表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

火急の知らせ

来ていただいてありがとうございます!



「今年はいけるはずです!ムスタ豆粉を前面に押し出していけば!」

「そうですね!トゲトゲハーブの白い花が一面に咲く様は圧巻ですから!食べられないけど」

「咲き始めは白くてだんだんと青くなっていくのが綺麗ですよね。食べられないですけど」


ノールタウンでの春のフラワーフェスティバルの打ち合わせは白熱していた。じつはこの春のお祭りは去年初めて開催したんだけど、建国祭に合わせたスノーフェスティバルと違ってあまり集客できなかった。失敗かなって思ってたけど、ムスタ豆粉がヒットの兆しを見せてるから今年も開催しようってことになったんだ。


私はみんながどんどんアイデアを出していくのをぼんやりと眺めていた。

「…………様!エメラインお嬢様!どう思いますか?」

「え?」

「聞いてましたか?大丈夫ですか?体調が悪いですか?」

「ちゃんと聞いてたわ!大丈夫よ!」

ジョン君をはじめ町長さん達会議に参加してる町の人達が心配そうにこちらを見てる。しっかりしなきゃ!

「そうね。屋台も出すけど、スノーフェスティバルの時とは違って、ガーデンパーティー風にしてみるのもいいかもしれないわね」

「ガーデンパーティーですか?」

「綺麗なお花畑の近くにテーブルや椅子を置いて、お茶とお菓子を楽しんでもらうとか……」

桜はないけどお花見みたいなものかな?この町の周囲の土地は春になるとそれは綺麗な一面の花畑になって、香りもとてもいい。綺麗なお花に美味しいお茶とお菓子。これが嫌いな人はいないわよね?(たぶん)


「それ!とても素敵ですね」

婦人会を代表して参加してるユリアさんがポンっと手を打った。

「綺麗なテーブルクロスをかけて、可愛いお菓子をお出しして、お茶はノールタウンのハーブティー!いいと思います」

「うむ!ムスタ豆粉を前面に押し出して、更にうちの特産品を売り込んでいきましょう!」

「じゃあ、それも検討していきましょう!エメラインお嬢様、ありがとうございます!」

町長さんとお祭りが成功するたびにしっかりしていくジョン君が頷き合った。


みんな気合入ってる。これなら私がいなくても大丈夫かも。もちろんアイデアを出したりお手伝いしたりはするけれど、私は私の仕事に集中できそう。仕事っていってもまだ小さなものなんだけどね。トゲトゲハーブの香り袋が結構好評なんだ。フラワーフェスティバルに間に合うように、前と同じ数かそれ以上を作って欲しいって頼まれてる。なんか持ってると良いことがあるって口コミで広がってるみたい。学園でも何人かに売って欲しいって頼まれたりもしてるんだ。ちょっと嬉しい。


会議を終えて王都へ帰る前にトゲトゲハーブを摘んで行こうと思って、町の外れを歩いてたら、町で一番長生きのおじいさんに出会った。おじいさんは何をするでもなく、ただぼんやりと佇んで野原を見つめていた。

「もうすぐこの野原も花がいっぱい咲きますね。春のお祭りにも人がたくさん来てくれるといいんですけど」

ご挨拶してから話しかけると、野原からは視線を外さずにおじいさんは呟いた。

「大丈夫じゃぁ。この地は昔から神様に護られておる。魔物だって来ない。この地を大切にしてくれるお嬢ちゃんならきっと幸せになれる」


そういえばこのノールタウンはアイリス王国の北にある。北東の瘴気の荒れ地にも近いのに魔物が出たって話は聞かない。山とか森とかで隔たってるおかげもあるのかもしれないけど、不思議。まあでも平和なのはありがたいことよね。本当に神様がいるのかもしれないわね。


「幸せかぁ……」

私は今幸せだと思うけれど、そうは見えない?毎食おいしいごはんを食べられてるし、ノールタウンのみんなには温かく接してもらえてるし、ムスタ豆のおかげて収入もあるし、毎日元気で暮らせてる…………。アスルワード様達、大丈夫かな……。近々大きな作戦が決行されるって噂で聞いたけど、アスルスワード様はお強いから大丈夫よね。私にはもうアスルスワード様を心配する資格も権利もない。でも無事をそっとお祈りするくらいは許されるわよね。


「きっと大丈夫」

常緑のトゲトゲハーブの野原の中でおじいさんが再び呟いた。






週明けの王立学園ではビッグニュースが駆け巡っていた。


「お聞きになりました?」

「ええ!婚約解消でしょう?」

「エリオット王子殿下と、ユフィーリア様が……。最近ではお話しなさってる姿も見ていませんでしたわね」

「第一王子殿下はずっと病床にあったはずでは?どうしてカルセドニー公爵令嬢と?」

「エリオット王子殿下はどうなるんだ?」

「そりゃあ、仲の良いご令嬢がいるじゃないか」

「しかしそれなら王太子には一体どなたが……」


授業そっちのけで大騒ぎになってる……。


そっか。ユフィーリア様を笑顔にしたのは第一王子殿下だったんだ。お名前はクリストファー様だったよね。お二人はいつ出会われてたんだろう?カルセドニー公爵家は王家の血筋でもあるから、もしかしたら幼馴染だったのかも。少し前にユフィーリア様からお聞きしていたから、そのことには驚かなかったんだけど、少しだけ意外に思ったことがある。メロディはエリオット王子と正式婚約には至ってない。婚約者候補に入っただけだった。


学園中大騒ぎだから一人になりたくて、ちょっと寒いけど中庭のベンチに座ってお昼ご飯を食べた。でもバスケットの中のサンドイッチはほとんど残ったまま。仕方なく香り袋の刺繍をしながら、北の空を見上げた。砦はどうなってるんだろう。今頃はもう魔物の巣に向かってる?それとももう戦いが始まってる?


