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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬
第一部

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85*ジェマを脱出させる方法

 ジェマを荷物の引き取りに向かわせ、私は冒険者ギルドに行く。


 昼過ぎのギルドは閑散としていた。いつも人が沢山いるのに慣れていたが、この時間は結構暇そうだ。

 とは云っても勤務時間6時〜18時+残業のブラックな環境だ。私には絶対勤まらない。朝と夜が忙しい分、昼休みが少し長いのかな。

 10時~16時の屋台運営でもきついなんて言ってごめんなさい。


「昼に来るなんて珍しいわね。カノンちゃんピアス売り出したんでしょう? 今見せてくれたりしない?」

 受付の人が声を掛けてきた。


「うーん、実は今日屋台さぼってるんです、それなのにここで屋台出していることがバレたらお客さんに怒られちゃう。今度夜で良かったら来ますよ」


 出張屋台も、ジェマがいればいいだろう。

 え? ブラック? いや、8時間労働位じゃブラックじゃないよね?


「残念。今度昼に来て欲しい」

「昼は、市場も忙しいんでダメですよ」

「そうだよねー上手くいかないわー」


 イレーネさんの席で足を止める。

「今ってギルド長はいます?」


「いると思うけど、魔熊持ってきたの?」

 めちゃくちゃ眠い目をしたイレーネさんが顔を上げる。


「魔熊の納品は明日です。ジェマの件で」

「解った。ちょっと聞いてくる」


 眠気はどこに行ったやら、勢いよく立ち上がって駆けて行った。そして1分もしないうちに戻ってきた。


「カノンー大丈夫だってー!」

 はやっ。ジェマのことになるとイレーネさんも保護者な感じだ。お姉ちゃんかな。


 イレーネさんも話を聞きたいらしく、当たり前の様にギルド長室に入ってくる。



「こんにちは。お忙しいところ済みません」


「え? カノンがそんな丁寧な言葉使うなんて! ジェマを連れて行ってあげることにしたの?」

 ギルド長に声を掛けたのに、イレーネさんに突っ込まれた。


「失礼な。私だってしっかりするときはするの。連れて行ってあげると云うか、同じ方向だから一緒に行くことにした」


「本当? 良かったー。いつ行くの?」

「市場更新しちゃったから、来月の初め位かな。まずはウベールに行って少し遊ぼうと思ってるけど」

「遊びに行くんだ、いいなぁ。私も一緒に行きたい」


「来月は忙しくなりますから、休まれると業務が回らなくなります」

 ギルド長が慌ててイレーネさんを止めにかかる。

 イレーネさんは口を尖らせてブーブー言う。


「ジェマの今の部屋が隙間風だらけで治安良くないって聞いたから、家に来て貰おうと思って、今荷物取りに行かせてるの。それで、退去の手続きをお願い出来ます?」


「そうですか。大家に連絡しておきます」


「何かお金取られたら私が払うので、請求して下さい。退去前の掃除とか要らないですよね?」


「私の方で全部やっておきます。あんなボロ家、掃除なんて必要ないでしょう」


「まあ私が行って、全部風魔法で吹き飛ばしてもいいんですけど」


「ちょっとギルド長もカノンも、悪い目やめてよ。カノンの家ってテントじゃなかったの? 大丈夫なの? そんなところで」


「いや、今改装してるから、大分居心地がよくなってるよ。それに旅に出たらテント泊でしょう?」


「まあ、確かに慣れないとね。カノンと一緒なら魔熊に襲われても平気だし安心だわ」

 テントに泊まる気は全くないけどね。



「ジェマ君もウベールに行くんですか? ジェマ君はまだ未成年なので、町を出るには領主の承認が必要ですよ」


「ええっそうなの? 申請書とか出せばいいのかな。ウベールには寄るだけで、最終的にはエンジーナに行きたいの」


「州を跨ぐ移動は、余程の事情が無いとまず認められないでしょう。特に未成年は難しいです」


「何それ? 困る! 何とか町を出ることは出来ないの?」


 えー?

 ここ数日悩んでたのは一体何だったの?


 もうジェマだって行く気持ちになってるよ。これで町を出られないなんて言えない。


「冒険者ギルドで隣の州に行く仕事を受けた場合でも、定められた期間に必ず戻らないとなりません。戻らなかった場合は、黙って町を出た場合と同様に手配犯扱いになります。それに未成年にそういった依頼を出すことはありません」


「私がジェマに指名依頼を出したら? 何かでっちあげて、絶対にジェマじゃなきゃならないことにして、依頼することは出来ない?」


「求人の段階で断りますね。それでもと言われたら本部に伺いを立てるので、そこで領主に話が伝わってしまいます」

 融通利かないなぁ。


「ジェマの両親がいないのに、町にいないとならないの? エンジーナのおばさんを頼るのは当然の流れだと思うけど、その場合も町を出ることが許されないの?」


「向こうから迎えに来て養子縁組を行えば、州外に出ることが許されるかもしれません」


「私は州外に出てもいいんだよね?」

「カノンさんは外国人で商人なのでそれは問題ないです」


「ふーん、私がジェマを養子にするのは?」

「カノン?! 15歳が12歳を養子にするの?」


「カノンさんは外国人なので、ローマ帝国の戸籍が無いから養子縁組をすることは出来ません」

「だったらホッカイドーで縁組してやるわよ」


 運営にそれっぽい書類を作って貰えばいい? だけどジェマまで外国人になってしまう。結婚とか出来ないじゃん。

 私の結婚は? 私も結婚できないの? 予定は全く無いから今はいいけど。


「ねえ、商人は州外にも出られるわよね。外国人とか関係なく。ジェマが商人になることは出来ないのかしら」

 イレーネさんの言葉に、ギルド長が考え込む。


「確か未成年は商人になれないんじゃなかったかな」


「ちょっと商業ギルドでボーナさんに聞いてきます。ジェマが来たら、用事があって出掛けるからここで待ってるように伝えてください。商業ギルドダメだったら、魔法ギルドにも聞いてみる。薬師でも職人でも何でもいいから探してみるわ」

「私も考えてみます」


 ここまで来てジェマが町から出られないなんて可哀想すぎる。


 つーか、最初に気付けよ。

 イレーネさんが悪いな、ジェマに相談されたときに気付けよ。

 まあ、私も気付いてなかったので同罪だ。



 でも全部無理でも何とかなる。

 町の門を出入りするときにジェマをBOXに仕舞えば記録が残らない。


 アリッチェにいるかの確認なんて、全町民を集めて数を数えたりしないだろう。いないと解った人だけを探すだけだ。


 定期的にジェマが帰還魔法でアリッチェに戻って、ギルドで依頼を受ければ在籍証明は出来る。


 数年の辛抱だ。成人したら商業ギルドで商人登録をすれば、大手を振って町を出られる。


 でもギルド長とイレーネさんは気付く可能性がある。真面目なギルド長が、魔熊で買収に応じてくれるかが肝かもしれない。


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