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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


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79*借地交渉とちょっと遠出

「おはようございますー」

 倉庫の管理室に顔を出すと、前に会ったおじさんがいた。


「あっちのボロボロの倉庫を借りているカノンですけど、覚えてます?」

「あーこないだ何か盗まれたみたいだな。あんな穴開いてちゃ仕方ないな」


「でも犯人捕まえて取り返しました」

「本当か? すげーな」

「やりました!」


「茶飲んでくか?」

「わー、ありがとうございます。ちょっと質問があったんですが」


 とっても色の薄いお茶を淹れてくれた。まあ、この時代お茶があるってだけ凄いことだ。


 私もサービスして、お煎餅を出す。


「お、なんだこれ?」

「米を潰して焼いたお菓子です。サクサクして美味しいですよ」

「ほう……美味いな! 米なんて煮て食うしかなかったけど、こういう食い方もあるんだな」


 薄いお茶もハーブティーみたいで、色の割に意外と味があった。結構好きな味だ。


「んで、質問って? まだ2ヶ月位期間あったよな」


「前に、更地にして返して欲しいって言ってましたけど、あれって本気ですか? あの建物撤去しちゃってもいいですか?」


「何? やってくれんのか? 撤去費用結構かかるんだよ、金は出せないぞ」

「撤去した瓦礫を貰えればいいです」

「あんなの使えないだろう?」

「木は腐ってボロボロですけどね。石の方はまだ使えそうですよ。それで、あの場所に家を建てて住んでもいいですか?」


「はあ? 建てられるもんなら建てても構わないが。うーん、3ヶ月10万はボロボロの倉庫で使い道なかったからだからなー。更地になるなら、新しく倉庫建てたいけどな」


「えー、更地にするの私ですよ?」

「まあ、そうなんだけど。俺の一存では決められねえや。後で上に文句言われても困るしな。聞いてみるからそれからな」


「今の土地全部は要らないんです。1/3位借りて、残り2/3に倉庫建てて貰ってもいいですよ。そのサイズで3か月6万ならどうです? 元の1/3なら3ヶ月で3.3万ですよ」


