ファンタジーに聖剣は必須だと思う
前回のあらすじ(簡略版)
留置所に入っていたレーネを迎えに行き
捨てた防具を拾いに行こうとしたところ
その防具を拾った冒険者が目の前を通り過ぎたので
対価としてパンツ(ほぼ詐欺に等しいので詳し内容は割愛)を
渡して防具を無事取り戻すことに成功する
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル15
チャームレベル20
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
「戦力が足りないよ!」
「いきなりどうしたのですか? ユット」
「いきなりじゃないよ、ここ10回討伐クエストをやってきたけど、成功したのは0だよ! これじゃあ生活もままならないよ」
ギルバーにクエスト失敗報告をした帰り道、僕は肩を落としながら上手くいかない異世界生活の愚痴を言っているところ。
「仕方ないじゃないですか、【ファレム】を使わないと【ファレム】のレベルが上がらない→レベルが上がらないと討伐クエストでモンスターを倒せない→モンスターが倒せないから基礎レベルが上がらないと言うわけで兎にも角にも唯一の攻撃魔術である【ファレム】を鍛えないことには何も始まりませんから、お金に関しては定期的にお使いクエストをこなしてギリギリ凌いでいますし、何とかなるのでは?」
「なんとかはしてるけど、これじゃあ効率が悪すぎるよ、このペースだと【ファレム】がまともに使えるようになる前におじいちゃんになっちゃうよ」
「それは大丈夫です、その前に打ち切られていますから」
「それ全然大丈夫じゃないよね! なんとか戦力を補強したいんだけど」
「パーティーメンバーでも募集しますか? 募集要項は可愛くて、スタイルが良くて、性格が良くて、男性経験がなくて、強くて、お淑やかで、健気で、気さくに話してくれて、ちょっとしたことでも『主人公さん、凄いです』ってキャバ嬢並に褒めてくれて――」
「ストップ、ストップ! 募集要項が多すぎるよ、それに後半のほうはなんか私怨が籠っていると言うか、嫌味にしか聞こえないよ!」
「でも、男の人はこういう女子好きじゃないですか、だいたい作中で人気になるのはこんなキャラですし、あー、でも私とキャラが、かぶ――」
「それはない」
おそらく真顔になっているであろう僕の顔をジト目で見てくるレーネは仕切り直しといた様子で口を開く。
「まぁ、それは置いといて、単純に戦力としてならユットが魔術師ですし、近接系のジョブが良いですね」
「たしかにそうだけど、パーティーメンバーを増やすのもアリなんだけど、それよりも手軽な方法があると思うんだけど」
「ん? なんですか?」
「いや、レーネが戦闘に参加してくれればいいんじゃないの? ずっと言おうと思ってたけど、レーネの動きとか見てる限り、どう見ても僕より基礎ステータス上だよね?」
「そうですね、別に隠していたわけじゃないですけど、ユットよりは上ですね」
「じゃあ、なんで戦ってくれないの? レーネが戦ってくれればもっと効率上がると思うんだけど」
「そうは言っても、私の戦闘能力なんてたかが知れてますし、役に立たないと思いますけど」
「それでも僕よりは強いんでしょ、それなら役に立たないってことはないよ。今までは僕の【ファレム】のレベル上げのために戦わなかったんだと思うけど、これからはレーネも参戦したほうがクエスト失敗も無くなると思うし、効率的にいいと思うんだけど」
「そうかもしれませんけど……」
「(この煮え切らない感じは……)レーネ、もしかして何か隠してる?」
「そんな主人公が別の女と話していたことを疑う嫉妬深いヒロインみたいな目で見ないでくださいよ」
「そんな目はしてないよ、いつもは効率的に物事を進めるレーネにしてはこれだけクエスト失敗が続いてるのに参戦してこないし、する気もないみたいだし、なにか理由があるんでしょ?」
「……そうですか、感づかれちゃいまいしたか、あまり言いたくはなかったのですが仕方ないですね。私は知っての通り人間じゃありません。人間じゃない者が人間の造った世界に干渉することはなるべく避けないといけないのです。それが天界で定められたルール。勿論今回は管理者である母の手伝いなので例外の中にありますが、この世界にとって悪影響がないとも言えませんのであまり干渉したくないのです」
「そうだったんだ、(意外に考えてたんだな、てっきり面倒だとかろくでもない理由だと思ってたけど)」
「はい、そうなのです。決して面倒だとか、そんなことは思ったことはありません」
あまりに真剣な口調でお淑やかに話すものだからまた迂闊に信じてしまうところだったけど、この流れ的に怪しいと思った僕の目の前に定期連絡時に現れるリス(通信機)が目に入る、もう定期報告の時間だったんだ、ちょうどいいか、女神様に聞いてみよう。
「えっと、ユット? どうしてそのリスを呼ぶのですか?」
「ああ、もしもし、女神様。ユーネストです。お疲れ様です。定期報告については特に進捗はないです、それと今聞いた話なんですけど、レーネってこっちの世界で戦えないみたいなんですけど、それって天界のルール的な縛りとかあるんですか?」
「はぁ? なんの話よそれ? そんなわけないでしょ、なにせ戦えるように私が管理している聖剣とか、武器を渡してあるんだから戦えないルールなんてある訳ないじゃない」
「……なるほど、そうですか、わかりました。問い詰めておきます。それじゃあ、また」
