと待て。こっち見るなよ、おい。嫌な予感するぞ」
『同意したくないけれど、右に同じく』
「俺は左に居るぞ? また逆になったか?」
『逆転していないし、そういう意味じゃないよ。おバカルリアちゃん』
「誰がバカじゃ〜!!」
『パカはバカです。何ならもっと若くしてあげようか?』
「これ以上は幼女になるわ!!」
何て揉めているのをエデン君が見ている。それと、微笑ましいものを見るかのようにして、ママンが部屋の扉から覗いていました。飲み物持ってきたなら持ってきたって言って欲しい。
「ふふ。いいわね〜そういうの。今後とも娘を宜しくお願いしますね。特に、そちらの男の子」
あぁ、しまった。今私は女の子だ。エデン君からの謎の熱視線とか、他の子と戯れていたりしたらそうなるか!
『母様、違うからね。それと、この子はちょっとーー』
「あ、そっか。僕がお前を娶れば、その背後探れるし、お前を連れてこの世界から脱することも出来るのか。なるほど、それはそれでアリだな」
『アリじゃない、バカ』
何を平然と話しているんだ、こいつ! サラッと娶るとかお前……。
「ほぉ〜いいじゃねぇか。お似合いだぜ、オ・ニ・ア・イ」
「そうですね〜」
この2人も2人で……この野郎。面白がりやがって。
「あらあら。顔が真っ赤よ〜ミレアちゃん」
『母様、私が男の子だって知っているでしょう!』
思わず感情的になっちゃっている。この状態はマズイ。マズイんだけれど、頭が沸騰する。早くその誤解を解かないと。
「だけど、多分もう二度と戻れないでしょうし。それならもう、産まれた時から女の子って事でもーー」
「私は産まれた時から女の子だ!!!! あっーー」
はい、やらかした!!
あべこべで逆の意味になっちゃった! 私は、私は……産まれた時から男の子だ! って、叫んだ。叫んでしまったんだ……逆になっちゃった。あ、もちろん、そのままそれが真実になっちゃいました。
一瞬だけぼうっとしていた母だったけれど、直ぐに我に返ったようになり、ニコニコと笑顔を向けてくる。
「あら、当然でしょ。あなたずっと女の子じゃない〜」
「あ、あぁ……あぁぁぁ」
こうなると、もちろん父も同じだろう。
「お前、また書き換えて……しかも、今回のは結構ヤバい」
『そう思うなら、その杖で訂正してくれない? というか、早く使い方を見つけてよ』
「無茶言うな。一見なんの変哲もない杖なんだよ。どこかを触るというより、何かを言わないといけないのかも知れないんだよ。そうなると、最早父様しか分からない」
何かもう、この子諦めていない? 君の住んでいた所に戻れなくていいの?
『何か平然としているけれど、良いの? 上に戻れなくても』
「ん? あぁ、それなんだけれど、思い出したんだ。世界の中に入らないと調整出来ないのもあったんだ。その為のメンテナンス用、非常階段通路があってね。そこに行けば帰れるわ」
おぉい、それは早く思い出して欲しかったよ。
『早く思い出してよ』
「仕方ないだろ。テンパってたし。で、まぁ。いつでも帰れるわってなったら、この世界を何としても良くしてやりたいからな。お前達転生者とやらが何で存在しているのか、それを調べて解決してから帰る事にした! てわけだから、お前嫁になーーでぇ?!」
女心の「お」の字も知らないガキンチョが、サラッと飛んでもないことを……。
というわけで、お仕置きとして尻尾で掴んで放り投げといた。まぁ、見た目小学生くらいだけれど、聞けば既に数百年は生きているという。流石だね、神様の家系ってのは。
「いってぇな!! 何でだよ! お前だって何とかしたいんだろ?!」
『そうだとしても言い方ってものがあるんだよ。それと、その例の通路ってのはどこにあるの? 君は帰った方が良いんじゃないの? 親が心配するでしょう?』
「ん〜そうだけどな。実は、これもお前がやらかしてくれてるんだ」
『はい? 私が何をーー』
「その通路ってな、魔王城にあるんだわ。魔王の魔力によって建てられた建物であり、その奥にそびえる塔がそれだった。所謂、ラスボスを倒した後のオマケ要素というか、真のラスボスはそこにいる! みたいな? でさ、お前そのスキル手にして最初に何した?」
「…………」
いや、あの……ヤバい。それは、私から言うのもなレベルだ。というか、何でそう何もかも私がやらかした事が、全部こうも見事にハマるの? この子との事に、見事に全部さ……マイナスの方で……。
「あ〜こいつ、数年前に魔王の存在ごとこの世界から消したからな。今は俺になっているけれど、まだまだ未完成だし、その通路は俺が作らないといけないのか〜」
「御名答〜! 話が早くて助かる。というか、それだけの魔力が必要だけれど、この世界でそんな強大で多量な魔力を持つ事が出来るのはーー」
「魔王しかいない。特性上、負の感情による闇の力が集まっているからな」
「それを浄化する勢いでその塔が作られている。で、何か言い訳あるのか? ミレアちゃん」
『「ちゃん」付け止めて。いや、もう……本当に、何かの力を感じる。意思? こうも都合よくさぁ』
本当に、都合よすぎない?




