デブリーフィング
ラーシャ共和国 ボルスニー空軍基地
ブリーフィングルーム
「レーダーサイトが受けた損害は、現在確認中だ。ともかく、よくこの基地を守ってくれた。ここがやられたら、ラーシャ東部軍は壊滅だったからな。
とはいえ、こちらも少なからず配備機に損害を被ったのは痛手だ。現在西部軍に増援を要請している。
各員は、別名あるまで待機していてくれ。解散」
基地司令が話し終わると、パイロットたちは重い足取りでブリーフィングルームを出る。
「司令、少しよろしいでしょうか」
グレイズは、自分以外の全員が部屋を出たのを確認すると、司令官に声を掛けた。
「構わんぞ、大尉」
グレイズは、少し間を置いてから、切り出した。
「エリシャ少尉のことですが... 彼女、何者なんですか?ただの新人の戦果ではありませんよ、あれは」
「確か、今日は共同撃墜1、撃墜3、だったか」
「えぇ、それにあの空戦技術、独学でできるようなものではありません」
「君は、彼女は極秘の秘密兵器だとでも私に言ってもらいたいのか?」
「いえ... そういう訳では」
「君が不審に思う気持ちも分かる。だがそれも才能というものだ。そう思うしかないだろう。
あぁ、それと増援だが、西部軍から1個中隊が出向いてくれるそうだ。それが今動かせる限界だそうだが」
「...分かりました。失礼します」
それだけ言うと、グレイズは部屋を出た。
「才能、か...」
「なんのことです?」
横から飛び出してきた真っ白な頭に、グレイズはまたも飛び上がりそうになる。
「お前、スニーキングの癖でもあるのか?」
「ひゃい⁈ 酷いですね、私は私なりに生活してるんです!」
「そうか......... そうか?」
「もう!」
「冗談だ。ま、いつものお前通りでよかった」
「...はい。その、もう深く考えるのはやめることにしました。これは、戦争だから」
「...そうだな」
宣戦布告が行われていないのは、伏せておこう。
今はまだ、コイツに難しい話はしなくていい。
「そうだ、西部軍から1個中隊ほどこの基地に来てくれるそうだ」
「本当ですか!なら安心です。この基地を守るには十分ですね!」
「だが、その分東部軍の仕事をほとんど全て俺たちがやらなきゃならん。忙しくなるぞ」
「ふぇっ⁈ やっぱりやだぁ...」
「おいおい、勘弁しろよ...」
と、他愛もない会話を続ける彼らの頭上を、見慣れない機影が通り過ぎた。
Suシリーズにも似た、曲線的なデザイン。機体下部に垂直に伸びた大きな補助翼。
そして何より目を引いたのは、それが背負った大きな双発のエンジンだ。
それが、とてつもないスピードでエリシャたちの頭上を通り過ぎる。
「...あんな機体、ウチにありましたっけ?」
「分からん。ただ、敵機じゃないのは確かだ。警報も鳴ってない」
「そんなこと言って、別件で鳴らなきゃいいですけど」
「おい、そういうこと言うと...」
『緊急!緊急!オーム湾に停泊中の艦隊が攻撃を受けている、稼働全機は直ちに離陸、オーム湾上空の航空優勢を確保せよ!繰り返す...』
緊急離陸を告げる警報が、基地中に響き渡った。
「ほら、言わんこっちゃない!」
それだけ吐き捨てるように言って、グレイズはエリシャと格納庫に走った。




