あと76日
NTR進捗状況
ヒロインの家に光が侵入する。
田中 正 :主人公、所詮は小学生ですし。
橘 鈴 :幼馴染、寝取られる。
黒井 光 :小学生、クソガキ
黒川 輝 :チャラい、イケメンの取り巻きだった。ヒロインをヤリ部屋のカラオケ屋に誘い込むも返り討ち。
小学生たちが塾終わりに自習室で騒いでいる。こいつらは完全にここに遊びに来ているが今はそれが好都合だ。正は光が予想通り同級生たちに自慢話をしているのを確認した。
「それがさぁ、すっげぇの、やっぱあの巨乳は母親譲りだった。」
「それじゃヒカくんが提唱してたあの巨乳予想理論は。」
「間違いない、もはや証明されたも同然ですね。」
何のことか分からないが、また、くだらないことで男子小学生の一団が騒いでいる。近くに自然を装って座った正は辛抱強くチャンスを待つ。その間に聞きたくもない情報が入ってくる。
「それで、ヒカくん。やったの?」
「当たり前だろ。昨日は一緒に風呂入るとこまで行ってやったぜ。」
「ひゅー、さっすが、憧れちゃうなー。」
「それで、それで。」
「ピンクだった。」
その日一番の歓声が男子たちの間から沸き起こる。興奮しすぎて鼻血を心配する者、椅子の上に立ちそのまま転げ落ちる者、様々なリアクションで喜びを表現している。その中でただ一人、正だけはシャーペンを握りしめて耐える。ふん、僕だって小学校の低学年の頃はほとんど毎日いっしょに風呂に入っていたんだ。もはや詳細を思い出すことはできないが、うっすらと存在する記憶だけでぎりぎり耐えられる。
「おいおい、もしかして、お前らは勘違いしてるんじゃないか。」
動物園のように騒ぐ同級生たちを光がボス猿の余裕でたしなめる。まるで一人だけ大人になってしまったような、そんな風格。一斉に猿たちが光を仰ぎ見る。
「オレが見たのはお前らがまだ見たもことない奴だぜ。」
その場の誰もが黙り込んだ。光の言葉が意味するものを正確に理解したマセガキはそう多くはない。だが光がとんでもないことを言ったことだけは皆理解していた。そして、光の発言を寸分の誤解もなく理解している正はシャーペンを腕に突き刺し耐えた。こいつは、こいつだけは、ぜったいに、いつか、やってやる。そう固く決意した。大丈夫だ、まだ、大丈夫だ。ここで光につかみかかればすべてが台無しだ。その一念だけで正は耐えきった。
騒ぎ疲れたのか、いつもより早く小学生たちは解散していった。それぞれが自習室の隅に置きっぱなしにしていたランドセルや学習鞄を手に家路についている。光はというと今日も鈴の家に厄介になるらしい。それを止められるものなら止めたいが、今はまだカードが足りない。正はゆっくりと光に近づくと声をかける。
「光。」
「おっ、なんだよ正。俺はこれから鈴んちでお楽しみが待ってんだから、お前のやっかみなんて聞いてる暇ないぜ。」
「いや、これ。落としたぞ。」
ついさっき拾ったようなそぶりで正は光に防犯ブザーを手渡す。よく光が手慰みにいじっているせいで、時々どこかに行ってしまうのだ。
「おっサンキュー。」
光は軽い調子でそれを受け取ると鞄に放り込んでスキップしながら鈴の家へと向かった。
正は自分の部屋で静かにイヤホンから聞こえる音に全神経を集中させていた。聞いているのはもちろん音楽などではない。わずかに聞こえる生活音と人が会話する声、盗聴器に特有の生々しい雑音がノイズ交じりに聞こえてくる。よかった、高い金を出しただけのことはある。
以前、輝と光の会話から情報を得ようと買った防犯ブザー型の盗聴器は届くのが遅く肝心な時には間に合わなかった。だが、今回活躍の場が与えられたのだから買って正解だったと言えるだろう。ここから、光を告発するネタさえ得られれば、鈴の家から追い出すこともできるに違いない。正は気合を入れなおし耳から得られる情報に細心の注意を払った。
「うん、僕のお母さんがね疲れていたときはこうやってマッサージしてあげたんだ。」
「まあ、ありがとう。光くん。」
鈴の母親の声が近づく。声の様子から見て背後に回ったようだ。肩でももんでいるのだろうか。遠くに聞こえるテレビの音がそこがリビングであることを教えてくれる。時間から言って食事中か食後の団欒といったところか。正は情報を取りこぼさぬよう簡単なメモにまとめた。
「光くん、ほんとに上手ね。」
「うん!ほら鈴お姉ちゃんもやってあげるよ。」
「えっ、そんな、私はいいよ。光くんも気を遣わなくていいから。」
そうだいいぞ鈴、そいつは何にも知らないふりして絶対エロいことを考えている。気を許してはダメだ。
「やってもらいなさいな、鈴。最近、肩こりがひどいって言ってたじゃない。」
「そうだよ鈴お姉ちゃん。そんなにおっきなきょにゅ、じゃなかった鈴お姉ちゃん猫背だからきっと肩こりも大変でしょ?」
いけない、鈴のお母さんは完全に光に取り込まれている。頼む断ってくれ鈴。しかし、たしかに最近の鈴は発育が著しい、さぞかし肩に負担がかかっているのだろう。記憶からそこにかかる重力について考えているうちに、イヤホンから聞こえる状況は望まぬ方向へと進んでいた。
「ほら、鈴お姉ちゃん、どうここは?」
「うん、あっ、そこ気持ちいいかも。」
