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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬
第一部

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94*物流と通信

 さてアイテムバッグの検証だ!

 先日の要望書が通って、今日の昼に新しいアイテムバッグが運営より送られてきた。

 帰還魔法の魔法陣はまだもう少し改良時間がかかるようだが、こっちの方が早く出来た。


①ジェマ用のアイテムバッグ


 完成したバッグは青いがま口の小銭入れだった。小さいし、開けやすくて良い。紐がついているので、どこかに結んでおけば失くさなくて良いだろう。


 私のBOXにも、ジェマと云うフォルダが出来ていたので、タブレットを操作して鮭おにぎりとイチゴアイスをフォルダに入れた。


「ジェマ、アイテムバッグだよ」

「どうやって使うんですか?」

「金具をパチンと開けてみて」

 言われた通りに開けて中を見るジェマ。


「おにぎりと何かが入ってます」

「この間のアイテムバッグと使い方は同じだから。出して、テーブルに置いて」

 二つをテーブルに取り出すジェマ。


「わっ、冷たい! こんなに大きいものが小さい袋から出てきた! あ、アイスだ」

「前に使った物より容量は大きいよ。うちの国のだからね。アイスもずっと溶けないよ。もう一度入れてみて。操作は簡単でしょう?」

「はい。アイスが溶けないなんて凄い。でも落としたり取られたら大変です。どこに仕舞っておこうかな」


「まあ、ジェマしか使えないようになってるから、失くしても大丈夫だけどね。ポケットに入れておいて、紐の端を安全ピンで留めておくようにしようか」

「はい、落とさないように気を付けます」


「私のBOXと同じで、アイスが溶けないってことを知られると狙われるから、言っちゃダメだよ」

「解りました。秘密です」


「ボーナさんにもだよ。どんどんバレていってるけど、ジェマは何も知らないってことにしといてね」


「お姫様って言ってしまいました」

「いや、それは本当の話じゃないから秘密とは違う。あっ、スプーン無いとアイス食べられないじゃん」

 ジェマフォルダにスプーンも多めに入れる。後で色々入れておこう。


「それ、他の人が開けようとしても開かないから。でもアイテムバッグの機能を知られてしまうと、ジェマを脅して運び屋にしようとする人が出てくるから、絶対内緒だよ」

「解りました。他の人の前では使いません」


「普通のアイテムバッグとして使うのは構わないけど、その位の気持ちでいる方がいいかもね」

 ジェマが理解したようなので、次の検証にいこう。



「こっちは関係ないんだけど、ちょっと実験に付き合ってくれる?」

「はい! 何でもします!」


「何でもはさせないよ。こっちのバッグを持って、庭に行ってくれる? 準備が出来たら声掛けるから待ってて」



②私とジェマ共有のアイテムバッグ

 対になる別々のアイテムバッグを持つ。保管先は小屋の物置とする。両者のバッグから物置を介してやり取りしたい。



 取り出したのは、さっきとほぼ同じ茶色のがま口。

 茶色のがま口には、もう一つ対のがま口Aと魔法陣シールがある。

 ジェマにがま口Bを持たせて庭に行かせ、私は2階の物置に行く。

 まず魔法陣シールを部屋の中央の床に貼る。そして上に手を置いて魔力を流す。魔法陣がキラッと光った。


「これで保管場所設定出来たのかな?」

 念のため物置を出て私の部屋に移動してから、屋台を出してがま口Aに入れた。

 がま口Aを覗き込むと、屋台が入っているのが見えた。


 ドキドキして物置に戻ると、物置の端っこに屋台が置いてあった!

「おー、本当に保管場所になっている」


 物置部屋の窓を開けて、庭に立っているジェマに上から声を掛ける。

「がま口の中に屋台が入っていると思うから出してみて」

 ジェマががま口Bを覗き込み、庭に屋台を出して驚く。屋台を出すのはジェマは初めての経験だ。

 私も物置部屋にあった屋台が急に無くなって驚いた。


「もう一回、がま口に入れてみて」

 さっき屋台があった場所に駆け寄る。人や障害物があったらどうなるのかのテストだ。

 最悪頭の上に屋台が直撃する羽目になるが、多分私の体なら平気だろう。


 そう思いながらもビビっていたが、ぶつかることなく私のすぐ隣に屋台が現れた。

 一応障害物の感知がされているようだ。いつも普通のアイテムバッグに屋台やら立札やら食べ物やら色んな物をポンポン突っ込んでいるが、潰れたりしている様子も無いので、アイテムバッグの魔法陣にその辺りの記述がされていると思われる。


