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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬
第一部

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98/118

96*アールレイの森

 ジェマは時々動くので、生きてはいるようだ。たまに治癒魔法を飛ばしておいた。


 エンジンを切って桟橋を出し、ジェマをうんしょっと立たせる。凄い力で柱にしがみついたままなので、指を一本ずつ剥がしていった。


「降りるよー。歩ける? 足元見てね」


 まずジェマを桟橋に立たせておいてから、ボートの後始末をして、私も降りる。

 ジェマの手を引っ張って桟橋を渡り、海岸に降りた。ボートをBOXに仕舞う。


 海から少し離れた場所に小屋を出し、ジェマを休ませることにする。


 そうか、さっきジェマをBOXに仕舞っちゃえば早かったかも。


 靴を脱がせようとしたら、自分で脱いでくれた。大丈夫かな?

 ジェマはすぐにトイレに走って行った。やっぱり気分が悪かったのかもしれない。


 私もずっとハンドルを握っていた手を温水で温めて、治癒魔法と魔力マッサージを行った。


 昼近いので、早目にご飯にしてしまおうかな。でもジェマは食べられるかな。食べられそうな物を探していたら、ジェマがトイレから出てきた。血の気が引いた真っ白な顔をしている。


「具合悪い? 吐いた?」

「……吐いてないです。風が強くて飛んじゃいそうで、掴まってました。すっごく速いですね、馬車の何十倍も速いと思いました」

 思ったより大丈夫そうだ、良かった。治癒魔法が効いたかな。


「食欲はある? この辺もう魔素濃くなってきてるけど大丈夫?」


「おにぎり食べたいです」

 大丈夫だな。おにぎり食べられる元気があるなら。


「何のおにぎりがいいかな。昨日アイテムバッグにも色々入れておいたから、私がいないときは食べてね」

「わあ、ありがとうございます」


 色々種類の違うおにぎりとお惣菜を出して、私に味噌汁、ジェマにオニオンスープを出す。

 昨日味噌汁を出したら変な顔をされたので、別のスープにしてみる。味噌汁はジェマには塩分が強すぎたらしい。オニオンスープは大丈夫みたいだった。


 今日はおにぎり屋さんのおにぎり。コンビニやスーパーのよりは、だいぶ美味しい気がする。火魔法でちょっと温めると、出来立ての感じになって良い。


 いくらのおにぎりを選んだ。うんまーい。いくらの醤油漬け具合がたまらない。さすが北海道。これは私もおにぎり日記をつけるべきでは。


 ジェマはタラコおにぎりを選んだ。

「ん? 何ですか、プチっていいました。口の中、プチプチしてます」

「魚の卵だよー。私のも魚の卵だよ」

「カノンさんの卵は大きいですね。こっちは小さいです。プチプチ美味しいです」

 なんだ、結構元気そうだ。全く動かないから心配してたよ。


「ボート大丈夫だった?」

「楽しかったです」

 それ絶対嘘だろう。


「飛ばされそうでしがみ付いてましたけど、めちゃめちゃ速くって楽しかったです。海って楽しいんですね」


「ジェマ動かないから、怖いのか気持ち悪いのかと思ってたよ。とにかく早く陸に上がろうと思って、スピード上げたんだよ」


「だから速かったんですね。海が広くて感動しました。将来は船乗りもいいかもしれないです」


 そんなに気に入ってたのか? こっちはジェマが死ぬかもしれないってヒヤヒヤしてたんだけど。


「車とボートどっちが良かった?」

「ボートです! 海がしょっぱいって解りました。何度も口の中に入って来ました。あ、このおにぎりと似た味がします」

「そうだね、海の魚だし、塩も海からだしね」


 そうか、楽しかったのか、そうかそうか。

 私の初日は梶山船長にしごかれて、ボロボロだった気がするぞ。


「じゃ、午後からだけど、森の傍まで移動して小屋を設置する場所を探そう。誰もいないといいけど、人がいたら場所移動しないと」


 ギルドがくれた簡単な地図を見ながら考える。

「普通に5ヶ所のポイントを一周するなら、徒歩で2時間位らしいけど、魔獣と動物の数を数えながら移動すると、1ヶ所につき1時間位必要になるから、5時間+移動2時間で7時間。イレギュラーもあるからプラス2、3時間余裕見ておいた方がいいか。今晩は戻れないから、9時になったらちゃんと寝るんだよ。戻るのは明日のお昼位になるかな。食べ物は冷蔵庫とジェマのバッグに色々入ってるから」


「そうなんですか。カノンさんは外で寝るんですか? 危なくないんですか?」

「ううん、もう一つ小屋があるから」

「え?」

 ジェマが目をパチパチする。


「これと同じ小屋がもう一つあるの。だから何も気にしなくて大丈夫。保護膜かかってるから森の中でも襲われる心配ない。今日はジェマの魔素訓練でもあるんだからね。魔素濃くて辛いかもしれないけど、頑張るんだ」

