あと3日
NTR進捗状況
正、漫才編。
田中 正 :主人公、駿は親友の彼女に手を出さない、ヨシ。
橘 鈴 :幼馴染、寝取られる。
金谷 駿 :イケメン、クラス意外でも人気者、幼馴染とフラグ建築中。漫才が好き。親友の彼女に手は出さない。
「Q助、どうやら最後は僕とお前の勝負になったみたいだな。このデスゲームの。」
「ああ、A太郎。まさか、ずっと協力してきた俺たち二人で殺し合いになるなんてな。」
「・・・。Q助、僕にはやっぱ出来ない。」
「何いってんだよA太郎。お前は生きて帰ってミホにプロポーズするんだろ。」
「でも、お前もミホのこと好きなんだろ、Q助。」
「へっ、黙って勝ちを譲られてればよかったのに。バカだよお前は。」
「お前こそ、最初っから諦めてるなんて。お前のほうがバカだよ。」
「えっ、いや、A太郎のほうがバカだから。」
「は?、いや、Q助のほうがヤバいから。」
「じゃあどっちの方がバカか決めようぜ。」「クイズで。」
「じゃじゃん、それでは第5問です。たかし君はお小遣いを500円もらいました。そのお金で50円のビックリマンチョコを10個買い、シールを転売して5000円の儲けを得ました。この時、シールの平均転売価格はいくらでしょうか。」
「チョット待って待って、たかし君はそれで良心が傷まなかったの。」
「この問題ではたかし君の良心は痛まなかったとします。」
「いやー、でもネットで炎上とかしそうだし、痛んだことにしたほうがいんじゃない?」
「んー、ではたかし君は病気のハムスターを買い換えるために転売したことにします。」
「いや、それはもっと炎上しそうじゃない?もっとこう病院に行く努力とかした方がいいんじゃない。」
妙だ。正はQアンドAのコントを見ながら疑問が膨らむのを抑えられなかった。QアンドAの持ち味は出だしで観客を引き込み、テンポの良いクイズのコントで笑いのリズムを作り出すところにある、と正は分析していた。実際に、序盤はそのとおりに進んでいた。しかし、なぜか途中からテンポは間延びしそれに比例するように観客の反応も芳しく無くなっていく。まるで時間稼ぎをするようないつもと違うQアンドAのコントに正は疑問を確信へと変えた。
「駿、僕はちょっと舞台裏に行ってくる。」
「えっ、ああ。」
既に出番を終わらせていた正と駿は客席側で準決勝の対戦相手のコントを見ていたのだが、ここからでは何が起こっているのか伺い知ることが出来ない。正は駿を置いて大会の運営がいる舞台裏へと戻っていった。
「どうですか?ノッポさんまだ来ませんか?」
「すいません、ほんとに。あいつ、遅れたことなんて一度もないのに。」
体育館の舞台裏は修羅場の真っ最中だった。運営側と思われる大人びた雰囲気の大学生ぐらいの男性にスッコケ二人組の片割れであるハカセが頭を下げていた。手に握りしめたスマートフォンで何度も電話をかけようとしては失敗している。それだけで何が起こっているのか正は察した。
「QアンドAの2人、時間を稼ぐって言ってましたけどもう限界ですよ。下げましょう、見てられない。」
「ええお願いします。あいつら俺たちに義理立てすることなんて無かったのに。」
ハカセが身につまされた顔で運営の男性にそうお願いした。そうか、QアンドAはノッポが遅れてるのを知っていて、だからあんなふうにやたらとコントを引き延ばそうとしてたのか。
客席の方からまばらな拍手が鳴る。どうやらQアンドAのコントが終了したようだ。どこかうんざりしたような響きのその拍手は準決勝の勝負が正と駿に軍配が上がったことを教えてくれた。だけど、こんなの全然うれしくない。
QアンドAが憔悴した顔で舞台裏へ降りてくる。当然だ、予定にないコントをほとんどアドリブで、しかも自分でも面白いとも思ってないものを使命感だけで続けていたのだ。観客の反応がどんどん悪くなっていくのを彼らは肌身で感じていただろう。精神を削られた様子が顔色からも伺える。それだけのことをやり遂げたのに観客からは称賛など与えられない。降ってきたのは敗北の烙印だけだ。
「すいませんハカセさん。俺たち、頑張ったんですけど、俺、俺。」
「いんだよ、お前ら。迷惑かけたな。」
QアンドAのQ助がハカセに謝っている。彼らが悪いわけでもないのに、やり遂げられなかったことを心底悔やんでいる。