「あらぁ?こんな所でお一人でどうなさったの?」

げっ!メロディ!何でここにいるの?

「また新しい事業でもなさるのかしら?貴族令嬢のくせに男勝りですわね。女の子は殿方に愛されてこそですわよ?」

あれ?この子って転生者じゃないの?ちょっと考え方が古そう。勘違いだった?それはそうとここは学園だから私だって言い返すよ?


「貴族の娘なら、領地と領民の事を考えて行動するのは当たり前の事だと思いますわ」

「あら?貴女お話しできたんですのね?」

「ええ。ですがマナーもルールもご存知ないような無知な方とお話しする口はあまり持ち合わせておりませんの」

「はあっ?!無知ですって?!」

勝手に話しかけてきて勝手に怒って、この子一体何がしたいの?ちょっと風が強くなってきたし教室に戻ってもいいかしら。あー教室は騒がしいから図書室にでも行こうかな。そろそろ卒業試験の勉強もしないといけないし。ちなみに私の成績は大体いつも20位辺りをウロウロしてるくらい。優秀な人がたくさんいて中々それ以上には行けないし、油断してるとあっという間に順位が急降下してしまう。


「ふん!……あ、そうだわ私……」

メロディが意地悪く笑った。

「この前も砦へ遊びに行ったんですのよ?私が砦へ行くといつも皆さん歓迎してくださるの!それにアスルスワード様ったらお優しくて!この砦は危険になるからしばらくは安全なところにいてくださいっておっしゃってくださったのよ?ああっ!お会いできなくて寂しいわぁ!」

そっか、やっぱりメロディは定期的に招待されてるのね。こっちはゲームのシナリオ通りってことか。なら私が心配する必要も無いわね。はあ……さっさと仕事しよ。

「お話はそれだけ?でしたら失礼しますわね。試験勉強もありますし、私こう見えても忙しいので」

ランチバスケットと裁縫道具を片付けているとメロディがまた突っかかって来た。

「本当はアリスターに未練があるくせに!その証拠にまだ新しい婚約も決まってないじゃない!」

うわぁ、敬語すら使えなくなってる。しかも身分が遥かに上の人を呼び捨てだなんて、いくらなんでも失礼過ぎない?流石に注意しないと駄目だわ、これ。


「あら?でも、貴女もまだエリオット王子殿下の婚約者にお決まりではないでしょう?」

「ユフィーリア様!学園にいらしてたんですか?!」

口を開こうと思った矢先、今話題の人が現れた!

「ええ。もう王家からの発表をお聞きになったでしょう?エメライン様には自分の口でお話したくて」

やだ!それってなんだか親友みたいじゃない?ちょっと、ううん、すごく嬉しい。

「この後少しお話しできる?」

「ユフィーリア様、もちろんです!」

私達の周りにお花が咲いたみたいにあったかい風が吹いた。


「失礼ですわ!ユフィーリア様!私()王子妃教育が終われば婚約者になれますわ!」

「王子妃教育ねぇ……。それ、本当に終わりそうですの?それに学園の成績も気になさった方がいいのではなくて?」

「っ!」

メロディが真っ赤な顔をして黙り込んだ。確かメロディってそんなに成績は良くなかった気がする。ゲームの中では優秀って設定だったけど。

「だって、三年生の中でも下から数えた方が早いというか、歴代の生徒の中でも酷い成績の部類に入ると先生からお聞きしてましてよ?もっとしっかりなさっていただけませんこと?」

あ、今のユフィ―リア様の顔、ゲームの中の悪役令嬢っぽい!でも迫力美人って感じでカッコいい!

「なっ……なっ……どうしてそんなこと……」

「だって親戚になるかもしれない方の事ですもの。とても心配ですわ。その……あまりにもあれだと、ねえ?」

「馬鹿にしないでよっ!」

メロディは走り去っていった。

「ユフィーリア様にまで……」

敬語忘れてるし。

「困った方ですわねぇ」

最後ちょっと涙目になってたし、成績が悪いのは本当だったんだ。この後取り巻きの令息令嬢に慰めてもらうんだろうな。この後なんと私は学園を早退してカルセドニー公爵家にご招待いただいた!そこでゆっくりとユフィ―リア様の恋バナを聞かせてもらうことになったんだ。









それから数日後の夜。王都のベルデ伯爵家の屋敷に二頭の馬に乗った使者がやって来た。



「すぐに来てくださいっ!!」

「すぐに来い!」

「クリスさん?!ケインさん?!」

二人は服も顔も髪も汚れてボロボロだった。嫌な予感が胸を締め付ける。


「隊長が危篤なんです!」


一瞬、世界から光が消えたような気がした。













ここまでお読みいただいてありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