どうやら鈴へのマッサージが始まってしまったらしい。音からでしか状況を把握できない正はわずかな情報も聞き逃さぬように前のめりになる。
「ここをね、こうするとリンパの流れがよくなるんだよ。」
「へ~、そうなんだ。うん確かに楽になったかも。」
「そうだ、僕、いいもの持ってるんだ。」
光がそう言うと鞄をごそごそと探る音がする。そして続いて聞こえたのが無機質な機械音。そう例えるならスマートフォンをマナーモードにした時の聞き慣れた音。だがあの話の流れからまさかスマートフォンが出てきたとは思えない。それに僕が知っているバイブ音よりもずっと細かくそして不穏な音を刻んでいる。
「ほら、すごいでしょ鈴お姉ちゃん、これ。」
「うん、そうだね、でも私にはちょっと強すぎるかも。」
「えっ、でもお母さんはこれが一番好きで。僕がこれでマッサージすると一番喜んでくれるから。」
わざとらしく光の声が曇る。気の良い鈴は慌てたようにフォローしてそのマッサージ器具を使うことを許可する。
「ほら、ほら、すごいでしょ。これ、とっても気持ちいいでしょ。」
「うん、うん、そうだね。あっそっちはいいから。そっちはこってないから。」
「えっ、でもお母さんはここが一番気持ちいいって。ここが一番効くって言ってたよ。」
おい、どこを触っている。鈴のどこをマッサージしているんだ。もはや音からだけでは何が起こっているのか分からない。正は聞いているうちに焦れてきた。頭の中ではどんどんと悪い絵図がパズルのように組みあがっていく。まずいぞ、このままでは。これが正がよく知る展開なら行き着く先は決まっている。
正はスマートフォンを取り出すとすぐさま鈴の番号にかける。呼び出し音すら正を焦らそうとする。
「はい、ダダちゃん?どうしたの?」
「いや、何でもないけど、ほらっ今度の中間試験、試験範囲のことで・・・。」
とにかく話を引き延ばさなければ、鈴の後ろでマッサージを中断された光が不平を言うのが聞こえる。これ以上、あのクソガキの好きにはさせない。
「ねぇ鈴お姉ちゃん。僕、汗かいちゃった。いっしょにお風呂入ろ。」
「そうだね、私も汗かいちゃったし。」
おい、貴様、お前来年には中学だろ。中学生の男が女子高生と風呂入るなんて許されないぞ。僕でさえ鈴と風呂に入ったのは小学校の低学年までだと言うのに。あの塾での光の話しぶりでは、最早見ているだけで光が満足するとは思えない。
「鈴、鈴、そういえば大切なことを言い忘れてた。昨日の授業で間違いがあったんだ、テストで出たら大変だから、今すぐに教えておくね。」
正はそう言って鈴に電話を切らせないよう粘る。そして、その努力はどうやら実ったらしい。
「はっはっはっ、鈴は電話で忙しそうだから、私が光くんとお風呂に入ろう。最近は鈴はお父さんと一緒に入ってくれなくて寂しかったんだ。」
「まあ、あなたったら。」
「もう、お父さん。高校生が父親と一緒に入るわけないでしょ。」
「えっ、いや僕はおじさんの裸とか見たく・・・。」
いいぞ、いいぞ、お父さん。橘家にはまだ最後の防波堤があったようだ。電話越しに光の声が遠くなっていくのが聞こえる。どうやら光の拒否は遠慮の類と判断され鈴のお父さんに強引に風呂につれて行かれたようだ。そうだ、邪な考えを持つものはこうやって痛い目を見るのだ。最後は誠実な人間が報われるようにこの世界はできているのだ。神様もそう望んでいる。正は危機を脱したことで一日中張りつめていた緊張感が抜けていくのを感じた。これでもう、安心だ。
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「ふふっ、正、聞こえてる?」
イヤホンからは光の勝ち誇った声が聞こえる。
「この盗聴器。僕が気付いていないとでも思ったの?」
その言葉に正の背筋が凍る。こいつ、初めから知っていたのだ。こうやって聞いていることしかできない正を焦らして優越感にひたって遊んでいたのだ。
「じゃぁこれから、僕は鈴の部屋に行くよ。今日のマッサージでは随分と焦らしたからね。きっと今頃体がほてって仕方なくなってる。僕がそれを今から鎮めてあげるんだ。まあ、おすそ分けってことで声ぐらいは正に聞かせてあげるよ。」
思わずイヤホンを投げ捨てそうになるのをこらえる。まだ何かチャンスがあるはずだ。それを怒りに任せて投げ捨ててはいけない。
夜の寝静まった屋内をそろりそろりと歩く床を滑る靴下の音だけが聞こえる。そして立ち止まる。続いて扉が開く金属がこすれる音。誰かが起きだす音は聞こえない。毛布をこする衣擦れの音が聞こえる。続いて寝言のように喉を鳴らす音。間違いない鈴の声だ。ならばもう光は鈴の部屋に侵入したことになる。鈴の寝息に時折混ざる悩ましい声を高性能の盗聴器が漏らさず拾う。そして、舌なめずりする声。
「それじゃ、いただきまーす。」
「やめろ!」
自分の寝言で正は目が覚めた。気付くと正は机に突っ伏し寝落ちしていた。緊張から解き放たれたせいか、目を閉じ耳に集中していたせいか。もうイヤホンからは音らしい音は聞こえず、ザーザーと雑音だけが際立つ。時計を見るともう遅い時間だ。今日はもう何も起こることはない。正は嫌な夢を早く忘れるようにさっさと寝ることにした。
新しく短めのものを書きました。よろしければ見ていってください。