 もう2、3回、ジェマと屋台のリレーを繰り返すが、動作は問題ないようだった。


 実験終了を告げて、ジェマを2階の物置に呼ぶ。そこに屋台があってジェマもびっくりしていた。


「今のは実験だから、ジェマが持つバッグはさっきの青い方ね。青いバッグに屋台を仕舞っておいて」


『②私とジェマ共有のアイテムバッグ』とは書いたが、ジェマの分は①があれば事足りるので、名前を使っただけだ。

 ②は同じ場所を保管場所として、2人で使えるアイテムバッグってことだね。


「カノンさんが屋台持ってなくてもいいんですか?」

「私はジェマのバッグの中も触れるから、いつでも屋台を取り出せるよ。私がいないときはジェマも出し入れ出来るといいでしょ」


「任せて下さい! 頑張ります」

 一人で屋台やれと言った訳ではないが、やる気があるのはいいことだ。


『何でもやります』と言った割に、炊事や洗濯や掃除など何もすることが無く、食べてばかりいる現状をジェマは嘆いており、仕事をくれと毎日言われる。

 そう言われても無いは無いので、期待に沿えずにいるのだ。


 こういう実験とか付き合って貰うのは、仕事っぽくていいかもしれない。

 魔法が使えるようになったら、ドライヤー魔法で髪乾かして貰おうかな。


「任務終了。解散」と声を掛け、現地解散とした。



 物置の魔法陣シールは今のところ使い道は無さそうなので外しておく。うちらにはBOXがあれば十分だもんね。

 保管場所は、壁に囲まれている空間なら、大きくても小さくても良いそうだ。


 これを使って、ギルドの支部間の物のやり取りが出来ないかと考えている。

 ギルド間のやり取りなんて自分と関係ないからどうでもいいんだけど、単純に思いついてしまったからだけだ。


 今のところ私からアイテムバッグを渡す相手は、商業ギルドのボーナさんと、冒険者ギルドの魔熊長を考えている。


 ボーナさんへは商品の注文と納品だ。

 アリッチェへのビタミンC、茶、トマトなど。向こうから注文書を貰って、商品をバッグに納品すれば良い。

 レインディナに行けと言っておいて、定期的に帰って来いと無茶なことを言うので、このやり方がお互いにいいだろう。帰還魔法陣が実用化すれば定期的に帰って来れるが、それはしばらく内緒にしておきたい。


 魔熊長へは魔熊の納品。

 どうも魔熊が仕留められるハンターは他の街にもあまりいないらしい。

 と云うより、エルゼダンテの森くらいの深い森じゃないと、そもそも魔熊がいないので、討伐機会も無いようだ。

 他の町の買取所で魔熊を出したら、その町にも魔熊が出たかと騒動が起こりかねない。

 既に慣れてくれたアリッチェに魔熊を卸すのが最適な気がする。

 魔熊長は喜ぶし、魔熊料理をこの街の名物料理として発展していって欲しい。


 ジェマとボーナさんと魔熊長のアイテムバッグは、いずれも保管場所を私のBOX内にすればいいので、①の青いがま口で良い。

 貸し出す際には、故郷の容量が大きくて生ものが腐りにくいアイテムバッグってことにしよう。



 ②の茶色のがま口は、私のBOXは使わないケースに使う。


 しかし、これって結構ヤバい。

 今までは手紙箱とか連絡箱とか小さな物しか運べなかったが、保管場所さえあればかなり大きな物も運べてしまう。


 物流が変わる。頑張って馬車や船で運んでいたのが不要になる。

 全てのギルドが欲しがるだろう。そして国も、商人も、冒険者も、農家も。


 物資の運搬だけではなく、通信網が完成すると云うことだ。

 1対1のやり取りに過ぎないが、所謂FAXと理屈は同じだ。

 ローマから各支部へ急ぎの伝達がある場合、版画でも刷って同じ手紙を沢山用意して、各支部との双方向がま口にどんどん放り込むだけだ。先方からの返事もすぐに戻って来る。


 今までのギルドにあった連絡箱と違って、がま口は人が持ち歩けるから、外出先でも手紙が受け取れる。

 つまり海の上でも、最前線でも。


 うーむ、やっぱり通信は戦争を連想させるねぇ。

 無線傍受の様な危険性も無いから暗号化する必要も無い。


 通信が戦争に役立つのも確かだが、もっと便利なことが出来るようになったのも事実だ。どう使うかだ。


 アルマさんによればアイテムバッグの魔法陣はロストマジックらしいので、『便利なアイテムバッグ作りました』なんて気軽に屋台で売れるもんじゃない。


 今の仕組みを応用している以上、魔法ギルドに先に話を持って行く必要があるね。

 特許だの決まり事だの話になるだろう。どれほどの混乱が起きるか。



 うわー、昨日コピー用紙を市場に出すと命狙われるかもしれないとか言ってた私が通りますよ。

 そんなどころの問題じゃないじゃん。やっばー、何て物を考えついてしまったんだ。


 後ろ盾が欲しいどころじゃない。

 いっそ皇帝に直接売り込みに行った方が良くない?

 その方が色んな混乱起きないんじゃない?

 しかし国に飼われるのは嫌だ。


 私は海の見えるカフェがやりたいだけなんですー。本当です、信じて下さい。

 頭痛くなって来た。


 明日は海と山なので、自然の中で癒されよう。ジェマと旅行だと思って、全て忘れることにしよう。


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