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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


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51*働きたくないのに

 朝一番に冒険者ギルドに寄って、いつもの買取と売り子の求人を出すつもりでいたが、仕事を探す人で混雑して受付で相談どころではなさそうだった。

 今求人したところで、今日から雇える訳ではないので、諦めて夕方にまた来ることにする。


 折角受付が忙しそうだからと気を回して止めたのに、イレーネさんにまたも見付かった。

 自身の前に長い列が出来ていると云うのに、本人はお構いなしだ。


 猫を被っていれば美人なので、イレーネさん目当ての冒険者が多いようで、イレーネさんに直接文句を言う男はいない。

 でも反対に私が恨みを買っていると思うので、引き留めないでくれないかな。


「いつ仕事探しに来る気よ? 討伐の仕事溜まってるんだけど」


 はい! と手を上げて宣言した。

「夕方また来ます!」


「本当に?」

「絶対に来ます! 本当はすぐに話したいことがあったんですが、こんなに並んでるからご迷惑と思い、夕方にまた来ます」


「いいわよ、今すぐでも。みんな優しいから割り込みしても許してくれるわよ」

「いいえ、割り込みはいけないことです。夕方にまた参ります!」


 そして疾風の如く駆け出す(イメージ的には)。


 実際この体になって、魔法の腕を磨いたおかげで、測ったことはないが100mも10秒くらいで走れている気がする。今ならオリンピック選手にもなれるだろう。

 魔法禁止ってルールあったっけ?


 イレーネさんは私が依頼を受けると勘違いしているようだけど、依頼を出す側だからね。


 討伐の仕事とか恐ろしいこと言ってたけど、か弱い女の子には無理だよ。筋肉ムキムキのハンターさんに依頼してください。


 そういえば魔法ギルドも行かないといけないんだった。

 今日は無理だから明日だなー。行けたら行くよ。


 あっちも仕事と言ってたけど、仕事嫌だなー。働きたくないよー。

 このままボートに乗って遠くに行こうかなー。


 なんてこと考える割には、結局のところ本質は仕事人間なんだよね。

 その証拠にまた市場まで来てしまった。



 まだ朝の8時だと云うのに、店の場所に何人か既に並んでいた。昨日と同じ10時に来ていたら、どんな行列になっていたことやら。

 是が非でも手に入れたい人気商品なんて置いてないのに、一体ボーナさんはどんな宣伝をしてくれたのやら。


「おはようございます。開店準備をするので少々お待ちくださいね」

 そう言っても、屋台を出して裏手に回り小銭を用意する程度の準備だ。


 そして昨日依頼したPOPは既に屋台に設置済だ。


 癒し系のほんわかした女の子のイラストで、私の中のイメージを超えていた。

 お待ちのお客さんのために、商品説明のチラシまで作ってある。

 これは印刷だが、手描きに見えるように一枚ずつちょっとずつ違う。読んだら後ろに回して貰って、後で必ず回収する。

 みんなが手にすることで、紙もヨレヨレになって違和感が無くなっていくだろう。


 この国の平民は、文字を書くのは苦手でも、読む方は大体問題ない。

 イラストがメインなので、読めない人でも解りやすいだろう。


 ユイに聞いたところ、魂さんの中にプロのイラストレーターはいなかったものの、ネットで有名な絵師さんや、日頃から店でPOP描いている人や、雑貨屋を経営している人がいたそうだ。

 チームを組んでPOPやチラシの他に商品の配置まで考えてくれて、朝起きたら屋台が様変わりをしていた。


 ただ申し訳ない。きっと日本みたいにもっと目立つ可愛い店を作りたかったと思うけど、文明レベルを考えて質は大分抑えてくれている。

 私自身ももっと可愛い商品を本当は並べたいけど、店ごと拉致されても困るからねー。

 それを汲んで堪えて頂いた魂さんたち、感謝です。


 それでも周囲の店と比べると、明らかにキラキラしている。

 屋台を見ただけで、並んでいたお客さんの顔が笑顔に変わった。


 必要最低限の物しか持たず、髪なんか邪魔にならなきゃいいと今まで思っていた筈なのに、第7の人たちもオシャレを知ってしまった。

 沢山は買えないだろうが、是非デートの日にでも使ってくれると嬉しいな。


 POPやチラシのおかげで商品の説明時間が減り、一人当たりの所要時間が短縮された。途切れることなく、客単価1,000デナリ位でコンスタントに売れていく。


 昼前に一度、トイレ休憩と商品の補充を行い、その後また14時過ぎまで売り続けた。ランチは食べている余裕は無い。


 もうバテバテだ。声も枯れた。

 やっぱり一人で捌くには限界がある。


 同じ商品を5個や10個買おうとする人が何人かいた。

 出来るだけ色んな人に使って欲しいので、お一人様一点限りですと言って諦めて貰う。

 家族や友達に配りたいと食い下がられたが、謝って諦めて頂く。


 行列が出来るほどの屋台になったので、転売を考える人たちが増えてきたのだろう。

 友達に渡したい人は本当かもしれないが、如何にも商売人風情の者もいた。こういう輩が徐々に増えていくだろうから、気を付けなければ。


 森で索敵をし続けていたおかげで、意識せずに索敵が常時発動している。

 魔獣や魔石だけではなく、人間の悪感情にも何となく反応する。

 今までは、治安の悪い地域を歩いたときに時々ピリピリする視線を感じることはあったが、他はいい人ばかりで特に困ったことは起きなかった。


 強くなったのでそう簡単にやられはしないと思うが、対人は魔熊の様に一撃で屠ることは出来ないので、対応を考える必要がありそうだ。

 眉間に土弾撃ち込む訳にはいかんからね。


 16時を過ぎたので、客の切れ目を狙ってさっと屋台を仕舞った。

 ついでに、『営業時間10~16時』の立札を店の場所に置いておく。今日は早目に来てしまったが、日によって営業時間が異なっていると不便だろう。


 私もあんまり働きたくないので、この位が良い。

 仕事で大きなマルシェも経験したけど、たまにだから大変ながらも楽しく感じたんだよね。あれが毎日続くとしんどいのがよく解ったよ。



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