ご利用は計画的に・・・
前回のあらすじ(簡略版)
【ファレム】を会得したは良いが現状では使い物にならず
レベルを上げつつ討伐クエストを行っているためクエスト失敗が続く
テコ入れのため戦力補強としてレーネに戦闘に参加してほしいと頼むが
持っていた聖剣をお腹の足しにするため質に入れてしまったので戦えないらしい
仕方がないので聖剣を取り戻すために質屋へと向かうのだった・・・
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル15
チャームレベル20
ファレムレベル3
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
質屋に到着すると店頭のショーケースの1番よく見えるところ所謂目玉商品と言った感じでレーネの背丈ほどあるんじゃないかってぐらいの大剣が飾られてあった。
それはもう神々しいと言うか、別に光を放っているわけじゃないけど、オーラというか、そう言うものが見えるほどに美しい刃渡りをしていて素人の僕が見ても、これヤバイ奴だってわかるぐらいに周りの商品から浮いていた。
「あれでしょ」
「あれですね」
「ん? なんか怒ってない?」
「ユット、あの聖剣を質に入れた時の金額は1万5000ジェニーでした。今の金額を見てみてください、420万ジェニーですよ。いったい何倍で売っているのですか! RPGの世界でも精々10倍くらいでしょうに、42万あれば高級料理をお腹いっぱい食べられたのに……やはり転売屋は悪、はっきりわかりましたね」
「気持ちはわからなくもないけど、(というか、レーネのお腹を高級料理で満たすのに42万もかかるのか、絶対、叙〇苑とか近づかないようにしよう、こっちにあるのかわからないけど)そもそも聖剣を売るって行為自体、僕には理解できないからね。元をたどれば働かずに観光してたレーネが悪いんだからね」
「っく、私の足元を見て安く仕入れるために安い査定をした店主に1発入れたいところですが、今は置いておきましょう。あの金額を見る限り取り戻すのは現状不可能ですので諦めましょう」
「諦めるの早すぎだよ! たしかレーネが質屋に聖剣を入れて2ヶ月ぐらいなんだよね?」
「ええ、そうですけど」
「それなら取り返せると思うけど」
この姿の僕じゃ店員さんに言ってもあしらわれそうだったので代わりにレーネが交渉へ行ったほうが良いと思ってレーネにどういうことか説明した。(そもそも取り返す気がないレーネは乗り気じゃなかったけど)明らかに安く査定された怒りもあって、店内に入り僕の代わりに交渉を始める。
「ちょっといいでしょうか? 店頭の大剣を預けた者ですが、何故大剣をすでに売りに出されているのでしょうか?」
「ああ、あの時の方ですか、売りに出すも何もあれを渡されたのはあなた様じゃないですか、つまりあの剣はすでにこちらの物、それを私どもが売るのは普通だと思いますが?」
そんなに大きいお店じゃないからなのかもしれないけど、店員さんが1人しかいないところから店長さんと思われる中年の男の人が売り場にいて、その人と今レーネは話している。口調こそ丁寧だけどクレーマーに慣れているのかな? 店長さんからは決して折れないみたいな静かな圧を感じる。
「あれは今のところこの店に『預けた』だけです。勝手に売られては困ります」
「たしかに預かっています。しかし、逆に言えば私どもはあなた様にお金を貸しているわけです、そのお金は今持っておられるのですか?」
「それは……ありませんが」
「そちらは我々から借りたお金をすでに使い、こちらには担保として預けた物を売るなと言うのはおかしいのでは?」
まぁ、たしかに店長さんの言うこともわからなくはないけど、一応こういう店にはルールがあるんだよね。
「『流失期限』はご存知ですよね」
質屋さんなどには流失期限と言うものがあって基本的には3ヶ月くらいは預けた物を売りに出さずに担保として預かっていなければならなくて、その間に借りた金額+利子を返すことが出来れば預けた物を取り返せるというわけ、その流失期限を過ぎれば預けた物はお店の物になるから好きに売ってもいいってことになる。
「……当然心得ております、当店でも期限は約3ヶ月間となっていますが、貸した金額は1万5000ジェニー+1ヶ月につき利子が5000ジェニーですので、現在は3ヶ月目なので3万ジェニーになります。失礼ですが、あれほどの逸品を質屋に持ってこられるようなあなた様に3万ものお金を返せる返済能力がないと判断し、ああして店頭に並べていると言うわけです」
「たしかに、現在の手持ちでは取り戻すことは出来ませんが、ルールはルール。守ってもらわなければ憲兵に言いますよ」
「はぁ、わかりました。期限は今月末まででしたね? それまでは売らない事を約束しますが、店頭に並べるのは変えませんし、現在興味を示されている方がおられますので予約は受け付けます、こちらも商売ですので」
