表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名無しのモブ悪役令嬢なので町おこしを頑張ります  作者: ゆきあさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/22

良かったんですか?

来ていただいてありがとうございます!




「あの……良かったんですか?バーネット様のこと」


ノールタウンから戻ったら、家の前でメロディに遭遇してびっくりした。ベルデ伯爵家の(うちの)屋敷でかなり遅めの昼食を取りながらアリスター様に尋ねた。たぶんメロディはアリスター様に会いに来たんだろうけれど、何でうちの前に?それにさっきのアリスター様の塩対応はどういうこと?少し冷たいというか、恐い対応をしてたような気がするのはどうして?アリスター様とメロディは仲が良かったはずだよね?


アリスター様とメロディは攻略対象者と主人公。本来ならアリスター様はメロディのそばにいるのが当たり前のはず。でも今はこうして私のそばにいてくれてる。あの後もしばらくずっとアリスター様の手は私の手を握ったままだった。アリスター様は本当に私を……?白緑色の豆のポタージュスープをかき混ぜながら、私の頭はまた混乱し始めた。


「建国祭ではとても仲良くなさっていらしたとお聞きしてますが……」

「ああ、やっぱりそうでしたか……。私はどうもそういう所が駄目らしいですね。クリスにも怒られたんですよ」

「クリスさんに?」

「ええ。誰かに親切にするのはいいけれど、誤解を招くような行動を取るな、と」

「親切……だったんですか?」

「ええ。先程も言ったように、迷子を保護者の元へ送り届けただけのつもりでした」

アリスター様は苦笑いをしながら、パンをちぎる。あ、ハーブ入りのパンも開発中だったわ。進捗を聞くのを忘れてた。


「でもご一緒にスノーフェスティバルにもいらっしゃいましたし」

ずっとそばに寄り添ってたよね?

「それは!エリオット殿下の護衛を頼まれただけです。エリオット殿下は王族ですし、他にも騎士はいたでしょう?まさかバーネット男爵令嬢が雪の道にあのような靴を履いてこられるとは思ってもいませんでした。何度も転びそうになって危なっかしかったので」

ああ、普通は靴底の平らな長靴みたいなのを履くんだよね。ヒールは無いわ。確かに。うーん、こんがりと焼けたハーブ入りソーセージは美味しいんだけど、ナイフとフォークで食べるのはちょっとコツが要るなぁ。これは要改善ね。


「あ、そうだ!あと砦にも招待されてましたよね?」

「それも!エリオット殿下が魔物討伐にご興味を示されたので、一度見学をとお勧めしたまでです。まさかバーネット男爵令嬢がお一人でいらっしゃるようになるとは思いませんでした」

メロディは何度か砦へ行ったんだ。ふーん、そうだったんだ………………。もうこの際だからズバッと聞いてしまおう!

「バーネット様はとてもお美しいですし、お優しくてお人柄が良い方で学園ではとても人気者です。アリスター様が好意を持たれても当然だと思いますけれど……?」

碌な社交もせず休みの度に領地に引きこもる地味顔な私とは違ってね。ああ、我ながら卑屈だわ……。

「他の女性に好意なんて持つはずがない!私は!私は幼い頃からずっとエメライン一筋です!」

「そ、そうですか…………」

そんなに目に涙を貯めながら言わないで欲しい。さっきから給仕してくれてるアンナ達がやたらニコニコ(ニヤニヤ?)してるのがすっごく気になる。


「それにエメラインは美しいですよ。この世界の誰よりも」

「それはちょっと無理があると思います……」

「いいえ!本当ですよ」

「……ありがとうございます」

乙女ゲームの主人公と比べられたらさすがにそれは、ねえ。それに貴族、特に王族や高位貴族の方々の中には男女問わずもう本当にレべチの美形がゴロゴロいるんだよね。アリスター様もその一人。それに比べたら私はthe普通!それにしても……ちょっと!アンナ!さっきからやたら暑そうにトレーであおぐフリするのやめて欲しいんだけど。私はハーブ入りの冷たい水を一気に飲み干した。アリスター様はワインを飲んでるけど、酔っ払ってはいないんだよね?


