67*おすすめの街と魔道具
一週間の始まりだ。
昨日も結局休みじゃなかったし、月曜が辛いのは地球も第7も変わらないな。
今では気ままに10~16時の短いお仕事の筈なのに、何故こんなに仕事に行くのが辛いのか。
週休一日だからか? 休み一日増やそうかな。
でもそうしたらジェマの稼ぎが減るので申し訳ないな。
休みの日はジェマに、袋の小分けとか内職でもして貰おうかな。ちょっと考えよう。
今日はまず冒険者ギルドで魔獣の買取。
昨日50万の売上でいっぱしの商人ぶってしまったが、やはり魔熊一匹で50万は楽でいいな。まだまだ魔熊はBOXにいるので、早く捌いてしまいたい。
しかし、あんなに魔熊がいたエルゼダンテの森は大丈夫なんだろうか。恐ろしいところに住んでいたものである。
いつも通りジェマを連れて市場へ向かう。
昨日の村の話をしたら驚かれた。トマトに興味津々だったので、昼はトマトが入っているものにしよう。
私自身はトマト教の教祖になったが(なってない)、そんなにトマト大好きと云う程でもない。
でもイタリアと云えばトマトでしょ、ピザにトマトソースのパスタは外せないよね。
後から来る日本人だって、トマトがあった方がいいよね。
それに私のBOXには大量のトマトが入っているのだ。放出しないと勿体ないじゃん。
他の村にも行かないとならないけど、日曜はボート練習だから、週の中頃市場を休んでジェマを連れて村に行くのはどうだろう? そしたらジェマにも給料払えるし、手伝って貰える。
それいいじゃんと一瞬思ったけど、ダメだった。
ジェマを車に乗せるわけにはいかないので、歩いて行くしかない。
無理ー、いいアイディアだと思ったのに。やっぱりジェマに頼む内職を考えないとダメだな。
今日の市場も特筆すべき点なし。
ひたすら値切ろうとするおばちゃんを躱し、転売を目論む商人を往なす。
ジェマの接客術も向上した。
昼にはトマトを挟んだハンバーガーを用意した。
頬を膨らましてキラキラ目を輝かしながら食べるジェマが、小動物みたいで可愛い。
まだ一週間も経っていないので体に変化は無いが、ちょっと肌艶良くなってきた気がする。浄化魔法のせいだけかもしれないが。早く太らせて背も伸ばしたいものだ。
そういえば倉庫内のテントは倒されたままだった。
また建てるのかと項垂れる。もしものときのために、テント位慣れた方がいいのだが、二の舞になりそうだ。
早々に諦めて、魂さんにテントの設置を依頼した。
5分もしないうちに速攻やってくれたので、BOXの中から取り出すとちゃんとテントの形になっていた。
やったー。このままでもいいと思うが、風で倒れるのも嫌なので、ペグだけ打っておく。
また隣にBBQコンロを出し、テントの中も偽装工作する。
倉庫内に付いた先日の奴らの足跡を見ると苛々するので、それも風魔法で吹き飛ばしておいた。防犯カメラもまたセットして、偽装工作完了だ。出来たー。
もう二度とやらなくていいことを祈るよ。週一で誰か訪問しないでよね。
「カノンが言っていた希望に合う街を、検討したリスト作ったから後で見ておいて」
「希望の街?」
「農業改革が出来そうな街。話聞いてくれそうな領主がいるところ」
「ああはいはい、言ったね、ありがとう」
BOXから書類を取り出すと、厚さが5cm位あった。
「何この量。分厚い本じゃん。数枚かと思ったわ」
「色んな角度から街毎に点数つけてるからね。ほら、うちにはこういうの細かい人がいるから」
「あーはいはい」
タブレットの使い方だけでも300ページもあったし、分析部とかも非常に細かそうだ。
それでも一番先に頭に浮かんだのは、メガネ男子坂口さんだった。メガネクイッしてそうだな。
「カノンを守ってくれそうな偉い領主になると、やっぱり大きな街になるね」
「そうね。いくらいい人でも、小さい街だと上から潰されて終わりかー」
前の方だけパラパラ捲るが、街の数が500位ある。どんだけ調査したんだよ。イタリアだけじゃなくて、フランスやドイツとかもあるんだね。ローマ帝国だもんね。
各項目で点数を付けて、ランキング表が出来ていた。この上位が有力な街ってことね。
今いるアリッチェを探すが、上の方にはいないらしく見付からない。
「港町はランキング高くなってるよ。海が見えるカフェやりたいんでしょ」
「おおー、覚えててくれた?」
アリッチェは近くに海はあっても、街からは見えないから点数低いんだね。
「あれ、レインディナはこんなに低いの?」