「はいっ、呼吸法覚えました」


 ジェマにもしものことがあると困るので保護膜を掛けている。今は魔素遮断率を町並みに高くしてある。少しずつ慣らして遮断率を下げていく予定だ。


 海岸を片付けてからまた車に乗る。

 ジェマはまだ怯えていたが、自ら乗ってシートベルトも付けられた。


 ユイにナビを頼んで移動する。

 この辺の森には今誰も人がいないようだ。

 エルゼダンテの森と比べると確かに浅い森のように思える。魔素の濃さと云うか緑の濃さと云うか。幹の太さが全然違うな。


「ここなら大丈夫そうだね。この辺に小屋建てちゃうね」

 車を降りて森に入っていき、5分ほど歩いたところで小屋を出した。

 木が並んでいたところにいきなり登場した小屋に、ジェマが驚いた顔をする。


「解る。私も最初びっくりした。これが小屋を避けたら木も復活するんだよ」

「どうしたらそんなことになるんですか?」

「うん、私も聞いたけど、よく解らなかったから、こういうものだと思って。ジェマ、魔素はどう?」

「はい、吐き気は大丈夫ですけど、頭はちょっと痛いです」


 一時凌ぎだろうが、治癒魔法をかける。

「水分沢山とって寝てるといいよ。じゃあ何か困ったときは、天井に向けてユイを呼んでね」

 何かあればユイからこっちに連絡が入ることになっている。ユイが小屋の保護膜の魔素遮断率を変更出来るので大丈夫だろう。

「解りました。カノンさんこそ気を付けてください」

「うん、じゃあ明日ね」



 さーて、お仕事頑張りますか。

 めっちゃくちゃ久しぶりの魔獣討伐なので、大丈夫だろうか。

 歩きながら水弾や土弾を試し撃ちしてみる。威力は上がったと思うんだが、魔獣に気付くまでのスピードや走るスピードが下がっている可能性がある。


 まずは索敵をしながら近くのポイントに向かう。


 歩いて15分、初めての魔獣が引っかかったと思ったら、動物だった。

 普通のリスだ。

 魔素は殆ど含んでいないので魔獣ではない。尻尾フワフワで顔が可愛い。

 こうやって見ると、魔リスと全然違うな。向こうはシャーッて感じだもんな。


 エルゼダンテの森は魔素が強すぎて、外側にしか動物がいなかった。内側は全部魔獣なので、逆に全部討伐出来るので楽だった。

 こっちは索敵に引っかかっても、魔獣か動物かを確認しなければならないようだ。


 今度は魔獣かと思ったら魔石だった。拾うと色の薄い魔石だ。

 冒険者ギルドでもバケツに入ったクズ魔石をたまに買い取るが、それも色が薄いのが多い。魔素を沢山含むと色が濃くなるらしい。それだけ火種とかに使える動力が増えるので、濃い魔石の方が値段も高い。


 森から魔獣が出て来ないか安全確認のために調べているクセに、魔獣を探してしまう私がいる。

 その後も動物ばかりで魔獣に会わないまま、最初のポイントに着いてしまった。


 えー、この森穏やか過ぎん?


 だって北口の草原の方が、魔鼠とかいっぱい出るみたいじゃない。前に会った冒険者が沢山狩ってたもんね。

 ポイントで10分粘って索敵したけど、魔獣の気配なし。

 いや、いない方がいいんだけどね。


「ねーユイ、もう次行っていいよね。1時間待ったところで変化ありそうに思えない」

「いいんじゃない。だって魔獣いないもん」

「よし、次行こう」


 2番目のポイントに進む。

 初めて魔鼠を見付けた。即座に水弾を撃つ。鼠に水晶弾じゃオーバーキルだしね。


「やったー初魔獣」

 あとは色の薄い魔石を3つ拾った。

 またポイントで10分待つが、何も出て来ないので、次に進む。


「この森の魔獣はハンターに全て駆逐されたんじゃないかな」

「そうかも。上から見ても全然いないよ」

「調査の必要なくない?」

「でも数を数えないと、任務成功にならないんじゃないの?」

「面倒な求人を受けてしまった。もう索敵しまくって走り抜けよう」


 3番目まで走って行き、索敵の範囲を広げる。魔獣がいたら討伐して、動物は確認して、魔石は拾う。10分経ったら、4番目に走る。


「あっと云う間に小屋に帰れそう。ジェマに『もう帰ってきたの?』って言われそう」


 本当にあっと云う間に終わってしまった。


 森全体で、動物50匹、魔獣5匹(魔リス2、魔鼠3、討伐済)、薄い魔石7個。

 10時間位かかるかもと思っていた仕事が2時間で終わってしまった。エルゼダンテと違って平坦な森なので、走りやすくて早く移動出来た。


「ジェマはどんな感じ?」


「頭痛いみたいで、大人しく寝てるよ。でもアイス食べてたから、そこまで酷くはなさそう。一晩ここで慣らした方がいいね」


「うむ。アールレイの森は問題なさそうで安心したけど、どこから村が襲われるか心配だから、周辺を見張って来ようかな」


「そうだね。カノン物足りないって素直に言いなよ」


「え? 何の話?」


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