攻撃隊 離陸
カトリア連邦 ラリィバレー基地
「君に虚偽の命令書を送ったのは悪いと思っている。だが、これは高度に政治的な問題なのだ。一度宣戦布告をしてしまえば、それは先の戦争の二の舞なのだよ」
「分かっています、参謀総長。ですが、ラーシャの南十字星は5年前の首都制圧戦で撃墜されたはずでは?」
「あぁ...だが、政治家たちにとってトラウマというものは大きくてな...」
「......」
「ラーシャ全土の制空権を完全に確保するまで、我々は騙し討ちという形をとることしかできない」
「...了解しました」
参謀本部から直々にコトの詳細を知らされたグランエストは、電話を置く。
「まったく...」
届けられた新しい爆撃指令書を見、溜息をつく。
指示は、爆撃機1個小隊、護衛戦闘機3個小隊でラーシャ東部軍で唯一損害を受けていないボルスニー空軍基地を攻撃しろ、というものだった。
つまり、この基地の航空戦力全てを総動員して戦え、ということだ。
「部隊編成を組み直さねばならんな...」
呟きながら、グランエストは基地航空隊の中隊長を呼び出した。
「Control tower to Voyager 1. You are clear to takeoff.」
「Voyager 1 copy. I’m going to takeoff.」
「Voyager 2,3 copy.」
「This is tower. Voyager 2,3 ready to takeoff.」
「Copy.」
ラリィバレーの滑走路に、再び爆音が響く。
3機のSu-30が、滑走路手前で唸っているのだ。
3機はスロットルを離陸位置にまで叩き込むと、前傾姿勢をとって滑走路を滑り出す。
アフターバーナーを点火。ジェット燃料が直接燃焼する爆音は、ヘッドセットを付けている整備兵の耳すら聾するほどだ。
加速した機は、フラップを全開にした主翼に空気を捉えさせ、揚力を得て上昇する。
対空装備のSu-30が3機、大空に舞い上がる。
後続の3機も順に誘導路から滑走路へタキシングする。
格納庫では、エンジンを吹かし待機するTu-160が5機。
既に離陸した護衛機は、上空で旋回し、待機している。
「Voyager 4,5,6 takeoff.」
後続機が離陸する。
アフターバーナーの炎の尾と、翼端からの薄い雲を引きながら上昇する機を見送りながら、グランエストは呟く。
「いつまでこんなことを続ける気なのだ。私の祖国は...」




