↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/89

53*市場で目を付けられる

 5時の鐘には起こされたが、10時スタートにしたので朝の時間に余裕が出来た。


 出来る人は『朝活』なんて思考になるのだろうが、出来ない私はベッドの上でゴロゴロする。

 タブレットで動画見て、ネット見て、BOXの中をちょこちょこ整理していたら、もう8時半だ。

 まずいまずいと起きて、身支度を整える。


 自分の商品を売るがために、毎日髪型を変えるのが時間がかかる。

 若い女性はロングを垂らすのが土地の風習なので、おだんごにしたりは出来ないが、編み込んでクリップで留めたりヘアアレンジをする。この時間が結構かかる。


 メイクの方は、イタリア女性の動画を見て練習したが、やっぱり自分でするとケバくなるので、必要最小限のままだ。


 北海道のどっかのカフェのコーヒーを銀色の魔法瓶に注いで、北海道のどっかのパン屋のサンドイッチを用意して、準備完了。

 どっかのカフェのコーヒーと、どっかのパン屋のサンドイッチはまだまだ量がある。


 ジョージの食堂のお勧めから美味しいコーヒーとサンドイッチを、日本円資金から購入することは出来るのだが、この辺りは貧乏性だ。

 新しい物を買うよりは、BOXの中にある物からまず消化してしまいたい。

 何年何十年かかるか解らないペースだが。


 おにぎりやお弁当も食べたいけど、誰に見られるか解らないしね。このあたり米は普及しているが、おにぎりは見たことが無いので奇異な目で見られるだろう。黒い海苔が外国人受けしないって聞くよね。

 バイトにランチを支給するときには、サンドイッチの中身も考えないとなー。



 10時少し前に市場に着くと、昨日より長い列が出来ていた。

 今日も忙しそうだ。気合入れていきましょう。




 今日は初めて万引きにあった。今まで無かったのが不思議な位だ。


 おばさんが誤魔化して一つ分払わずに屋台を去ろうとしたら、屋台の境界線で見えない壁に阻まれ引っかかって出られなくなった。

 保護膜を内側からも張っているので、不届き者は出られない仕組みなのだ。店を出ようとしたら、ゲートでブザーが鳴るあんな感じですね。


「まだ会計がお済みじゃないものがあるみたいです」

「あらー、一個くっついてたみたい。ごめんなさいね。これ要らないわ」


「違います。そっちの高い方のヘアクリップが未精算です」

「そうだったかしら」


 私を睨みつけて、商品を放り投げて去ろうとする。お行儀が悪いですねー。

 上から風を噴射すると、おばさんの髪の毛がぶわっと膨れ、うわーっと喚いて走って行った。


 私が自分の髪を乾かすために、改良に改良を重ねたドライヤー魔法だ。

 腰近くまである髪なので、普通のドライヤーで乾かすと30分以上かかってしまう。

 毎日試行錯誤して辿り着いたドライヤー魔法である。堪能して頂けたようで良かった良かった。




 午後には外国人風の男がやって来て、「どこから仕入れた?」と睨んできた。


「いいえ、私の故郷から持ってきただけです」

「どこの国だ?」

 優しく聞いてきたら答えてあげてもいいけど、こんな不躾な態度じゃ話をする気にならない。


「買う気がないなら帰ってください」


「いや買ってやるよ。あるだけ俺が買ってやるから寄越しな。お前は商売を始めたばかりだろう。こんなところで安値で売ってどうする? 俺が高く売る方法を教えてやるから、今持っている分を全部まとめて5掛で買ってやる」


「それじゃ私が損するだけじゃないですか」


「その代わり、高く売る方法を教えてやると言ってるんだ!」


 何を仰っているのか解りませーん。


「高く売る気も、まとめて売る気もありませんよ。あまり数が無いので、沢山の人にお手頃価格で使って頂きたいだけなんです。お客さんじゃないなら並んでいる方の迷惑ですから、お引き取りください」


