あと65日
NTR進捗状況
ヒロインに晄が個人指導している話を聞き正は気が気でない。
田中 正 :主人公、通報しなきゃ。
橘 鈴 :幼馴染、寝取られる。
金谷 駿 :イケメン、クラスでは人気者、幼馴染とフラグ建築中。友達の彼女に手は出さない。
黒田 晄 :汚っさん、女子生徒をいやらしい目で見ることに定評のある男性教員。教育熱心。
黒川 輝 :チャラい、イケメンの取り巻き。ヒロインをヤリ部屋のカラオケ屋に誘い込むも返り討ち。
放課後、やはり昨日の鈴と晄の個人授業の話を聞き正は気が気ではなくなった。鈴の家でも心配だが、今は放課後の特別教室で鈴は晄の個人授業を受けている。あのクラスメイトの話では欲望を抑えられなくなった晄が鈴に手を出すのは時間の問題だ。何としてでも阻止しなくてはならない。正は今まさに個人授業が行われている教室に突入する。
「先生、さっきの授業で分からないところがあるんですが。」
生徒が授業の質問をしに来て、まさか教師が断れるはずもあるまい。完璧な計画に正は自信を持って教室の扉を開ける。
「ぬふ、お前、成績いいだろ。後にしろ。」
ピシャリと晄が扉を閉める。いや、ありえない。それが教師のすることだろうか。
「先生、待って下さい。ほんとに分からなくて。きっと気になって夜眠れなくなるので。」
力ずくで扉を開けようとするが、あちらも全体重で扉を閉めようとしている。体重勝負では勝ち目は無い。だが、こうしていれば晄は鈴に手を出す暇がなくなる。結果オーライだが柔軟に作戦を変え全力で晄の邪魔をする。
「こら、今は特別授業の最中だ。遊んでるならさっさと帰れ。」
体育教師のたくましい腕であっさりと正は扉から引き離された。おのれ。そのまま門番のように立ちはだかる体育教師をうらめしく見る。その背後で扉がうっすらと開き隙間から晄のにやにや笑う癇に障る表情が覗く。思わず正は体育教師を振り切って晄に掴みかかった。ピシャリ。間一髪で閉じてしまった扉に突き指した手を痛がる暇も無く正は体育教師に捕まるとそのまま校門まで連行される。
「どうにかしないと、どうにかしないと。」
さっきから同じ言葉をつぶやくばかりで正には名案の一つも浮かばない。要は正の成績が良いから、そちらの質問よりもより切迫している鈴の指導を優先するという建前が邪魔なのだ。なら成績の悪い生徒に邪魔してもらえばいいのではないか。正はそのひらめきを実践に移すべく頼れる友達にお願いすることにした。
「あっ、俺、国語は得意なんだよ。」
頼れる友達の駿はこういう時に頼りにならない。
「なんでかなー。登場人物の気持ちとかなんとなく分かっちゃうんだよね。」
コミュ力お化けの駿ならそういうこともできるかもしれない。妙に納得のいく理由だったが今はそれはありがたい話ではなかった。
「なんでこんな時に限って。なんで僕は成績が良いんだろうなー。」
大半の生徒にとってはケンカを売っているような発言だがそんなことを気にしている余裕すら正にはない。成績の悪い友人、いやこの際だからただの知り合いでもいい。何とか拝み倒して協力してもらえないものか。
「駿、知り合いにいない?成績が鈴よりも悪くて、もう救いようがないくらいバカな知り合い。」
「ははっ、俺は友達は多いけどそこまでやばい奴は知り合いにもいないかな。」
鈴の成績は割りと本格的にやばい。いやバカではないと思うのだけど、ケアレスミスとかそういうのでバンバン点数が引かれていった結果見るも無残な成績になるのだ。それを超えるとなると、もう本格的になんでこの高校に受かったのか不思議になるレベルの頭が必要になる。そんな人間、いるはずない。
「ここにいるぞ、少なくとも一人な。」
諦めかけた駿と正に頼もしい声がかかる。聞き覚えのある声に正は驚く。いやまさか、そんなはずがない。だって、彼は。しかし声の先には想像通りの男が立っていた。輝だ。
「俺が、お前たちの代わりにあの晄の邪魔をしてやるよ。」
正は理解できなかった。なぜ輝は、いやなぜこいつはなんか頼もしそうな空気を出しているのか。どの面を下げて僕たちの前に顔を出しているのか。
「大丈夫、俺、反省したから。」
反省?反省って何だろう?反省するとどうなるのか。まさか反省すると自動的に許されると思っているのだろうか、こいつは。
「本当か?本当に反省したのか?」
しかし、駿の反応は正とは違った。まるでそこに真実が書かれているかのように輝の眼をじっと見つめ確認する。
「ああ、マジだ。俺、マジで、ほんとに反省したから。」
輝の目に確かなものを見たのか駿はその言葉に深くうなずくと正を振り返る。
「正、輝は反省したって。」
「いや、怪しいだろ。」
正が当然の感想を言う。本当に反省した人間がそんな簡単に反省したなんて言うだろうか。
「マジで、ハンセ―したから。」
今、あいつカタカナで言ったぞ。
「絶対怪しい。信じられない。反省した人間が三回も反省したなんて言うはずがない。」
「大丈夫だ。俺を信じてくれ。俺は友達を見る目だけは自身があるんだ。」
駿がきらきらしたお星さまみたいな目で言う。信じたい。あいつは信じられないが駿のことは信じたい。お星さまという比喩はいつもなら良い意味にしかならないが今はちょっと間抜けっぽさが出て余計に信じられなくなる。だけど。
「今はあいつに頼るしかない。」
正は覚悟を決めた。大丈夫だ。駿もついている。僕たちは教室の前で待機して、もし怪しい言動があれば、その時は。
「大丈夫だ。俺を信じろ。」
「マジハンセ―だから。」
「センせ―。俺マジやばいっす。教科書に何書いてあるのかも分かんないっす。」
輝がばか丸出しで特別教室の扉を叩く。輝の顔を見て体育教師は納得したのか止める様子は無い。音で分かるぐらい嫌々扉を開けた晄は、輝の顔を見て諦めると中に招き入れた。すごいぞ、演技でやっているのならアカデミー賞ものの名演だ。しかし、もし素でやっているのだとしたら。いやそんなはずは無い。
教室の中からは輝のバカな質問が飛び晄の調子が狂っていくのが分かる。今は深いことは気にせずに輝の活躍を祈ろう。




