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告白

来ていただいてありがとうございます!



「功徳?」

それに諦めないって何?婚約の事?突然の出来事に試験終わりの頭は混乱してた。じつはゆうべ、久しぶりに試験勉強でほぼ徹夜しちゃったから、正直ちょっと眠かったりするんだよね……。

「口説く、ですよ。では行きましょうか。エメライン?」

アスルスワード様はそう言うと私の手を取って歩き出した。

「え?行くってどこにですか?」

「予約してあるんです」


卒業試験が終わった私達三年生は卒業式まで実質お休み状態になる。よっぽど成績が悪い生徒については補講っていう救済措置があるけど、大部分の生徒達はこの後は卒業式や学園主催の卒業を祝うダンスパーティーのためのドレス選びをしたり、早い人になると結婚式の準備に入る生徒もいる。


私は一度屋敷へ帰ってからフラワーフェスティバルの準備を手伝うために、馬車の中で寝ながらノールタウンへ行こうと思ってたんだ。けど、勢いに押されてアスルスワード様に馬車に乗せられてしまった。そうして着いた先は王都にある人気のカフェ。

「ここって……」

最近できた新しいカフェで、ずっと行ってみたいと思ってたところだった。ただ、いつも混んでるし恋人同士が多いから入りづらくてずっと二の足を踏んでたんだよね。


「こちらへどうぞ」

可愛いドレスとフリルエプロンの美人店員さんに案内されて通されたのは、お店の奥の特別な個室だった。大きなガラス窓から中庭が見える綺麗なお部屋で、よく手入れされた庭には花々が咲きそろい、小さな噴水まであった。

「素敵……」

それにさっきの店員さんのユニフォームはとてもかわいかった。是非ノールタウン(うち)で開く予定のレストランの参考にしたい。そういえばこの個室もそうだけど、カフェ全体の雰囲気も全体的に可愛らしい雰囲気で統一感があっていい感じ。ノールタウンはどんなイメージだろう……。カントリー系?それともやっぱりここみたいに可愛らしい系?前世で人気があった北欧系とか?どんな内装にしたらいいかしら……?

「…………ン」

お皿やカップもそれに合わせて………………。


「エメライン?」

「はっ!」

「大丈夫ですか?もしかして体調が悪かった?」

「ア、スルワード様?い、いえ!大丈夫です!」

しまった!ついいつもの癖で考えこんじゃってた。アスルワード様と一緒だったんだっけ。

「すみません。ちょっと考え事をしちゃって。あまりにも素敵なお店なので、ノールタウンの参考にしたくて」

「気に入ってもらえたなら良かった。とりあえず座りませんか?」

アスルスワード様の笑顔が少し寂しそうに見えたのが気になったけど、何となく聞けなくて促されるままに席に着いた。んん!この背当てクッションも可愛い。こういうのも拘りたいけど、幾らかかるかしら?お父様に無利子で借りれないかな?無理か……。


「…………」

「…………」

お茶とたくさんのお菓子やケーキが運ばれてきて、しばらく会話が続いたけど、話題が無いっ!怪我の事や砦の事、騎士団の事や魔物の事なんかを話したら、話題があっという間になくなっちゃった。普段みんなって婚約者とどんな話をしてるんだろう。後は政治の話とか?デートで政治の話ってするもの?……そういえばこれってデートだよね?私、前世も含めて男の人とデートするのって初めてだ。私って何歳で死んでここに来たんだろう。あまりよく覚えてない……。


「エメラインはショコラのケーキが好きでしたよね?」

「え?どうしてご存じなのですか?」

「何度かお茶会をしたでしょう?その時に好んで食べてたのがとても印象に残っているんです」

そんな何年も前のこと、覚えててくれたんだ。

「嬉しそうに、幸せそうにケーキを食べる姿はとても愛らしかった」

アスルスワード様は静かにお茶を飲みながら目を伏せた。

「ちゃんと王都へ帰ってくればよかったと後悔しています」

「アスルスワード様はお忙しかったんですから仕方ないと思います」


銀のトレーの上に並べられた色とりどりのケーキや焼き菓子。その中からショコラの焼き菓子をお皿に取ってアスルスワード様に勧めた。

「どうぞ!これ、ムスタ豆粉が使われてるんですよ」

「そうだったんですか?」

「はい。まだ来たことは無かったんですけど、お父様からこちらのお店でも使いたいと言われたと聞いてます」

「そうでしたか」

アスルスワード様は一つを手に取ってゆっくりと口に運んだ。

「美味しいです。エメラインはすごいですね……」

「でしょう?でもすごいのは私じゃなくてムスタ豆なんですよ!アスルスワード様」

「…………もう、アリスターと呼んではくれないのですか?」

「……恐れ多いです。私はアスルスワード様よりも身分が低いですし、…………もう婚約者ではありませんから」

一つ大きく息を吸った後、アスルスワード様は真っ直ぐに私を見た。


「私は貴女を愛しています」


「っ!」

今、何て言われた?アスルスワード様が私を?嘘でしょ?

「貴女を誰かに取られたくありません」

どうしよう……。なんて言ったらいいの?どう答えたらいい?私はアスルスワード様をどう思ってるの?


噴水の音と風の音が聞こえてくる。楽し気な笑い声と食器の触れ合う音も微かに聞こえる。


いいな……楽しそう。私もあんな風におしゃべりして笑い合いたかった。学園に入る前のエメライン(わたし)が私の中で泣いてる。今の私にはアスルスワード様と何を話していいのかもよく分からない。


「私は婚約を解消するつもりはありませんでした。けれど貴女に悲しい思いをさせてしまったことをとても悔やんでいます。夢中になると一つの事しか見えなくなってしまって」

「私との約束を守る為にとても頑張ってくださったんですよね。そのことはとても感謝しています」

「エメラインは私が嫌いですか?」

私は首を振った。嫌いじゃない。

「じゃあ、少しは好き?」

「…………私はアスルスワード様の事をよく知らないのです」

とても強い魔法騎士様。とても綺麗で優しい人。そのくらい?

「エメライン……」

「例外はありますが、本来は長い婚約期間の間にお互いを知り合って結婚するものです。それを飛ばして結婚するのですか?アスルスワード様だって今の私のことをよくご存じないでしょう?知ったら幻滅して嫌いになるかもしれませんよ?」


そう。彼が知ってるのは何年も前の私だ。今の私じゃない。なのに愛してるってどうして言えるの?あの頃とは全然変わってるのに。それに今はメロディがいる。あの子の存在はアスルスワード様の中でどうなってるの?

「だから……私は」

「わかりました」

「え?」

何が分かったの?私の前で青い瞳をキラキラさせてアスルスワード様が笑った。

「今からお互いをたくさん知り合いましょう!」

「……はい?」

「どうか私にその機会をください」

「えっと……」

「きっと貴女を振り向かせてみせます!」

「…………」


アリスター・アスルスワード様という人はとてもポジティブな人だった。そしていつでも本気で有言実行の人だった。それだけは知ることができた。だってその日から毎日私に会いにやって来る約束して、本当にそう行動したから。


ちょっと眠かったのもあって思考能力が低下してて、つい了承してしまった私も私で悪いんだけど。










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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