「だから俺が買ってやると言ってるんだ!」


 後ろに並んでいるお姉さんたちの顔も苛立ってきている。

 邪魔だから水弾とか撃ちたいんだけど、さすがに屠るのはやりすぎなので、控える。


「並んでいるお客さんもいるので、終わってから話しましょう。16時に店閉めて商業ギルドに行く予定なので、ギルドでいいですか?」


「16時か、解った。待っててやるよ。逃げるなよ。逃げたら明日も来るぞ」

 男は睨みつけてからようやく帰ってくれた。


 常連さんになったお姉さんが、心配してくれる。

「大丈夫なの? カノンちゃん。柄の悪い商人が多いのよ」

「大丈夫ですよー私結構強いので」


 上級魔法使いと冒険者のバッジを指すと、みんな安堵した顔をしてくれた。バッジの大きさは伊達じゃない。


「ぶっ飛ばしてやりなさい」「もし苛められたら私が敵を討つよ」「みんなでやってやろー」

 皆さん勇ましくて頼もしい限りだ。地元のお姉さんたちに受け入れて貰えたのが嬉しい。




 夕方に店を畳むと、早速商業ギルドに赴いた。


 水弾撃つなら森がいいけど、そうじゃないなら人のいるところの方がいいだろう。

 ボーナさんが気付いてくれるかもしれない。


 先程の男は入り口近くで腕組みして待ち伏せていた。

 外国人風の2人の男が一緒だ。3人とも商業ギルドのバッジを付けているので、ギルド員らしい。


「ちょっと待っててくださーい」

 その横を駆け抜けてトイレに入る。さすがにそこまで咎めることは無いよね。


 大声を出して走ったから人目を引いたらしい。

 トイレに入るときに、部屋の奥の方で仕事をしていたボーナさんと目が合った。

 よし、私がいることを認識して貰えた。


 商業ギルドは、商人同士の商談にも用いられるため、テーブルがいくつも並んでいつも賑やかだ。


 トイレの中で準備をしてから、通路に近い席に座った。

 3人の男たちもやって来て、同じテーブルに着く。


「逃げなかったようだな、いい心掛けだ。こっちは一緒に仕事をしている奴らだ」


「先程もお話しましたが、お売りするほど数は無いんですよ」


「だったら屋台に出している分を全部売れよ。そしたらお前も、明日から屋台を出す必要がなくなる。楽が出来て、一気に金が入って来る。言うことなしだろう。どうせ屋台に出したって売れ残るものもあるだろう。それをまとめて買ってやろうって言うんだ、めちゃくちゃいい話だろう」


 他の2人はずっとニヤニヤ笑っているだけだ。


「どうして売れない物まで買ってくれるんですか?」


「商売初めたばかりのガキと違って、こっちにはコネクションがあるんだよ。大きな町の大きな商家も知ってる。お得意様には貴族もいるから、俺ならあっと云う間に捌けるさ」


「すぐ売れるなら5掛で買うって酷くないですか?」


「馬鹿野郎、あっと云う間に捌けるが、他の町に行くにも金かかるだろう。馬の借り賃や宿代飯代でにどんだけかかると思ってる。その経費だよ!」


「まあ確かに解ります。この町で売れない物も、私の代わりに別な町に行って売ってくれるってことですね。それも前金で全部買ってくれるという」


「そうだよ。解ったかい。こんなに優しい商人は俺ぐらいなもんだ」


「はい! 解りました。買取は店の半額の金額で、現金で貰えますか?」


 騙されているんだけど、意外と商人の話も理路整然としているね。


「おうっ任せとけ」



 話の最初からずっと男たちの後ろに立っていたボーナさんが、男の後ろから声を掛けた。

「聞きましたよ」


 いきなりの声に、男たちがぎょっとして後ろを見る。

「うわっ何だよ!」


 ボーナさんはテーブルを回って来て、私の隣に座った。

「失礼するわね。私もこの子の商品が気になるから、一緒に見ててもいい?」


「げっ……ギルド長! 何でここに」

「ずっとこの部屋にいたわよ。失礼ね。見てるだけだから一緒にいてもいいでしょう?」


 男たちは全力で拒否したい顔をしているが、断ることは出来ない。


 商業ギルドでなんて話すから悪いのだ。


 通常、商人同士の話し合いには、暴力行為や明らかな不正が見て取れる場合を除いて、ギルドは不干渉だ。こんな取引の冒頭に職員が顔を見せることは無い。


 若い女性一人に、30~40代の男たち三人と云う怪しい状況だったとしても、余程のことが無い限りは立ち入らない。

 多少騙されたとしても、それは若い商人にとって良い勉強になるからだ。


 それなのに、職員どころかギルド長が干渉してきた。

 何なんだ、この小娘は。

 そう思ったらしく、男たちは硬直したままだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。