港町なのに143位。
「貿易で潤っている街だからね。農業向きじゃないし、のんびりカフェする街じゃないよ。商人として成り上りたいならオススメするけど、駆け引きでドロドロどころか、本気でドンパチやってるから治安は悪い」
「まーじー」
そんなところにライラさんは住んでたのか。
ローマ語を教えてくれたライラさんはレインディナの商家に嫁いで、毎日楽しかったと言っていたが。
「商人やるなら外せない街だとは思うけど、カノン向きじゃないと思うよ」
「うん、私もそんな気がしていた」
アリッチェの屋台でしつこい商人をあしらう術が身についてきたと思っていたが、この程度じゃレインディナに着いた途端に売り飛ばされそうだな。もっと力を付けなければ。
ランキングの後ろに、各街の詳細が書かれているので、ガイドブックみたいで楽しそうだ。
「どうもありがとう。参考にするよ」
とは言ったものの、殆ど読めていない。
本を読むのは好きだから、各地の特産品や名所説明は面白い。でも領主の功績とか政治の背景とか領地の歴史とかになると、ペースダウンして頭真っ白になるんだよね。いい人かどうか位でいいよ。
依って遅々として進まず、今に至る。
今日も屋台の合間に読んでたけど、15ページ位しか進まなかったな。
屋台は割と落ち着いて来て、一時期より客も減って来た。
私的には丁度いいんだけど、ジェマが不満そうなので、そろそろ新商品でも導入しないとならないかもしれない。
魔法ギルドに向かう。
前回帰還魔法の資料借りて、一週間で返すと約束したのだが、まだ返してなかった。
分析部がさくっとコピーしてその日に持って行ったので次の日に返しても良かったんだけど、すぐに諦めた人みたいじゃない。ギリギリまで借りていようと思ったら一週間たってたわ。ごめんギルド長。
どうせ無くても読めないんだから要らないと思うけど。
受付にアルマさんがいたので、書類を渡してギルド長へ返却を依頼する。
「解読できました?」
「少しは読めたよ。重要そうなところは写したからじっくり読む」
「解ったら教えてください」
「うん。あの部屋ってまだギラギラ?」
「あれっきり怖くて開けてません」
思い出して二人で吹き出した。笑っちゃいけないけど、笑うしかない。
「そういえば魔道具ってどこで買えるの? ここでも売ってる?」
「アリッチェには魔道具屋は無いです。大きい町に行かないと無いですよ。一番近いのはウベールです」
あれ? リストの上の方にあったな。定住候補地だ。
「ウベールまではどの位で着くの?」
「乗合馬車で7時間位です」
「あ、意外と近いんだ」
「遠いですよ、7時間ですよ?」
車ならそんなにかからない。でも馬車がよく通っていると目撃されるから、港町ならボートでもいいかも。旅に出る前に一度行ってみようかな。
土曜か月曜市場を休めば泊りがけも可能だ。
「魔道具っていくら位するの?」
「高いですよ。一番安いライトの魔道具でも100万デナリくらい」
「はあ?!」
後ろの棚からライトの魔道具を持ってきて見せてくれた。ちゃんと鍵のかかるところに置かれていた。
とても大きな懐中電灯といった感じだ。
「持ってもいい?」
「壊さないでくださいよ」
持ち上げると、想像より重かった。これを持ったまま夜道歩くとか、重くてしんどいな。
持ち上げて下から見てたら、落としそうに見えたようで、早々にアルマさんに取り上げられた。
「ここに魔石が入ってるんです」
下の引き出しを開けると魔石が入っていた。魔狼位の魔石サイズだ。
「これで3時間持ちます」
引き出しを閉めると、ライトがついた。明るいところなのでよく解らないが、そんなに眩しくは感じない。地球の懐中電灯の方が眩しい。
「たった3時間? 魔石代かかるね」
「だから貴族やお金持ちしか使えません。勿体ないから残業のときは蝋燭です」
「だよねー。ありがとう、見せてくれて」
アルマさんはすぐに魔道具を仕舞いに行った。
思ったより魔道具の質が低いな。
うちの電化製品は変換器で魔石で動いてるけど、かなり持ってるよ。それも、スライムや魔鼠のクズ魔石を合成して固めている魔石だから、殆どお金はかかっていない。
それに100均の懐中電灯の方が明るいよ。あれを100万で売ったら相当儲かるな。
でもアイテムバッグみたいな便利な魔道具もあるから、ライトがしょぼかっただけかもしれない。
ウベールに行ったら魔道具屋を覗いてみよう。