「俺たち、ハカセさんとノッポさんに決勝で会いたかったのに。」
「そうだったのか、悪いな。俺らだけ決勝に行っちまうみたいで。」
泣いているQ助にハカセが強がるように言った。ハカセは出るつもりなのだ。相方抜きで、一人であの壇上に登るつもりなのだ。それがどれだけ恐ろしいことか学園祭の駿を見ていた正は知っている。それでも自分を慕い頑張ってくれたQアンドAを安心させるようにハカセは平気な顔をしていた。
せめて、ビギナーズと順番を変わってもらえば。正はそう思い舞台裏で控えている二人の方を盗み見た。そこでは既に運営の男性との言い合いが始まっている。
「順番は絶対変わらないって、そう決めたのは運営ですよね。」
「自分たちの都合で変えるんっすか。」
「いや、でも場合が場合だし。」
「場合って、あいつらスッコケを勝たせたいだけでしょ。そんなの。」
昨日のビギナーズの様子から大会運営にも敵意を抱いていたことはわかっていたが、どうやらその辺りの感情は根深いものがあるようだ。これは説得は無理だろう。舞台裏の空気がどんよりと暗くなっていく。しかし、それを吹き飛ばすようにハカセが言う。
「それじゃあ、見せつけてきますよ。前回優勝の貫禄を。」
まるで、自分に言い聞かせるようにそう言い切るとハカセは壇上へと登っていった。
「それでですね、俺は鬼に言ってやったんですよ桃太郎さん。その腹筋は何LDKなんだい、て。」
壇上ではスッコケ二人組の一人、ハカセだけでコントが進行している。さすがの実力で急場で二人で演るコントを落語風にアレンジして何とか形にはしているが、しかし長くは続かなかった。いつもと違うコントのテンポにファンであるほど戸惑い、笑いのタイミングを図り間違える。結果としてネタの完成度に反して会場の空気は重くなり、自分たちが憧れていたものの最期を看取るようなどこか神妙な雰囲気が漂っていた。
それを舞台裏から正は見ていた。ハカセの首筋に尋常ではない汗が流れているのがよく見える。しかし首から上は何でもないような平気な顔で客席には一切悟らせない。正はその様子から目が離せなかった。
突然、手元が震える。一瞬、何のことかわからなかったがすぐにそれがハカセのスマートフォンの着信だと気付く。壇上に登る去り際に、何故かハカセは正にスマートフォンを託していた。正は迷っていたが着信画面のノッポの名前を目にしてつい出てしまう。スピーカーからはひどい雑音が響いていた。
「あの、」
「ハカセか、ごめん、俺、ちゃんと言ったんだ。見てないって。お前らの彼女なんて見てないって。でもさ、周りの女の子が見てたって言ってそれで不良っぽいやつがキレて、捕まって、俺、だから。」
ノッポの声は涙混じりで要領を得ない。正が名乗るよりも先にまくしたてられた内容は、しかし悪い予感を感じさせるのに十分だった。
「あいつら、見たことある。あの女の子たち、ビギナーズの取り巻きに、いた。間違いない、俺、」
ノッポの声はそこで途切れた。無機質な機械音が電波の途絶を教えている。それ以外に、もう情報はそこからは得られなかった。それでも正は事情が全てわかってしまった。そんなはずない。そう信じたかった。舞台裏の端にいるビギナーズを盗み見る。ニヤニヤと笑いながら壇上のノッポの様子を見ている。あの二人は確かに面白いことが全てだという考え方を嫌っていた。正と同じだ。それでもこの場にいるからには、笑いというものに真剣に向き合っているはずだ。だから、そんなことをするはずがない。
ハカセの、スッコケ二人組のコントが終わった。拍手さえしなければ終わりではないと信じているかのように彼ら二人のファンはただ黙ってハカセが壇上を降りるのを見守っていた。
体育館の扉が開かれる。ガヤガヤとその場にふさわしくない騒々しい高校生たちが入ってきた。いつもとは違う部類の観客、ビギナーズのファンたちだ。そこに紛れてボロボロのノッポがまろび出たのを正は目撃した。それはハカセも同じだったようで駆け寄りノッポを支える。ハカセが何かをノッポに話しかけていたが、しかしその言葉は湧き上がった歓声にかき消されてしまった。ビギナーズのファンたちが割れんばかりの拍手と歓声で主役の登場を歓迎していた。
その様子を正は見ていることしか出来なかった。ハカセから託されたスマートフォンを握りしめ、今はただ。




