↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/83

9*水泳ってこのことかー

「んじゃぁ、一通り見たから魔素入れてもいい?」


「まだ外見てないよ」

「今の体に魔素100%浴びてどうする。死ぬ気? 窓からの景色で我慢してよ」


「だって緑の森しか見えないよ」

「外に出ても森だからね。こんなところまで来る人はいないけど、見つからないように森の中に建ててるから」


「夜中に誰か入ってきたり、魔獣に襲われたりする心配はないの?」


「保護膜張ってあるから大丈夫だよ」

「保護膜ってすごすぎない?」

「安心して。じゃあ、魔素5%入れるね」


「……うっ、解った、頑張る…」

 お腹に力を入れて身構える。

 が、特に問題ない。頑丈な体って言ってたから、5%程度じゃ大丈夫なんじゃないの。


 なんて思った矢先に、

「来た! うっ、頭いたい……いたいー……それに気持ち悪い……何これ」


「あ、水分いっぱいとってね。一日2~3L飲まないといけないらしいよ。ペットボトル持ってきて、ベッドで寝てなよ」


 覚束ない足取りで、言われた通りに冷蔵庫まで行って、大きなペットボトル持ってきて、そのままベッドに倒れこむ。


 気持ち悪い気持ち悪い。吐きそうで吐かないみたいな。

 よく考えたら私死んでから一年以上何も食べてないじゃん。吐くものないよね。

 とりあえず水は飲んでおこう。久しぶりの水だー。飲んでいる間は少し楽な気がする。いや、気のせいか。


 ベッドに仰向けになる。頭痛い、気持ち悪い。

 右を向く。頭痛い、気持ち悪い。

 左を向く。頭痛い、気持ち悪い。


 これで5%? やばい魔素に殺される。死なないって言ってたけど、嘘だ。こんなに辛いの死ぬ。


「ユイー死んじゃうかもしれない」

「大丈夫大丈夫」

「他人事だと思ってー」

「経験あるから解ってる」

「死ぬー気持ち悪いー」


 それきりユイは喋らなくなった。薄情者。


 でも気持ちは解る。病人の傍にいても、どうしてあげることも出来ないもんね。ただ見守っていることしか出来ない。


 息を吸う時間を短く、鼻から長い時間を掛けて少しずつ吐き出す。どうにか楽になる方法が無いか色々模索してみる。口から吸って、空気を送ったら息を止めて、鼻からゆっくりゆっくり息を吐く。


 気のせいかな、少しだけ楽になってきた。体勢は仰向けが良いようだ。

 他のことは考えずに、呼吸だけを無心で繰り返す。



 そのとき、はっとした。

「水泳!」


「え? え? 何?」

 ずっと黙っていたユイが、いきなりの私の大声に動揺している。



「これかーーー! イタリア語と水泳か!」


 坂口さんと受付の佐伯さんが食いついていたポイント、なんでそんなところに興味を示したのかと思ったら。

 イタリア語はすぐに納得したが、水泳は忘れていた。


「これって水泳の息継ぎじゃんかよーーー! ああ、普通に喋ると気持ち悪い」


「寝てなよー」


「水泳の息継ぎの感じで息をすると、少し楽になるんだよ」

「ああ、そんなこと言ってたわ。短く大きく吸うといいんだって」


 だから水泳歴14年の私に食いついたのか。タイムとか確かに関係なかった。


 魔素を沢山取り込むと気持ち悪くなると思って、吸うのを気持ちちょっとずつにしていたけど、思い切り吸った方がいいのか。


「わかったーやってみるー」

「気を付けてねー 仕事してるから何かあったら声かけて」

「ありがとう」


 要は高山病みたいなものなのかもしれない。酸素が薄くて、気持ち悪いのかも。地球より魔素が増えている分だけ酸素が薄いんじゃないだろうか。


 何も考えず呼吸に専念する。自分が水の中にいるように想像して、口から思い切り息を吸って肺に入れる。そしてまた苦しくなったら大きく吸い込み、それを一定の間隔で繰り返す。


 それだけに集中していたら、いつの間にか寝ていたようだ。



 目を開けると、辺りが真っ暗になっていた。

 元々森の中で少し薄暗かったが、今は夜のように部屋の中も真っ暗だ。


 とりあえず起き上がって、ベッド横のペットボトルを掴んで水をがぶ飲みした。


 寝る前よりは大分体調がいい。

 起き上がって電気をつけて、トイレに行く。


「カノン大丈夫?」

「うん、ごめん、寝てた」

「大丈夫なの? 気を失ってたとかじゃなくて?」

「んー多分寝てただけだと思う。気持ち悪いから目を瞑って呼吸に集中してたら、いつの間にか寝てた」


「今、体調は?」

「まだちょっと頭痛いけどね。寝る前より平気」


「やっぱり強い転生体だからかなぁ。初日でそんなに馴染む人いないよ」


「そうなの? でも頭痛いし、まだ5%でしょう? 続けられる自信ないよ。あ、労災とかおりるのかな」


「あはは」

「なんか笑って誤魔化された気がする。お腹空いたから何か食べる」


 キッチンでレトルトを探す。確かに何か料理しようと思う余裕は無い。


 元々そんなに料理好きじゃないし、最近外食多いから健康のために野菜茹でようとか、食材貰っちゃったから仕方なく何か作ろうとか、料理するなんてそんな程度だった。

 コンビニやスーパーで事足りる時代だもんね。一人暮らしで野菜買うと、半分は腐るのよ。計算したら自炊した方が高くついた。


 でも第7にはコンビニもスーパーも無いから、自炊しなくちゃいけないんだろうな。

 でも焼く煮る程度しかしないよ。揚げるのは後片付け無理だから、絶対しない。


 運営のコックのジョージさんが、独り立ちできた後もレトルトとかプリンとか入れてくれないかなー。


 お腹空いたといっても、そんなに味の濃いものは食べられる気はしないので、レトルトの帆立雑炊を選択。


 ジョージさん、ナイスセレクトです。パッケージがスーパーには無い高級感がある。デパートのご当地コーナーか高級スーパーに置いてあるお高いヤツだな。


 丼に入れてラップをかけて電子レンジでチンする。すごいーホタテほぐしたのだけじゃなく、小さいけどホタテの身まで載っている。


 はふっと息を吐きながら、雑炊を口に運ぶ。うまいーたまらんジョージ、いい仕事してくれる。ダシがすっごく出ていて間違いなくお高いやつですよ。



 そういえばと気が付いた。超猫舌だった筈なのに、そのまま食せた。


 新しい体めっちゃ便利、美人なのに便利。

 猫舌のせいで大分人生損している気がしてたけど、実際損してたわー。熱いまま口に運ぶ雑炊がこんなに美味しいとは!


 あ、0.01の目も推定5.0に生まれ変わったらしい。コンタクト付けずに済むだけでも天晴だけど、5.0の視力はどんな世界だろう。

 部屋の中はよく見える気がするけれど、早く外に出て色々眺めてみたい。


 森の葉っぱはどんなに見えるんだろう。遠くの鳥は? 夜空の星は?


 花粉症も無い体だよね、きっと。やったー!



 丼とスプーン洗うのは明日でいいね。洗面所で歯磨いて顔だけ洗って、お風呂やシャワーも明日でいいや。

 今日はもう余裕ないです。


 また水だけ持ってそのままベッドに戻る。


 お腹いっぱいになってまた眠くなったのか、呼吸法を気にする間もなく、落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。