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ピクシーズ 第25戦略偵察飛行中隊   作者: 名無しの戦闘機性愛者
長距離戦略打撃群 第25戦略偵察飛行中隊
36/37

XFR-44

「Recon 2, you are clear to landing.」


「loger tower. Ready to land.」



 空気が乾ききり、時には火災をもたらしかねない真っ赤な夕日をバックに、リコン2のコールサインで呼ばれるファントムが、そのランディングギアを大地に降ろす。


 先の戦闘で左主翼のフラップが吹き飛び、バランスの悪いかなり危なっかしい着陸だったが、操縦するグレイズは長年の経験で以て不具合なくその機体を降ろした。


 さっきからグレイズは、必要最低限の無線交信以外、何一つ喋っていない。特にエリシャの方を見ようとしない。


 いや、シートに阻まれ物理的に後席のエリシャを見ることができないのだから当然ではあるのだが、当のエリシャからしたら、まるでグレイズに避けられているかのような印象を受けてしまうのだ。


 まるで、いる場所が違うとでも言うような感じだ。


 思い切って、グレイズに聞いてみようとした、その時。



「リコン2、グランテ少尉。聞こえているか」



 間の悪いことに、管制塔からの呼びかけが来てしまった。



「リコン2、感度良好」


「グランテ少尉、格納庫に機体をしまったら、すぐ第5バンカーに出頭してくれ、最優先だ」


「……?了解しました」



いまだタキシング中の、その轟々と轟くエンジン音に負けぬよう、エリシャはグレイズに声を張り上げた。


「大尉、そういうことでお先に第5バンカーに向かわせてもらいます!」


「…分かった」


「あの、大尉。やっぱりどうかしましたか?」


「黙れ少尉。命令だ」


「りょーかい……」



 それっきり今度こそ本当に何も言わなくなったグレイズにちょっと、かなり不安になりつつ。


 エリシャは言われた通り、基地の端の端の地下、地図を相当注視しなければ辿り着けないこの基地唯一の地下対爆格納庫へと向かった。






『あ、来た!』


『こっちでーすよー』



 途中かなり道に迷いながら、辿り着いたそこの分厚い扉の前には、真っ黒な衣装を着た少女2人…フレイとフレイヤが待っていた。



『意外と早かったね、もう少し迷ってるかと思ったのに』


『ほら言ったでしょう?少尉は結構勘いいんだよ』


「…二人共、私がどれだけ迷ってここに着くか賭けてたでしょ」


『げ…バレてた?』


『ほら、言ったじゃない。まぁ、賭けって程のものでは無かったけど』



 はぁ、と。アンドロイドにしては随分豊かな感情と表情をするものだと、呆れ半分に感心していると、重苦しい対爆扉がごう、と音を立てて開く。



「来たか、少尉。待っていたぞ」



 出てきたのは、官給品の作業着に、じゃらじゃらと付けた恐らく私物であろうベルト類が目立つ、老整備兵だった。









「ジョン・マッドナーだ。階級は一応、中尉ということになってるが、なにせ此処のコマンダーのこともあるし、あまり気にしなくていいぞ」



 重い対爆扉を抜けた先には、格納庫が広がっているとばかり思っていたエリシャは、その先に繋がっていた長い廊下と、その突き当りの巨大な資材搬入用エレベーターに拍子抜けする。


 斜めにスライドするように降下する巨大なエレベーターと、そのシャフトを吹き抜ける空気の騒音に負けぬ、大きな声で老整備兵、マッドナーはそう言った。



「初めまして、中尉。あの、早速で申し訳ないのですが、ここは?」


「すぐに分かる……ほら、着いたぞ」



 マッドナーの言う通り、エレベーターは底面が下層階のスプリングに着地する轟音を響かせて、停止する。


 辿り着いたそこは地上に比べれば異常に寒く、いくつか電灯が点いているものの元々の暗さに負けて非常に頼りない、つまりほぼ真っ暗な廊下のような空間だった。



「来な。足元暗いし、色々落ちてるから気を付けろよ」


『私が照らすよ』



 そう言ってフレイが右手を差し出すと、その腕が半ばからぱっくり割れたと思うとそのままスライドして、中から懐中電灯が現れた。


 驚いて目を丸くしているエリシャに、フレイは別段それを異常ともなんとも捉えていない表情で言う。



『元々はガンマウントなんだけどね。殆ど使う予定がないから、私は懐中電灯に換装してるんだ。フレイヤは一応ハンドガン差したままだよ』



 言われ、エリシャがフレイヤに目を向けると、フレイヤも同じように腕を割り、中からハンドガンのバレル部分を出す。



『万一の、保険にね』


「ほら、行くぞ」


『『はーい』』



 マッドナーに促され、エリシャはフレイヤの右手が照らす道を進む。


 彼女たちはアンドロイドなのだから、別に今更驚くことでもないと思っていたが、人間らしさ全開の表情と反応をする彼女たちのせいでそう思えていなかった。


 いつか本で呼んだ、不気味の谷というやつかもしれない。


 いや、あれは人間らしさが完璧に近づいたときの現象というから、これは違うのかと、とりとめもない思考を巡らせていると、またもや重厚な扉が目の前に現れた。



「ここだ」



 言うとマッドナーは、扉の横にあるタッチパネルに触れ、何やら暗証番号らしきものを入力する。


 すると、見るからに重そうな扉が、それらしい音を立ててゆっくりと開きはじめる。フレイとフレイヤの二人がニヤニヤしながら懐中電灯を消した。


 暗闇に順応していない瞳で、何も見えなくなったエリシャは、直後マッドナーが点けた大型の電灯の眩しさに思わず目を閉じる。


 眩しさが和らぎ、少しずつ目を開けてみる。




 鋭く長い、曲線的なノーズに、ずんぐりとした胴体とそれに収まる巨大なエンジン、そして今は畳まれた胴体下の大型垂直翼に、半ばで下向きに折れたガル形状の短い主翼。


 全体的にスホーイシリーズに近い印象を受けるが、どことなくF-15の意匠も含む、独特な機体形状。



「これって……フレイたちの?」


『ふっふー、半分あたりで半分はずれー』


『……XFR-44。私たち41姉妹の、その有人制御型』



 言われてみれば、確かにその形状は殆どフレイたちの機体、XFR-41-A,Bと殆ど同じだが、コックピットの形状が違う。


 彼女たちの機体の機首は、そのどこにも人を仕舞うスペースが無いと思えるほど平坦で、しかも装甲板に覆われてとてもコックピットと思えるものでは無かった。


 だがこの機は、それが通常のキャノピーに入れ替わっていて、形もだいぶ膨らみ、その中のシートやHUDも確認できる。



「フレイたちが制御するXFR-41は、元から無人機として設計されている。ソイツをかなり強引に、有人機として再設計したのがコイツだ」



 よく見回してみると意外と広い、その格納庫の端の方に停めてあったフレイたちのXFR-41と、それに向かって走る彼女たちを見ながらマッドナーは言う。





「XFR-44、ブレイズ。少尉、お前さんの、新しい相棒だ」









「……へ?」


  


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