一応契約書を見せてもらったけど、たしかに預けた物を店頭に並べてはいけないとか予約を取ってはならないとかは明記されてなかったからこれは仕方ないかな、聖剣だもんね(この店長さんは聖剣とは知らないだろうけど)、あれを店頭に置いてたら通る人の目を惹くし、『こんなすごい物を置いてますよ』って宣伝効果にもなるし、高価なものだから買いたいってお客さんを逃したくないもんね。
とりあえず、売りに出さないことを約束してくれたからよかった。正直こっちの世界で通用するのかわからなかったけど、いつかレーネが言ってたみたいに『どこの世界(社会)も大して変わらない』それに賭けてみたけど上手くいってよかった。これで無駄に420万も払わなくてよくなったから(まぁ、そもそも払えないし、僕らにとっては3万でも大金なんだけど)とりあえずは良しとして、僕らはお店を後にしたわけだけど……。
「ユット、聞きましたよね。あの店長と思われる人物の最後のため息、しかも『どうせお前らなんかに返済できるはずもないのに面倒な客だなぁ』的な、あの表情、ははっ、許せませんね」
あっ、これマジギレしてる時の顔だ。冷静そうな顔ではあるけど、僅かに笑ってる表情の奥に潜む怒りが漏れ出してる。あれはたしか数日前だったかな、公園でお菓子を食べていた10才ぐらいの子供に意地悪をしようとしたのか、17才ぐらいの男子がそのお菓子を取り上げてイジメていたところに偶然出くわし助けようか迷っていたとき、レーネは颯爽とその男子からお菓子を奪い返すと、男子がキレて殴ってきたんだけど、それを簡単に払いのけたんだよね(その際、男子の腕が曲がっちゃいけない方向に曲がってたけど)痛みにうずくまってた男子に向けた顔が今の表情だったんだよね、その時に初めてレーネがキレてるところを見たんだよ。泣きながら逃げて行く男子、子供に感謝されるレーネ、その時はカッコイイと思ったし感動した。あのレーネにも優しいところがあるんだって、でもその後、助けたお礼にお菓子の半分を子供に要求したんだよね、その時の子供の『えっ』って感じの表情は今でも忘れない。
ああ、勿論急いでレーネを叱ってからお菓子を取り上げて全部子供に返してあげたよ。(ふて腐れたレーネの機嫌を直すために5000ジェニーも夕食でかかったけど)。
「それにしても、よく流失期限なんてものを知っていましたね、もしかして、私の下着とか盗んで質屋(Hな商品を扱う方の奴)に入れていたとかですか?」
「してないよ! (というか、レーネの下着何て売れない……いや、この容姿ならきっと高値になっちゃうんだろうな、内面を知ってるだけに何か釈然としないけど)僕の母が質屋で働いていたから知識としてそう言うことを知ってただけだよ」
「ああ、なるほど……気を悪くしましたか?」
「えっ?」
どういうことだろうって考えてみたけど、多分、僕の母が質屋で働いてたことを知らないレーネは質屋のことを悪く言ってたから、僕が内心傷ついてしまってたのではないかってことなんだと思うけど……、実際のところ冷たいと思われるかもしれないけど、元の世界での母が悪く言われたとしても特になんとも思わないんだよね、やっぱり思い出が無くなってるってことが大きいんだと思う。まぁ、それに関して少し寂しいと思わなくはないけど、って、そんなことよりも。
「レーネ、何か変な物でも食べた? 拾い食いをしちゃ駄目だって言ったでしょ」
そう、あのレーネが僕のことを気遣ってしおらしいことを言うわけがない、正直に言えば驚いたってこともあるけど、普通に気味が悪い。
「もしかしてユットは私のことを、気の遣えないお姉さんだと思っていますか?」
「ううん、思ってないよ」
「そうですか、それはよかっ――」
「普通に(容姿以外は)どうしようもない奴だと思ってるよ」
「なっ、予想以上に私に対しての好感度が低いなんて、よよよ、さっきの店長への怒りだけじゃなく、ユットに酷いことも言われてしまった私の心を修復するにはこの前へ行った食べ放題ビュッフェ5000ジェニーコースへ行くしかないようです」
「行かないよ、と言うか、これから3万ジェニー貯めないといけないんだから食費は1日500ジェニーにするから」
嘘泣きをしながらチラチラとこっちを見てくるレーネを無視して僕は歩き出す。
「えっ、いえいえ、嘘ですよね、冗談ですよね。食費を削る何て、私へのドッキリなのですよね、も、もう、驚かせないでくださいよ、ユットは意地悪ですね1人食費500ジェニーなんて死んじゃいますもんね」
僕の後を追いかけてきたレーネは焦った様子で僕の後頭部に話しかけてくるので僕は足を止め振り返る。
「『2人』で500ジェニーだから」
まるで、重刑を判決されたかのように絶望に満ちた表情へと変わったレーネは膝から崩れ落ち、四つん這いになると『体売ろっかな』っと呟いたのでパシッと頭にツッコミを入れ宿へ連れ帰ったのだった。
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