あと64日
NTR進捗状況
ヒロインと晄の個人授業に輝が割り込み邪魔する。
田中 正 :主人公、通報しなきゃ。
橘 鈴 :幼馴染、寝取られる。
金谷 駿 :イケメン、クラスでは人気者、幼馴染とフラグ建築中。友達の彼女に手は出さない。
黒田 晄 :汚っさん、女子生徒をいやらしい目で見ることに定評のある男性教員。教育熱心。
黒川 輝 :チャラい、イケメンの取り巻き。反省して正たちに協力する。演技派。
晄は明らかに苛立っていた。昨日からの連日の輝の介入が晄の予定を狂わせているのは明らかだ。それは同時に輝が誠実に自分の仕事をこなしていることを意味していた。相当に輝のことを怪しんでいた正は若干納得がいかなかったが、しかし事態がうまく転がっているのだから文句を言う筋合いは無い。そう納得させていた。
そんな順調な滑り出しだったが、晄もそのまま手をこまねいているはずがない。すぐさま次の手を打ってきた。
「あー、ぬふふ。大変に残念なことだが、特別教室の予約を忘れていてな。いや残念なのだが、この部屋を写経部が使いたいと言っていてな。予約を忘れたのはこちらの落ち度であるからここは快く譲らなければならない。で、あるから、ぬふふ、特別指導は鈴ちゃんの部屋でやろうと思う。もちろん、知らん男子など部屋には入れたくないだろうから、輝お前は来ないでいいぞ。」
そう言うと、晄はスキップして鈴の家へと向かう。輝はあっけにとられてそれを見送ることしかできない。
「悪りぃ。もう俺の手には負えないや。」
輝は晄が鈴の家に行かれたらどうすることもできない。むしろここからは幼馴染である正の出番だ。なに、大丈夫だ。鈴の家ならもう何度も行っている。ちょっとお邪魔してついでに晄の邪魔をすればいいだけだ。
「ごめんね、帰ってくれる。」
鈴の母親はすげなく正を追い出した。いや、分かってはいた。元はと言えば鈴と正の関係を疑われたのがそもそもの始まりなのだから、正を家に入れてくれるわけがない。
「どうしたものか。」
何かあれば無理やりにでも入りこめるように鈴の家の前で便所座りで待機する。つきあいの良い駿はそんな正の隣で同じように座っている。
「なあなあ、これ全然分かんないんだけどさ。なあ、正、聞いてる?」
駿が参考書を広げて正に聞いてくる。今、正はそれどころではないのだ。ここで鈴の安全を見守らなければいけないのだ。
よく考えたら座ってるだけで何もすることがないので仕方なく駿の勉強を見ることにした。きっともしかしたら、駿の成績がこの事態を解決するカギになるかもしれないのだから。
正は駿が指さす反応式を見て納得する。
「ああ、フェノールに希硝酸が作用して置換するやつか。」
「えっ、貴祥さんがフェノールに痴漢する?」
なに言ってんだこいつ。確かにフェノールは人っぽい名前だけど、確か名前の由来はベンゼンを意味するフェンにアルコールの接尾語のオールを付けてフェノールと命名されただけだから人物名は関係ないはずだ。
「なんか、洋物AVみたいだ。」
ふざけている駿を放っておいて、正は地面に六角形を書きながら説明する。
「ここに水酸基があるだろ、その隣か反対側の水素が置換されてニトロ化するんだよ。」
「痴漢されてニート化する!酷いじゃないか、ハッピーエンドのAVがいいのに。」
最後までふざけている駿に正はため息をつくと、説明に飽きたのか鈴の部屋を見上げる。今頃、鈴は無事に過ごしているだろうか。
ふと顔を上げると正と駿が座り込んでいるのを鈴の父親が不審そうに見ながら通り過ぎた。その後も窓からこちらをちらちら見ている。これはそのうち警察を呼ばれるかもしれない。正は早急に次の手を打たなければいけないと危機感を持つ。
一人だけ心当たりがある。鈴の家に溶け込むことにかけては右に出る者はいないと言えるほどの人間に。だが、大丈夫だろうか、あいつに頼ることはいくら切羽詰まっているからと言って悪手に過ぎるのではないか。しかし、毒を以て毒を制するという言葉もある。鈴の家を見上げる。カーテンが閉まった部屋の中で今何が起こっているのか見当もつかない。その不安を打ち消せるのなら。
正は決意した。ギャンブルではあるが、今よりは大分マシだ。鈴の両親があいつを受け入れるかどうかは、まあ大丈夫だろう。正の想像通りなら鈴の両親はこの前の騒動のことなどすっかり忘れてころっと騙されてくれるに違いない。正は明日は光が塾に来る日だと確認すると、光を見極めるべく準備に取り掛かった。




