あと75日
NTR進捗状況
ヒロインの家で光が好き放題する。
田中 正 :主人公、小学生相手でも全力を惜しまない。
橘 鈴 :幼馴染、寝取られる。
金谷 駿 :イケメン、クラスでは人気者、幼馴染とフラグ建築中。クラスメイトの彼女に手を出さない。
黒井 光 :小学生、クソガキ。マッサージが得意。
正は休日にもかかわらず気疲れにため息を漏らす。家にいるとついあの盗聴器から聞こえる音に一喜一憂してしまう。昼間から何か起こるはずもないのに気になって仕方ない。暇があるとついイヤホンに手が伸びるのを強制的に控えるため外に出ることにした。
「おっ、正じゃん。」
「あっ、駿くん。」
休日の比較的人が多い駅前でも駿の上背は良く目立った。
「何してんの。俺は人間観察、ちょっとネタを集めにね。」
「ネタって、確か学園祭でやる漫才のだよね?あの、ほら、輝とはあんな風になっちゃったし。誰とやるの?」
立ち話もなんだからと駅前ならどこにでもあるファストフード店に入る。駿はさっそく二階席の窓際に座り駅前を行きかう人間模様を眺めながらストローに口を付けた。
「もしかしたらさ、他に相方、見つかるかもしんないじゃん。だから、その時後悔しないように今やれることはやっとこうと思ってさ。」
駿は窓に目をやったままカッコいいことを言っている。その横顔も相まって実に絵になる。こんなところでクラスの男にそんなことを言うよりはナンパの一つもすれば、もっと有意義な休日になりそうなものだが。きっとそんなことは今までにも色んな友人やクラスメイトから言われているはずだ。それでも駿がそれだけこだわれるのは、他人が決めた価値よりも自分が見つけた価値を信じられる何かがあるのだろう。正はとやかく言わずに黙って駿の隣に座り同じようにドリンクを口にする。
「あれ、あそこの男二人。ナンパしようとしてる。ほらあの女の人、もうすぐ行くぞ。」
駿が指さす先にはいかにも大学生といった背格好の男二人が駅前で暇そうにスマートフォンを眺めている女に近づいて行っている。
「でもあれ、女の人は一人だよね。男二人じゃ一人余るんじゃないの。」
それどころか警戒されるのがおちのように感じる。言外に正がそう思っているのを察したのか駿はその疑問に答える。
「見ててみ。普通男一人でナンパしようとするといきなり声かけるしかないじゃん。でも二人ならワンクッション置けるんだよ。」
駿の言う通り男二人は狙いの女の近くまで来ると、女には声をかけずにその場で二人で話し出した。その二人の会話が気になるのか女はチラチラと顔を上げている。
「あれは今、男たちで女の人の噂っていうか、容姿とかを色々褒めてるんだよ。一人じゃ危ない独り言だけど二人なら自然な会話になるだろ。それを女の人に聞かせることで好感度を稼いでるのさ。」
確かに、あれならそもそも脈が無ければ女はさっさと立ち去るだろうし、それだけ成功率が上がるかも。
「あれは眼鏡の方が本命だな。もう片方はサポートだ、ほら眼鏡が熱弁してるだろ、ああやって褒めてるんだよ。」
女の視線も眼鏡の男を気にしている様子だ。
「ほら、行くぞ。」
駿の言葉を合図にしたかのように眼鏡の男が動き出す。女に話しかける様子はなにやら順調な様子だ。最後のダメ押しだろうか、サポート役の男が後ろから何かを言い、離れていく。
「ああやってナンパ相手のために予定をキャンセルしたって感じを出して、相手に軽い罪悪感っていうの?そんな感じで一押し入れてる。」
まるでそれが決め手だったかのように女は頷き眼鏡の男と歩き出す。恐らく、駅前のちょっと洒落た店で昼飯でもとるんだろう。
流石の観察眼というか分析力というか、駿のその能力をもう少し勉学にも振り分けられれば多少は成績面の不安も無くなるだろうに。しかし、それもきっと余計なお世話になるだろう。正はそんなことは言わずに、今のナンパについて感想を言う。
「なんか、触媒みたいだ。」
「触媒?何だっけそれ、確か化学であった。金属?だったっけ。」
「触媒は別に金属だけじゃないけど。触媒ってさ化学反応が起こりやすいようにサポートするんだよ、自分自身は何にも変化しないんだけど。例えばハーバー・ボッシュ法っていうのがあってさ、それは窒素(N2)と水素(H2)を反応させてアンモニア(NH3)にするんだ。だけど普通じゃ窒素は中々乖離しないから反応は進まない、そこで鉄系の触媒が乖離に必要な活性化エネルギーを小さくすることで、反応が進むようになるんだよ。ほら、あのサポートの人は結局さっきのナンパで何も変化してないけど、サポートの人が上手く立ち回ることであのカップルができるのに必要なエネルギーが小さくなったろう。」
「ははっ、だから触媒か。なるほど。」
駿はその話を聞くと何やらスマートフォンでメモを取り出す。何かネタでも浮かんだのだろうか。手持ち無沙汰になった正は窓の外に目をやる。そこに見覚えがある顔があった。確か、そうだ、間違いない。あれは光の両親だ。まるで新婚のように腕を組み歩いている。例えるなら子供が遊びに行っていて丁度いいから二人でデートに出かける、そんな印象を受ける。思わず正は手を握る。やった。あの光が言っていた両親の喧嘩に巻き込まれて家にいられない、という証言に完璧な反証ができる。見失わないうちにスマートフォンで写真を撮り、顔がちゃんと映っているか確認する。
「どうやら、悩みは晴れたみたいだな。」
「ああ、うん。ありがとう。ちょっと用事ができたから僕、もう行くね。」
残りのドリンクを飲み干すと正は席を立つ。駿は何も言わず手を上げて別れの挨拶をした。
まるで最初からそれが目的だったかのように、駿は悩み顔から答えを見つけ晴れ晴れとした顔に変わった正に何も聞くことなく見送った。




