約束
頭上を通り過ぎていった、アグレッサーのF-16。
両親をすり潰した、ラーシャのF-15。
セラを殺した、敵か味方かも分からない戦闘機。
その全てが、美しかった。
航空ショーで緻密に計算された編隊飛行をする戦闘機。
訓練で、自由にのびのびと飛ぶ戦闘機。
その全てが、カッコよかった。
だから、彼女と約束した。
たとえ彼女を殺したのが、同じ戦闘機だとしても。
「約束なんです...セラとの...」
グレイズに、そう、答える。
「5年前の開戦の日、セラと戦闘機を見たことがあるんです。まだ自衛隊だったころの、ラーシャ機を」
「5年前、か...」
「えぇ...アグレッサー塗装のF-16でした。そのF-16は、私たちに宙返りを見せてくれました。
私、それが凄く綺麗で、カッコよくて、気持ち良さそうに見えたんです」
「だから、戦闘機乗りを目指したのか?」
「はい、でも......」
エリシャは、グレイズの顔を伺いながら言う。
「私は、人を殺す戦闘機は嫌いです......」
グレイズは、それを聞いて黙り込む。
「私は、戦闘機が自由気ままに飛ぶのが一番好きなんです。
......矛盾かもしれないけれど、私は武器を積んだ戦闘機は嫌いなんです」
「...なるほどな。お前が悩んでいたのはそれか」
「はい。私は今日、初めて戦闘機で人を殺しました。それが、私は嫌だったんです」
「...じゃあ、俺と約束しよう」
「へ?」
「いつか、この戦争が終わったら、二人で飛ばないか?訓練でも実戦でもなく、大空を自由に」
「大尉、それ...」
「フラグとか言うなよ?俺は生き延びて見せるからな。心配なのはお前の方だ」
「言いましたねぇ⁈ 約束ですよ?フラグ回収とか許しませんからね!」
「はは!その意気だ、いつものエリシャに戻ったな」
「もうっ!......アチィッ⁈」
苛立ったエリシャは、スープが入ったカップを口にし、予想通り盛大に悲鳴をあげた。




