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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬
第一部

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93/118

91*ジェマ商人(仮)になる

 本日も盛況なり。

 市場にいる人たちの間で広まったらしく、屋台のおじちゃんたちが次々にやってくる。


 みんな重いピアスにはうんざりしていたようで、軽い小さいピアスに喜んでくれた。

 値段も1,000デナリ~と手頃なので、手が出しやすいようだ。


 市場に行き渡ったら、市場以外の人たちもやって来る。本音を言えば、その前にこの町から逃げたい。


 でも優等生のジェマは許してくれないので、せっせと接客する私であった。


 昼すぎに商業ギルドの人がやって来た。

「ギルド長が帰りに寄って欲しいそうです」とだけ告げて帰って行った。


 ジェマの件か、ビタミンCの話がまとまったのかなとぼんやり思っていたのだが、お客さんたちの方がそれを聞いて慌て出した。


「すぐ行った方がいいんじゃないか」

「ギルド長をお待たせしたらいけないよ」

「あの人を怒らせたら大変なことになるよ」


 大丈夫だよ。帰りに寄れって今の人も言ってたから終わってから行くよ。ボーナさん優しい人だよ。

と答えるも、市場の人たちは皆青い顔をしている。


 相当ギルド長が怖いらしいので、何故か事情を聞くとこんな感じだった。


 前商業ギルド長がここの領主と癒着して、色々と便宜を図っていたらしい。

 領主のために手数料を増やしたり、領主の気に食わない商人を潰したり、領主に反論した外国の商船を出入り禁止にしたり、やりたい放題だったそうだ。

 それが明るみに出て、前商業ギルド長は更迭され、当時レインディナの副支部長だったボーナさんが派遣されることになった。


 実はここの領主とボーナさんは学生時代同じクラスで、侯爵令嬢のボーナさんは男爵令息だった領主を舎弟の様にこき使っており、当時から頭が上がらない存在だったらしい(想像がつくな)。


 ボーナさんは家を出て大手商会に嫁いだため平民になり、領主は父親の跡を継いで男爵になった。

 今は身分的には自分が上だと領主は権力を振りかざそうとしたが、沢山の証拠を突き付けられ、口論では全く勝てず、思わず手が出そうになったところ、逆に平手打ちされてぶっ飛ばされたそうだ。


 その様子は沢山の人に目撃されており、へたれ領主と共に凶悪ギルド長の印象を残した。

 平民が貴族を殴るなど言語道断なことだが、ボーナさんは元々侯爵令嬢、実家から睨まれたら男爵家なんて簡単に潰されるそうだ。

 その後領主の元にも監査が入り、取り潰しまではならなかったが、一家は僻地に引っ越し、町の運営は現在代官が行っていて、領主はノータッチだ。

 前商業ギルド長も今は、本部で小間使いの様な仕事をさせられているようだ。


 そんな訳で、領主を平手打ちでぶっ飛ばしたシーンを町の人は忘れられないようで、ボーナさんが恐れられている。


 悪役令嬢じゃん!

 もしかして転生してきた?

 だから勘が鋭いのか?


 色んな理由があろうとも、今は可愛がられていることに感謝せねば。


 早く行って来いと云う助言を断り屋台の営業を続けていたら、絡んでくる外国の商人を他のお客さんが追い返してくれたり、接客まで他のお客さんが手伝ってくれたりする。

 結局閉店時間より30分も早くにお客さんがいなくなり、皆に背中を押されるように店を畳んだ。


「なんだかなぁ」

「……カノンさん……」

 ジェマが後ろで立っている。

「どうしたの?」

「私冒険者ギルドで待ってていいですか?」

「いや、ジェマの登録だから本人がいないとダメじゃん。行くよ」

 動かないジェマを引っ張る。ジェマってこんなに重かったっけ?


 商業ギルドに着き、ジェマを引っ張ったままボーナさんに声を掛けた。

 ボーナさんがギルド長室を指差すので、勝手知ったるで部屋に入りソファに座って待つことにする。ジェマは置物の様に固まっていた。


 5分ほど待っていたらボーナさんがやってきた。


「随分早かったんじゃない? まだ来るの遅いと思ってたわよ」

「なんか他の屋台の人たちが手伝ってくれて、早く帰れたんですよ」


「あら、良かったわね。ジェマちゃんこんにちは」

 ボーナさんがジェマに顔を向けて微笑むと、ジェマは「ひっ」と固まった。


「どうしたの? 体調悪いの?」


「いやさっき市場でボーナさんの話聞いて「カノンさん!」ボーナさんが元侯爵令嬢って聞いて委縮しちゃって」


「そんな昔の話。貴族だったときより平民の方が人生長いんだから、ジェマちゃんと同じ平民よ。気にしなくて大丈夫よ」


「だってさ。ジェマ言葉遣いとか心配しなくて大丈夫だよ」

「あ……あ……はい……ありがとうございます……」

「まだ硬いわねぇ」

「そのうち慣れますよ」



「じゃあ仕事しましょうか。この間の件ね、レインディナと話がついたわ。ビタミンCを来月の頭までに単価5,000デナリで1万個納品お願いできる? これ注文書ね」


「はい、承知しました。納品場所はここで大丈夫ですか?」

「あの大きさならアイテムバッグで運べるからここでいいわ」

 5,000万デナリ、とジェマが小声で呟く。


「そして半年後までにレインディナの商人ギルドに5万個納品して頂戴。その任務をジェマちゃんにお願いします」

「はいっ!」

 ジェマが急に呼ばれて起立する。


「ジェマちゃんは特殊商品専任商人と云う肩書になります。その他の取引は出来ない商人なので、正式な商人登録は成人してからね。でも州外に出るのは商人と同じなので問題ないわ、宜しくね」

「はいっ!」


「ジェマと屋台やったり出来なくなるのかな? その他の取引が出来ないってことは」

「ああ、その位目を瞑るわ。飽くまでもカノンちゃんの補佐ってポジションなら問題ないわ。ジェマちゃんが一人で外国に買付けに行ったりすると困るけど」

「それは無いです!」


「そういう訳でジェマ、エンジーナまでの予定だったけど、レインディナに行くの付き合って貰えないかな。終わったらエンジーナに戻ってくるから」

 エンジーナとレインディナにも家を用意しないとね。


「大丈夫です!」

「またガチガチのジェマに戻ってるなー」

 最初に会った頃こんな感じだったな。


「それで、これが登録の書類ね。目を通して記入してくれる?」

「ジェマは文字の練習中なので、書けないところは代筆してもいいですか? 署名は出来るので」

「大丈夫よ。ゆっくり読んで」


 ボーナさんがジェマに詳しく色々と説明してくれる。ジェマもめちゃくちゃ頷きながら聞いていた。

 一通り話が終わってジェマがサインする。


「えーとこれだけど……」

 ボーナさんから手に滑り込まされたメモを見ると、『登録料10万デナリ、年会費30万デナリ、合計40万デナリ』とあった。


 相変わらずだな、商業ギルド。

 でも今3億デナリの取引を貰ったばかりなので、たった40万でいいんですか? と云う気分だ。

「口座からお願いします」


 晴れてジェマが商人(仮)になった。ギルド証とバッジを貰う。

「冒険者バッジの隣に付けておくんだよ」

 ジェマの襟元に付けてあげる。


「おめでとう」

 二人でジェマに拍手を送った。

 これで土曜も町の外にジェマを連れ出せる。


「ありがとうございました!」

 ジェマはまだガチガチながら、ちょっと嬉しそうな顔をした。


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