なんかここまで言ってもらえたら、もう騙されててもいいやって思えてきちゃう。アリスター様は誰かを騙すような人じゃないけど。ゲームのストーリとか設定って何だったんだろう?アリスター様がメロディとエリオット様に一生を捧げなくてもトゥルーエンドって成立するんだろうか?もう訳が分からなくなってきた。


昼食後は約束通りに、王都の雑貨店を二人で巡ってノールタウンで作ったランプやキャンドルを置いてもらえるように頼み込んでみた。そうしたらアリスター様の顔面効果もあってか、いくつかの雑貨店で置いてもらえることになった。ラッキー!ついでに香り袋もお願いしたけど、似たようなものはあるからって断られちゃった。あーあ、世の中そんなに甘くないね。でも、アリスター様の勧めで街の小さな女の子達にいくつか無料でプレゼントしたら、すごく喜んでもらえた。あの子達が他の子達にも宣伝してくれるといいな。後は街のレストランや酒場にフラワーフェスティバルのポスターを貼らせてもらってその日は終了。ノールタウンの為だから宣伝にもお金をかけないとね。

「その残った香り袋を買わせてもらっても?」

「いえそんな!アリスター様にもプレゼントします!」

「駄目ですよ?それはちゃんとした商品でしょう?」

あれ?ユフィーリア様と同じような事言ってる。

「でも……」

「では、今度私の為に一つ作ってくださいますか?」

「え?それは構いませんけれど……」

「では今はこれを。これでエメラインとお揃いですね」

アリスター様は私の手の中にあった香り袋を大切そうに握って口づけた。な、なんか自分がキスされたみたいで恥ずかしい……。


後日開催されたフラワーフェスティバルの人出はまずまずで、ハーブティーやムスタ豆やムスタ豆粉の料理やお菓子を出してとても好評だった。ハーブ入りのソーセージやハンバーグ、ランプやキャンドルの売れ行きも予想より上回った。さらに王都以外の街のお店でもノールタウンの特産品を扱いたいって人が出てきてくれて、ノールタウンのみんなに更に気合が入った。


「春も素敵なお祭りになりましたね」

「はい。アリスター様。お手伝いいただいてありがとうございました」

「貴女の力になれるなら何でもやりますよ、エメライン」

「ありがとうございます」

アリスター様は準備だけじゃなく、三日間の開催期間の間中ずっと私を手伝ってくれていた。そのせいか、もうすっかりノールタウンでは『旦那様』って呼ばれるようになってしまった。でもそれは全然嫌じゃなくて、一緒にお祭りの為に働くのも、一緒にノールタウンの屋敷に帰るのも、一緒にご飯を食べるのも普通になって、少し離れるとどこにいるのか探すようになって…………いつの間にか隣にいるのが当たり前になってしまってるのに気が付いた。


エメライン(わたし)はアリスター様にもう一度恋をしたのかもしれない。




お祭りの最終日の夜、私はアリスター様からの再婚約の申し込みを受け入れた。

「お待たせしてしまい申し訳ございませんでした。正式には父であるベルデ伯爵からお返事させていただきますが……わっぷ」

次の瞬間私はアリスター様の腕の中にいた。

「本当に?ああ、ありがとう!エメラインっ!私が愚かでした。貴女と過ごす時間がこんなに愛おしいものだということを忘れて、魔物退治に必死になって貴女をないがしろにしてしまった。本当に後悔しています!これからは二度とこんな過ちを繰り返しませんっ!ずっとずっとそばに…………エメライン?」

「……う」

途中から意識が朦朧としてた。アリスター様はそうは見えないけどすっごく力が強い。それはそうだよね。普段から剣なんて重たい物を振り回して訓練したり戦ったりしてるんだもの。怪我が完治してなくても非力な貴族令嬢を力いっぱい抱きしめたらこうなるよね。ちょっと死ぬかと思った。


「末永くよろしくお願いいたします……」

まだ頭がくらくらしてたけど、なんとかそれだけは言えた。

「愛しています、私のエメライン」

今度はそっと抱きしめられてとても温かかった。けど、まだ左腕の方に少ししか力が入ってないのが分かった。まだ痛みがあるのにずっと私に付き合ってくれてたんだと思うと、自分の我儘さが情けなくなった。私はずっとゲームのストーリーに振り回されて向き合えてなかった。これからはこの人を真っ直ぐに見ていこう。心からそう思った。












ここまでお読みいただいてありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