あと24日
NTR進捗状況
鈴と映画を見に行く。(三度目)
田中 正 :主人公、駿は親友の彼女に手を出さない、ヨシ。
橘 鈴 :幼馴染、寝取られる。
金谷 駿 :イケメン、クラス意外でも人気者、幼馴染とフラグ建築中。漫才が好き。親友の彼女に手は出さない。
今日は正のクラスの授業で道徳を教えるらしい。いや、高校の指導要綱にそんな科目はないはず。確か倫理という科目になっているはずなのだが、何か世間の流れでもあるのだろうか。
「えー、今日は嘘をついてはいけません、という道徳の授業をしようと思います。」
ホントに小学校ではないんだから、なんだその授業は。正が心の中で突っ込むが、もちろんそんな心の声を教師が聞いているはずもなく授業は進んでいく。
「えー、皆さんはもうご存知でしょうが、嘘は決してついてはいけません。もしも、やむを得ず嘘をついてしまったときは正直に告白しましょう。今日は皆さんに講師の先生が実体験を交えて教えてくださいます。それでは、先生、どうぞ。」
高校の先生が先生と呼んでいる姿はどこかシュールだが、しかしそんなことでわざわざ講師を呼ぶというのには興味が湧く。なんだかんだ言って高校生相手に小学生向けの内容を教えようというのだ、何かしらこちらが想像していないような実体験が聞けるかもしれない。
教室の引き扉が開くと頭をぶつけないように巨漢が注意深く頭を下げて教室に入ってくる。その様はやけに堂に入っていて武闘家が道場に入ってくる厳かで緊張感のある空気を連想させた。
教室にいる生徒たちがゴクリと唾をのむ。巨漢の姿は何の変哲もないスーツ姿だが身の丈が2メートルに迫ろうという体の大きさではそれは市販のスーツというわけではないだろう。オーダーメイドのスーツというものを見たこともない学生たちには違いは分からないが、皺ひとつない立ち姿というものに何か立派な大人というイメージが結ばれる。
こんな人が道徳の授業をする。そんなギャップが生徒たちの興味を否が応でも引いた。どこかでたるんでいた生徒たちの空気が引き締まる。
そんな生徒たちを教壇に立った巨漢がゆっくりと一人ずつの顔を確認するように見ていく。梵百の講師なら聴衆を退屈させないために慌てて話を始めるものだが、むしろこの静寂の間が良い緊張感を与えている。流石は道徳の講師。正もいつの間にかその講師の雰囲気にのまれていた。
巨漢の講師が全員の生徒の顔を見終わったのか口を開く。体型同様に大きな顔が顎を限界まで広く開けると喉の奥、真っ暗な空洞まで見えてしまいそうなほどだ。どこか獅子が獲物を丸飲みにする映像が頭をかすめ鳥肌が立つ。その感想は実に正しい。彼らは未だかつてない時間にこれから飲まれていく。
「女は、クソだ。」
講師は言った。
「いいか、女というのはな、すーぐに顔の良い男になびいて行くものだ。口ではな、顔とか関係ない、性格だとか感性だとか、そういう耳障りのいい言葉を並べる。おっ、なら俺もいけるか、そう思うだろう、そこのお前、性格で選ぶならワンチャンあるとお前も思うだろう。そうだろう、そうだろう。俺の幼馴染もそうだった。合コンに来る男とかみんなチャラくて、なんか苦手。そう言っていた。俺はその言葉を信じて送り出した。どうしても友達に人数合わせを頼まれて仕方なかったと、そう言っていたからだ。大学生にもなるとな、そういう付き合いがバカにならないものだ。ついカラオケで盛り上がって、終電を逃したからそのまま友達と朝まで歌っていた。俺はその言葉を信じて許した。最近ゼミが忙しいから連絡できないかも。ゼミならしゃーなしだな。俺はその言葉を信じて我慢した。全てが間違いだった、全て、」
「あの、先生、先生。あの今日は道徳の授業で、あの、嘘はいけないというお話をしていただく予定だったんですが。」
白熱する巨漢の講師に恐る恐る教師が確認する。確かに今の話はあまり道徳向きとは言えない気がする。
「なに!俺は知らんぞ。俺は高校生に大学に入ってからの正しい性の在り方を教える話だと、そう聞いていたぞ。」
なにやら話に行き違いがあったらしい。授業は混沌としたうちにしりすぼみに終わってしまった。
正には無関係で興味のない話だった。しかしあの後、あの講師と幼馴染の間は修復されたのだろうか、それとも。きっと世の中にで自分の運命ほど先がわからず自由にならないものは無いだろう。この教室の中に今の話が役に立つ人間などいないだろう。だが何かの運命がねじ曲がったとき、もしかしたら今の話で救われる人間がいるかもしれない。それはまだ誰にも分らない。




