雛鳥の空
戦争は、結果的に言えばラーシャの逆転勝ちに終わった。
首都に爆撃を仕掛けたカトリアは、やはりラーシャを戦争で負かすことで支配力を強めることが狙いだった。
一時は本土に上陸までされ、危機的状況に陥ったラーシャだったが、ある一つの飛行隊により、戦局は大きく転換した。
編成番号v401
正式な部隊名のない、架空とも言われる部隊だが、それは確かに戦場に存在した。
曰く、特殊作戦のためだけに作られた秘匿部隊である。
曰く、金で動く傭兵が集まった外人部隊である。
その部隊の正体について、説を挙げようと思えば幾らでも挙がる。
だが、ひとつだけ確実なのは、この部隊がカトリアに大きなダメージを与えたおかげで、ラーシャは戦争に勝ったということ。
彼らは、首都に群がる爆撃機の群れをたった1小隊で撃退し、上陸してきた敵部隊を逆に退却させ、カトリアの航空戦力に大打撃を与えた。
中でも、その飛行隊の1番機は別格の強さを誇り、その尾翼のパーソナルマークから、敵味方双方からこう呼ばれた。
ラーシャの南十字星。
現在
ラーシャ共和国 ボルスニー空軍基地
戦争で独立を勝ち取った、ラーシャに新設された空軍の基地。
元はラーシャ自衛隊の駐屯地だったが、いくつか基地運用能力を強化した上で、そのまま空軍基地となった。
その基地に、1機の戦闘機、F-15が舞い降りる。
「Control tower to Wyvern2. You are clear to landing.」
「Wyvern2 copy. Gear down. Flap down. Air brake up. Landing.」
「power, power!」
「30,15,10,5... touch down.」
「OK, nice landing.」
着陸したF-15は、排気で辺りの空気を歪ませながら、誘導路に入る。
「グッドランディング、ワイバーン2。今日もいい具合じゃないか」
「えっへへ〜」
「そろそろワイバーン1のコールサインを譲ってやってもいいかもしれんな」
「え! 本当?」
「キース、ヒヨッコを持ち上げるな、エリシャはすぐ調子に乗るからな」
「ぬぐぐ...」
「まあまあ、だが実際、エリシャは成長してるぞ?
この前だって隊長のケツに食いつけたじゃないか。
ついこの前訓練生になったとは思えん程の成長っぷりだ」
「食いついただけだろ? その後お前、逆に堕とされてたじゃないか。
訓練では撃墜判定で済むが、実戦だったら死んでたぞ、あの位置じゃ」
「ぐぅ...」
「毒舌もその辺にしといてやれよ、隊長。
それにしてもエリシャ、お前コブラなんてどこで覚えたんだ?
訓練学校じゃ教えるはずもないだろ」
「あ〜、そこ聞いちゃいます? いや〜懐かしいなぁ。
初めての飛行訓練で教官を後席に乗っけたまま訓練機振り回しちゃって... あんまり楽しいからつい...」
「で、変態機動の虜になったと」
「その通りですよ、キース中尉〜。いやぁ懐かしいなぁ...」
「可哀想な教官。南無...」
「コントロールタワーよりワイバーン、さっさとバンカーに戻れ。後続も来るんだぞ!」
「おっと失敬。各機、部屋に戻ろう」
ボルスニー空軍基地 指令室
「ワイバーンの損失1、フレッチャは今回も無傷か... さすがグレイズ大尉。あれだけのハンデを背負っても勝つとはな」
「いえ、それ程でも。ですが、グランデ少尉の成長は身を見張る程です。今日も、初めて後ろに着かれましたよ」
「君の背後を取るとは、なかなかだな...」
「ええ。あいつ、誰に教わった訳でもないのにコブラ機動をしやがりました。驚きましたよ。コブラを使いこなす訓練生なんて初めて見ました」
「それは、また凄いな...」
「ええ、操縦技術だけなら隊の誰にも劣らないかもしれませんが、ですがまだチームワークってものをまるで理解していません」
「ま、そこはまだまだ訓練生だな。ところで、どうだ。最近のスクランブルの様子は」
「それを私にわざわざ聞きますか? 指示しているのはあなたでしょう? 司令」
「実際に飛んでいるのは君だ」
「それもそうですね。...正直言って、そろそろ挑発行為だけでは済まないかもしれません」
「と、言うと?」
「侵犯機はほとんどがカトリア軍機です。それも爆装した攻撃機がほとんど。それに数や編隊も、だんだん実戦よりになってきています。やつら、まさかまた...」
「ふむ...たがやつらとてそこまでバカではあるまい。それに、今戦争を仕掛ける理由もないだろう。
先の戦争の理由であった我が国のCLガス資源も、今は他に供給先があろう」
「...ですね」
「まぁ、警戒は緩めるな。この部隊も、出来るだけ早く、実戦投入ができるレベルにしろと、上からのお達しだ」
「イエッサー。では、失礼します」