「おー解った。それで話してきちゃるから、待ってろや。倉庫の方も建てて貰うことは出来んのか?」


「そんな大きいのは作ったこと無いので、魔法じゃ無理です」

「そっか、残念だな」


「この位のサイズがあれば別な場所の土地でもいいですよ。でもあんまり遠い所とか治安の悪いところは嫌です」


「お前この辺が治安いいと思ってるのか?」

「だっておじさんもいるし、警備兵事務所も近いし、安心じゃないですか」


「盗みに入られただろう」

「あ、そうだった」


「この辺は人が少ないんだから気を付けろよ。じゃ、聞いとくからまた顔出せ」

「はーい、じゃあ行ってきます」

「はいよー」


 おじさん、口は悪いけどいい人だ。長く住んでたら茶飲み友達になれそうだね。

 ここの土地がダメだったら、商業ギルドで聞いてみるかなー。



 北口の門番さんに「今日は泊まりなので、明日戻る」と伝える。

 帰って来るかも知れないけど、毎回心配されてるからなぁ。この門番さんもいい人だ。


 いつもの海岸へ急ぐ。おじさんとまったりお茶していたので、梶山船長が待っているかもしれない。


 今日はまずウベールに行って観光して、その後ちょっと休んでから夜間の運転練習だ。


 ジェマを連れて旅に出ると決めた以上、ジェマを危険に晒す訳にはいかない。ボートの運転も頑張らなくちゃ。

 私は丈夫らしいけど、ジェマは普通の体だもんね。


 ボートは先週はお休みしたので、先々週ぶりだ。

 準備してタブレットを見ると、梶山船長はスタンバイ完了していた。


「おはようございます。よろしくお願いします」

 出発準備も慣れたものだ。なんて思っていると、工程を飛ばしてしまい、怒られる。

 すぐ調子に乗るのが悪い癖だ。


 この間の雨は辛かったが、今日はいい天気でボート日和だ。波も穏やか。

 北へ向かってボートを走らせる。以前通った外国からの商人が多く来る港を通り過ぎ、スピードを上げた。


 未だかつてない最高速度だ。このスピードを維持すれば、ジェマの行きたいエンジーナまで12時間位で着くらしい。

 いや、無理だって。12時間これを続けてはいられない。ゆっくりのんびり行こうよ。


 ウベールまでは馬車で7時間と云っていたので、ボートで1時間も走ると左前方に街らしいものが見えてきた。

 このまま港に入る訳にはいかないので、近くの海岸で停めたい。スピードを落としてゆっくり走る。

 梶山船長とユイが上空から確認して、良い海岸を見付けてくれた。周囲に人の反応は無いので、ここに停まることとする。


 この後街に行って観光した後、戻ってお昼寝して、夜間運転訓練の予定だ。

 この場所に小屋を出してプロジェクションマッピングもかけておく。ボートはBOXに仕舞った。


 梶山船長とは一旦お別れ。

 船長は一応、私の雇っている魂さんの一人なので、通常業務のBOX整理に戻って貰う。漁業関係の物資整理を担当しているようだ。


 町娘スタイルに着替える。

 ここからウベールの街まで歩くのは遠いので、車を出して索敵しながら近くまでゆっくり進む。


 気にしているのは魔獣より人だ。

 まだ車に群がられた経験は無いので、それが怖い。ゴーレム好き男子は本当にいるのかな。


 坂の上に街が見えた。

 おお、アリッチェとは比べ物にならない位の大きさだ。

 これは物凄く大きくないか。ここから見える街の範囲だけでもアリッチェの5倍はありそう。

 来月からここに住むつもりでいたが、道を覚えるだけで1ヶ月かかりそうだな。


 人や馬車の姿が見えてきたので、早目に車を降りる。


 上り坂だから本当は車で行きたいんだけどな。仕方ない、歩くか。

 城塞都市だから丘の上に街があるんだよね。

 前の体と比べると段違いに体力はあるんだけど、歩きたくない気持ちは変わらないものだ。


 時刻はまだ9時だが、門の前に人がずらーっと並んでいて、街に入るまで時間がかかりそうだ。

 馬車の列と人の列に分かれているので、人の列に並ぶ。50人位いそうでしんどい。


 女が一人で並んでいるので、ガラの悪そうなおっちゃんたちが声を掛けてくる。


「姉ちゃんどっから来たの?」「ウベールに住んでるの?」「どこで働いてるの?」「彼氏はいるの?」

 面倒くさいな。


 適当に相手をしていたら、正義感に燃えた若い男が、

「彼女が嫌がっているではないか!」と割り込んできた。


「うるせーガキは引っ込んでろ」「嫌がってねーよお前の方が嫌だってよ」「何だってこのヤロウ」「やるのか」「やってやろうじゃないか」「こいつナイフを抜いたぞ」「決闘なら1対1だ」「知らねーよこいつを押さえろ」


 何だか盛り上がっているなぁ。



 後ろの方から、列に並んだ男たちの声が聞こえた。

「今日は随分並んでるなー。商人の入口は馬車1台だけじゃないか。あっちも通らせて欲しいよ」


 あれ? あっちって馬車入口じゃなかったのかな?


 思い切って振り返って、後ろの人たちに聞いてみる。

「あのー、あっちは商人の入口なんですか? 徒歩でも商人ならあっちでいいの?」

 みんな頷いてくれた。


 なんだー、並ばなくても良かったんだ。商人になって良かった。

 後ろの人たちに「ありがとう」と言って、列を離れて商人入口に走った。


「かかってこいやーこらー」「どうなっても知らないぞ」


 盛り上がってるなー、ハンターかなー、みんな元気だねー。


 丁度最後の馬車が入って行ったところだったので、商人入口にすんなり入れた。

 こういうのが商人の特典ってボーナさんが言ってたね。高い年会費納めてるんだから、その分は融通して貰わないと。


 入口で証明書を出して、上着の襟を引っ張ってバッジを見せる。


 商業ギルドバッジじゃなくて、魔法使いバッジの大きさにまたぎょっとされる。

「上級魔法使い……」

 見るのそっちじゃないから。


「いや、商人の方です。お金払わなくていいんですよね?」

「どちらからいらしたんですか?」

 珍しい、門番なのに敬語だ。


「アリッチェです」

「確認しました。いつまで滞在予定ですか?」

「今日の夕方には帰ります」

「はい、ではお気をつけて下さい」


 何だか入国審査っぽいわ、ウベールは丁寧だ。アリッチェの門番はフレンドリーだもんな。


「うわー!」「やめろー!」「きゃー!」「だれかー!」


 街は随分騒がしいようだけど。


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