そう言って僕は通信を切るとリスは相変わらずそそくさとどこかへ消えて行ってしまう。
さてと、目の前で脂汗を流しているレーネを問い詰めるとしますか。
「いや、その、実は、ユットがこの世界に来る前の事なのですけど、お金が無くなってしまって、お腹も減って餓死寸前のところまで追い詰められた私はやむなく、母から預かった聖剣を泣く泣く、質に入れてお金を手に入れ難を凌いだと言うわけです」
「(いやいや、空腹を凌ぐために聖剣を売る何てヒロイン聞いたことないよ!)じゃあ、どうして嘘をついたの?」
「うっ、それは、あれです。きっと優しいユットのことですから、このことを話せば聖剣を取り戻そうとしてくれるに違いないと思って、そんな迷惑をかけるわけにはいかないですから」
僕を気遣ったような儚げな笑みを浮かべるレーネ、その笑顔はまるで主人公をそっと支える大和撫子がついた優しい嘘だと言いたいように見えた……けど、もう、そんな笑顔に騙される僕じゃない。
普通なら、『武器を質に入れたので戦えません』とか言うに決まっているのに言わなかったのはきっと戦いたくない理由があったはず、僕の予想だけど、レーネの性格上面倒くさいからとか、そんな理由だろう。ということは、その聖剣を取り戻せばレーネも戦闘に参加せざるを得ないってことだよね。
「そういうことなら、聖剣を取り戻そうよ。そうしたらレーネも戦えるでしょ?」
「えっ、いや、そこまで迷惑をかけるわけには、いきませんので」
「いやいや、そんな水臭い事いわなくても」
「いえいえ、お気になさらず、無理しなくても大丈夫ですので」
「(こいつ、どんだけ戦いたくないんだよ)じゃあ、しょうがないね。聖剣を取り戻せないってことは、女神様からの預かりものを売り払ったってことだから女神様に言わないとね」
「そ、それは別に言わなくてもいいのではないですか?」
「いやいや、レーネが戦えなくなったことの理由を話すときにどうしても説明しないといけないでしょ、報告義務って奴?」
「それなら、こういうのはどうでしょう? モンスターに襲われ、激闘の末、ユットを守るために仕方なく聖剣を放棄せざるを得なくなったので放棄したということで」
「ん? レーネにしたら聖剣を売ったことは正統なことなんでしょ? だったらそんな嘘つく必要ないんじゃない? 堂々と食費のために売りましたって言えばいいでしょ?」
「……なるほど、交渉と言うわけですね。共犯になってほしいなら賄賂(見返り)を寄越せと言うわけですね」
「いや、そう言うわけじゃないけど」
「わかりました。それじゃあ、今晩下着姿で寝ます。それでどうですか?」
「どうですかって言われても」
「っく、足元を見ますね。仕方ありません。ここは奮発して、いざという時のための勝負下着を着ます、ここだけの話結構いやらしい奴です、具体的には黒で『スケスケだぜ』ってくらい何がとは言いませんけど見えます。更に今なら『胸を少しくらいなら触って良い券』をつけます。どうです? 私ぐらいの美少女のいやらしい下着姿を見られて胸も触れるなんて機会そうそうないですよ?」
スケスケって、その台詞で透けて見えるのは骨格じゃん、とかツッコミたくなりながらも、そんなハニートラップとしてこれ以上わかりやすい物はそうそうないわけで、5秒悩んだ結果、質屋に行くことにした。
えっ、5秒も悩んだのかって? たしかに今の僕にレーネのいやらしい下着姿なんて意味が無いように思われるかもしれないけど、考えてほしい、容姿『だけ』はこの世界と元居た世界含めてレーネ以上の女子を見たことが無いぐらい凄い可愛いんだよ、そんな娘のいやらしい下着姿を見れて胸も触れる。そんな魅力的な提案を即答で拒否できるほど僕は男を捨てては無いんだよ。ショタだろうが(残念なことにそんなレーネの姿を想像しても反応はしなかったけど)男は男、正直出会ったばかりの時にこの提案をされたら危なかったと思う、えっ、『出会った時にはすでに口の回りトマトソースまみれの女子を捨ててる系美少女でも』だって? わかってない、全然わかってないよ、たしかに普通はちょっと引くレベルだよ、もし、学校の友達とかで少し好きかもってレベルの女子がそんなことしてたら一瞬で『ないわ、あれはない』って思うレベルでパスタを貪ってたよ。でもね、それさえも可愛いんじゃないかって一瞬思わせるぐらい外見『だけ』は凄いんだよ。いつもレーネに酷いことをされてる僕でもレーネを褒めるとしたら『強いて言えば外見』って言うぐらい、可愛いんだよ。もしかして【チャーム】使ってるんじゃないかって時々思うぐらいには可愛いんだよ。だから僕は悪くない。頑張って稼いだお金を無断で使われたり、一角兎を可愛いと思っていた僕にその肉を使ったコロッケを食べさせたり、予想外の大物だった、縞猪に遭遇したときもピンチになるや否やすぐに僕を見捨てて逃げようとしたり、って、今思い出したら結構酷い事されてるよね僕、とにかく、その他諸々、何度も騙されてきたけど、それでも一瞬レーネのいやらしい下着姿想像して見てみたいなんて思ってしまった僕は悪くない、そう、僕は男子、これが健全なんだよね。
「ユット? さっきからどうしたんですか? ずっとブツブツ独り言を言ってますけど」
「……何でもないよ」
自己嫌悪+後悔(少しだけ)しながらもこのレーネのハニトラに一瞬負けそうになった僕をなんとか正当化しようと自己擁護しながら質屋に向かうのだった。
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