8話 周回プレイの恩恵
「ステータスオープン! うわぁ……本当に出ちゃった」
あれから二日経っていた。
わたしは今、大きな街の近くにある廃墟に一人でいた。
アッシュを殴ったから、わたしはどうも賞金首になってるみたい。
それを警戒してたロイは、一人で街に行ってくれた。
ドレスのままじゃ、目立って仕方がないからね。
わたしの新しい服とか、旅に必要な物とかを買って来くるって。
で、わたしは半壊した家に座って、こうして一人で暇してるところ。
暇ついでに、ナオがやってたように、わたしにも同じ事が出来るかどうか試してる最中だったんだけど。
意外にも簡単に出来ちゃったのだ。
目の前にあるスマホサイズのウインドウに表示された、パラメータ画面を確認。
*************
CHARACTER:イザベル
PLAYER:日高 ユキ
運動:99
学力:99
容姿:99
魅力:99
芸術:99
*************
その下にも、いろいろパラメータがあるんだけど。
この画面とパラメータ値、わたしにはすごく見憶えがある。
これ、『ロイヤルプリンス』の周回プレイで獲得したパラメータ値だ。
このゲームは、周回プレイを楽しめるような設定になってる。
強くてニューゲームみたいな側面があって、周回プレイするたびに、パラメータ値は引き継いでいくのだ。
この数値のおかげで、ゲーム内に通う学園生活を優位に進めたり、王子たちの好感度を上げる事もできる。
そして、イザベルの名前の下には、わたしの本名がある。
これでナオは、わたしを『イザベル』じゃなくて、『日高ユキ』だと知ったんだ。納得できたよ。
あ……他の画面もあるんだ。
フリックして、他の画面も確認、確認っと。
「えっと……水質、土壌の調整にって……あ、これあの植物園イベントでやったやつだ」
街の植物園が枯れるってイベント。
攻略する王子たちが奔走する中、プレイヤーキャラが錬金術師にやり方教わるイベントだ。
今思うと、なんてゲームだ。
完全にキャラメインのゲームだったから、イベントがおざなりすぎでしょ。
「これ数値を調整できるんだ。って、どこで使うのよ、こんなの?」
水質も土壌も、使うところなんて限定されそうだし、今のわたしには必要ないよ。
他の画面が無いか、さらにフリックしてみる。
『キャラクターパラメータ』の変更?
なにこれ?
ヘルプとかは見当たらないけど、なんだろう?
「……もしかして、ナオはこれを使って、アッシュたちのパラメータを弄ったのかなぁ?」
でも、どうやって?
う〜ん、画面には『忠誠度』『親密度』とだけあるよ。
これ? このパラメータ値を変更したのかなぁ?
あとは……なにこれ? 『称号』って…… ああ、トロフィーフルコンプした時にもあった。
えっと、
『追放されし令嬢』
んぐ……事実だけど、これ称号なんだ。まだ他にも称号があるよ。
『王子を殴りし愚か者』
あははは……笑えないよ、これ。まだ、あるし。今度は何? どうせ変な称号でしょ。
『ドラゴン殺しの血脈』
あ、なんかカッコいい称号が出てきた。
ドラゴン殺しの血脈って事は、やっぱりご先祖様の影響なのかな。
設定がちゃんと活かされてるんだ。ちょっと感心。
「待たせたな、イザベル」
「ロイ!」
戻ってきたロイはフードを脱ぐと、手に持った袋をわたしの目の前に突き出した。
「ほらよ、お前の服と、武器だ」
「あ、ありがとう……って、短剣? こんなの貰っても……」
正直、困るよ。
剣なんて持ったことも、使った事も無いのに。
せいぜい包丁くらいだよ。用途が全く違うけどさ。
「護身用だ。いざという時に使えばいい」
素っ気ない言い方。だけど、どこか優しさも感じる事があるんだよね。
「ロイ、本当にありがとう。ちょっと着替えてくるね!」
廃墟の影に隠れて、ロイが買ってきた服に着替えてみた。
「なにこれ!?」
うわぁ……ショートパンツ。脚の露出度が半端ない。
リアルで、こんなの履いた事がないんですけど!
上着も、胸元開きすぎでしょ!?
うぅ……ロイの趣味って、センスなさすぎだよ。
「どうだ? 俺の目測で買ってきたけど、ちゃんと着れたろ?」
建物の反対側にいる、ロイがそう声をかけてきた。
目測なの? 恥ずかしくてサイズを伝えて無いわたしも悪いよ。
でも、どうしてこんなにピッタリ合うのよ……野生の勘?
着替え終わったから、ロイにお披露目してみたけれど。
なんで、そんに満足そうに微笑んでるのよ。
「お! なかなかいいじゃないか」
「あのね、なに考えてるの? こんな格好、恥ずかしいんだけど?」
せっかく買った来たんだから、仕方がなく着るけどさ。
「いいじゃねーか。女盗賊のリーダーって感じで、似合ってると思うけどな?」
そんなのを参考にした服装なんだ。
やっぱりセンスに難ありだ、ロイは。
「……それと街はどうだったの?」
「ああ、思ったとおりだな。街には兵士がかなりいたな。多分だが、この国のギルドにも手配書が出回ってるだろな」
うぅ。これで立派な犯罪者の仲間入り決定か。
お母さん、ごめんなさい。わたしは親不孝者です……
これから、どうしたらいいんだろう?
ずっと追われる身になって、最終的にロイと暮らしながら盗賊になる……いや、それが一番ダメ。
暮らすのは、百歩譲っていいとしても、盗賊はダメだよ。
「おい」
ロイは優しいところもあるけど、そんな対象として見るわけでも無いしぃ。
「おい!」
ううん、嫌じゃ無いけど。まだ知り合って日が浅いしって言うか。
「おい! イザベル!」
「ひゃ、ひゃい!?」
「さっきからなにモジモジしてんだ? 変だぞ、お前」
変? わたし、そんなにモジモジしてた?
ロイは怪訝そうな表情をしてるし。
「え、えーっと、ね?」
「……? おかしな奴だな。で、これからの事なんだがな。お前さえ良けりゃ、一緒に海の向こうにある大陸にいかないか?」
「……それって、婚前旅行!?」
ちょっと待って。
え、そそそそんなの、急に言われてもだよ。
まだ付き合ってもないのに、いきなり婚前旅行とか。
「違うわっ! どうしたら、そうなるんだよ」
「え? そうよね。ち、違うよね……あははは」
あ〜びっくりした。
って言うか、わたし、なに考えてるんだろ。
普通に考えたら、違うよね。
「海の向こうなら、お前の手配書が出回る事は無いだろうって考えたんだよ。ま、国が違えば、お前は犯罪者じゃなくなる可能性があるって事さ」
そうなのかな。
この世界の法律とかは知らないけど、ロイの言うとおりかもしれない。
また、わたしのこと考えてくれてるんだ。
「……うん、わかった」
「一応、伝えておくがな。ここは内陸部だ。その街までたどり着くには、いくつもの山を超えなきゃいけないし、危険もかなりある。それでも行くか?」
「うん、わたしは行くよ」
この国に残って、犯罪者として追われるよりもいい。
ナオにまだ仕返しできて無いけど、この国に一生戻れないわけじゃないからね。
必ず戻ってくるよ、わたしは!




