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6話:王女の手紙

「手紙……?」


『レイト様へ

 あなたとお話ししたいことがあります。

 よんの日の朝、馬車でお迎えに上がります。

 ハイドブリガン王国第二王女サイカ・ハイドブリガン』


 王女様って嘘だろ……。興奮しすぎて部屋の中で暴れていたせいか、ベッドの脚に足の小指をぶつける。目から涙が出そうなほど痛いが、ベッドの隣にカレンダーが貼ってあったのを見つけた。エイジがこまめにカレンダーをめくっているのであれば今日は『十一の月二週肆の日』となっている。十一の月とか二週とかよくわからないが、今日が肆の日であることに変わりはない。窓から校門の前に一台の馬車が止まっているのを見ると急いで校門まで走った。馬車の窓は桃色のカーテンがかけられていて中は見えない。大きさは小さいが、王女様らしいかわいいという印象が強い。執事服を着た白髪の男性がその前に立っていた。


「レイト様ですね。初めまして、私はサイカ様の護衛兼、お目付け役をさせていただいております、セシリウスと申します。以後お見知りおきを」


「あ、はい、よろしくお願いします」


 セシリウスの丁寧な挨拶にぎこちない挨拶で返す。


「中でサイカ様がお待ちです。城に着くまでの間、わがままに付き合ってあげてください」


 セシリウスが扉を開いて歓迎する。中は綺麗なシャンデリアが室内を照らしていた。肘掛け付きの紫色をした椅子が向かい合わせに二つ、それを挟んで大きな正方形の机が置かれている。


「では、ごゆっくりと」


 セシリウスが扉を閉める。椅子に座っているのが王女様だろうか。眩しい金のロングヘア、金の瞳。その横には水色混じりの鎧を着た女騎士二人。


「レイトさん、どうぞかけてください」


 そう促され、俺は王女様と向かい合った席に座る。


「まずは自己紹介でもしましょうか、ご存知かと思いますが私はサイカ・ハイドブリガン。ハイドブリガン王国第二王女です」


「俺はレイトです、この度はお招き……」


「あ、敬語などは構いませんよ、それと私のことはサイカと呼んでもらって構いません」


 俺一人だけが驚いていた。俺、王女様に無礼な態度取って死刑とかなるの嫌なんだけど。


「えっ……いや、でも……」


「私、同年代の方とお話しするのは初めてなんです。だから、あなただけにはそう接してもらいたいのです」


 まあ、王女様がそう言ってるんだから死刑になるなんていうことはないだろう。


「……わかった。それなら、俺と話す時も堅苦しい敬語は止めてほしい」


「敬語以外で話すのはあまり慣れていないのですが……可能な限り善処します」


 サイカがもじもじしている。同年代の人と話すのは初めてって言っていたから緊張しているのか。よし、ここは俺がリードしないとな。俺はサイカの奥の棚を指差す。


「サイカ、あれはなんだ?」


「ああ、あれは『シグリスボード』というカードゲームですね。ハイドブリガン王国で最も人気のあるゲームなんですよ」


「へぇ……」


 女騎士の一人が道具を持ってくる。トランプと同じくらいの大きさをしたカードの束と、其のカードがぴったりと入りそうな枠が書かれた板を二つずつ。サイカは俺にカードの束を渡す。


「では、ルールを説明しますね――」




 とある家の廃墟をアジトにしている暗殺者団体『宵闇』。崩れ落ちた天井から日の光が差し込む。掲示板に暗殺対象の似顔絵が無造作に貼られている。黒装束を着た少年は崩れた瓦礫の上に座っている。同じように黒装束を着た者が二人、少年の横で立っている。


「お頭、次のターゲットはどうしますか」


 お頭と呼ばれた少年は片手に持った装飾の一つもない素朴なナイフを王女の写真に投げつける。


「次のターゲットは……王女だ」


 三人の暗殺者団体は怪しげな仮面をかぶり、廃墟を出た。




 ――俺は一枚のカードを人差し指と中指で挟み、上に掲げる。


「紅蓮の暴龍ラースドラゴンを召喚、召喚時効果で相手のフリースレイを破壊! そして、マナインダストでアタック!」


「くっ、負けました……」


「よっしゃあああ!」


 学校を出て三十分ほど、俺たちはシグリスボードにものすごく夢中になっていた。走行中ずっと起こっていた馬車の揺れが急に治まる。セシリウスが出発時と同様に扉を開ける。


「みなさん、城に着きました。どうぞ、降りてください」


 馬車から降りると、ブレイバー学院以上に大きい城が目の前にあった。


「おおー! すっげー!」


 セシリウスが最前列を歩き、後ろに俺とサイカ、最後列に女騎士二人で城の中へと進む。


「では、私は国王陛下とお話がありますのでこれで失礼します」


 セシリウスは一礼すると城の奥へと向かっていった。俺たちはサイカに連れられ、城の三階へと進む。この階は王族関係の個室となっているらしく、俺たちは城の一番左側にあるサイカの部屋に入った。


「それでは、お茶を入れてきますね」


「サイカ様、私もお供します」


 サイカと女騎士の一人が部屋を出る。この部屋には俺ともう一人の女騎士の二人だけだ。


「そういえば、まだあなたの名前を聞いていませんでしたね」


 女騎士は兜を外し、俺の方を向く。兜で隠れていた短いクリスタルのように透き通った水色の髪、青色の瞳。


「私はシレリア・アーゼス、サイカ様の護衛をしている」


「サイカのこと聞いてもいいか?」


「まあ、答えられる範囲内であれば」


「サイカって何歳なんだ?」


「今年で十四歳だ」


 部屋全体が白一色で統一されており、生活できる最低限の家具しかそろっておらず、子供らしさの欠片もない部屋だ。よほど我慢をしてきたのだろう。


「サイカはこんな生活、苦しくないのか……」


「……サイカ様はずっと操り人形のような暗い顔をしていた。だが、馬車であなたと過ごしたサイカ様の表情は今まで見たこともないくらい楽しんでいた。レイト、これからもサイカ様と接してあげてくれ」


「……ああ、当然だ」




 後ろを私の護衛、ナタリス・アイレンが歩く。


「ナタリス、お茶を入れるくらい私一人で出来ますからついて来なくてもいいのですよ?」


「いえ、そういうわけにもいきません。最近は宵闇による事件が後を絶えません」


「宵闇……貴族、王族ばかり狙う暗殺者団体のことですか……。ですが、城内にはハイドブリガン王国最強の騎士、ゴルサールがいますから問題ないでしょう――」


 その時、通路の窓を割り、何者かが城内へと侵入した。現れたのは仮面をつけた黒装束の三人組。即座にナタリスが前に出る。


「サイカ様、後ろに下がってください!」


「サイカ・ハイドブリガン第二王女だな。国民のため、ここで死んでもらう!」

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