8*第7惑星に転生した
心の準備も、移動中の違和感もなく、気付いたらベッドに寝ていた。
お行儀よく掛布団をきちんとかけて仰向けに寝ていた。
壁や天井を見るとログハウスのようだが、この掛布団には覚えがある。
近所のホームセンターで買ったベージュの花柄のカバーだ。
ということは、この布団は、私が召されたときの布団なのではないか。
死んだときの布団だと思うとぎゃーっと思うが、自分自身なんだからまあ許そう。自分の幽霊を怖がっても意味が無いし。
周囲を見渡すと、配置は異なるがテーブルやチェストなどは自分の物だ。元の家から持ってきてくれたらしい。
新しいもの用意してくれても良かったけど、もったいないし使えるものは使わないとね。
「……花音さん…」
微かな雑音と共に、耳元で声がした。
「え?」
「……ああ、つながりました! ユイです! 体は大丈夫ですか?」
直接耳に声がする、なんだこれ。
左耳に手を伸ばすと、イヤーカフが付いているようだ。イヤホンになっているんだね。
「大丈夫です。魔素は平気みたい。……って、体がある?!」
慌ててベッドから立ち上がって、鏡を探す。
クローゼットの扉に鏡がついていた。近寄って全身を映す。
「これ私?!」
なんということでしょう。
日本の平面顔だった私が、イタリアのくっきり美人に。鼻が高い!
髪の毛は淡いブルネットでストレート、腰位まで長さがある。目も前よりは薄い色に見える。
年は20歳位かな。32だった私。もう一度青春を謳歌できますね。
「15歳の流行りの美人顔になっています」
「15? 20歳位じゃなくて?」
「成人年齢が15なので、なるべく長く楽しめるように15歳に設定しました。欧米女性は大人びて見えますからね。とはいっても戸籍がある訳じゃないので、年齢なんて口で言っちゃえば勝ちですが」
「そうなんですか。それより髪の毛長すぎませんか? 洗うのも大変そう」
「そっちじゃ女性は髪が長いのが当たり前なので、面倒ですがそこは諦めて下さい。花音ちゃんは、東から来た旅人なので、ちょっとオリエンタル要素も入れてストレートにしました。この辺りウェーブヘアが多いので。でも外見は念じれば変更出来るので、気に入らなかったら好きなように出来ますよ」
「こんな美人をどう変えればいいか見当も付きません。いつの間にか、花音ちゃんになってますね」
「肉体年齢は私の方がお姉さんですからね」
ユイさんは20歳位に見えたから、そういうことか。
「人生の長さで言っても、私がずっとお姉さんです」
輪廻転生の回数ですね。
「これからずっと一緒なんだから、敬語やめよう。カノンでいいよね? ユイでいいよ」
「いきなりくだけましたね」
「だって危険を知らせるときとか、敬語じゃ間に合わないでしょ」
「危険は無いことを祈ります。そういえば魔素大丈夫ですね」
「ああ今は魔素は保護膜で100%カットしているの。慣れる前に、先に色々説明しとくね」
「あ、そうなんですね。脅されてたけど魔素大丈夫って思ってたのに、これからかー」
「これからこれから。テーブルの上にタブレットがあるでしょう?」
振り向くと、小さ目のタブレットが置いてあった。スマホより大きくてタブレットより小さいサイズ。
「二つ折りタブレットだったんだ」
「そう、他の人から見ると手帳にしか見えないから。検索しても入力しても、手帳に何か書いてたり、パラパラめくっているようにしか見えないから。音声検索もできるよ。私の声はイヤーカフから聞こえるからイヤーカフは外さず、タブレットもいつでも持ち歩くようにしてね」
「イヤーカフはシャワーとかも平気?」
「保護膜張ってあるからタブレットも濡れても平気」
「でもお風呂入るときは脱衣所に置いておいてもいいんでしょう?」
「カノンの裸はオーバーホールしてるときに見慣れているけど? ああ、坂口さんも」
「坂口さんも?!」
「あ、何度かだけね。一応タオル掛けておいた」
うう……。元々自分の体じゃないクセに、何故か精神的ダメージが。
「ありがとう。でも私の体と言われても、まだ全然信じられないしね。坂口さんもユイさんも仕事だし気にしない」
「ユイでいいって。まー、体変わったときは馴染むのに時間かかるね。しばらく鏡見るたびにびっくりするよ」
「こんな外国人顔あり得ないわー」
「さ、次いこう。お風呂とトイレは左奥ね。ちょっと見てみる?」
「うん、行く」
見たところ、普通の日本サイズのウォシュレットと、ユニットバス。バストイレ別で良かった。
浴槽は長く浅いタイプで足が伸ばせるのが良い。追い焚き機能と、浴室乾燥機能もある。やった!
洗濯機と、キッチンに行くと広いシンクに大きな冷蔵庫、IHヒーター、オーブンレンジ、炊飯器。
冷蔵庫を開けると、私の好きな物だらけだった。
「わー、好きなプリンにヨーグルトに水にビールに。なんでこのメーカー好きだって知ってるの?」
「そりゃあ地球のカノン担当は何でも知ってるよ。冷蔵庫の中身そのまま持ってきたんでしょう」
「でもビールは残っていなかった気がする。追加してくれたのかな」
「うん、無くなったら追加しておくよ」
「やった、飲み放題!」
いつの間にか私もタメ口になってるな。ユイが話しやすい人で良かった。
「でもビール飲む余裕はしばらく無いかな。魔素に慣れるまでビールなんて飲みたくなくなるよ」
「あああ、そうだった。ユイも慣れるまで大変だったの?」
「私はそっち行ったことないけどね。運営の研修ルームで魔素体験したことあるけど、最初は辛かったわ」
「怖いよー。え、あそこのこと運営って呼ぶの?」
「地球運営株式会社だから、運営」
「あ、そう」
未だ受け付けない情報だ。
「レトルトものもいっぱいあるね」
「野菜や肉も入ってるけど、しばらくは料理する気にもならないと思うんだよね。ジョージのお勧めいっぱい入れておいたから食べてね」
「ジョージって誰? 知らない」
あそこで知っているのはユイと坂口さんと、最初に会った佐伯さんだけだ。
「ジョージは運営の食堂の人だよ。めっちゃ地球の食べ物データベース作っているから、グルメ」
高そうなレトルトが多い。グルメのコックさんが勧めるなら楽しみだ。
「色々欲しいものあったら言ってね」
「なんでもいいの?」
目をらんらんと輝かせながら聞いたが、ユイは素っ気なく答えた。
「あんまり高すぎるものは会議にかけるかな」
「ですよねー」
やっと第7にやってきました!
北海道貰ってはじまりの町に行くまで、もうしばらくかかるので、楽しみにしていてください。
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また遊びに来てください。




