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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


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51/88

50*お客さん多すぎだよ

 翌日10時過ぎに市場に行くと、店の辺りに随分人だかりが出来ていた。


「あ、すみませーん、通ります」

 人ごみをくぐって進む。何かあったのかな。


「ああ、やっと来た!」

 食器屋のクラリッサさんが呼ぶ。


「みんな待ってたのよー。早く店出して」

 えー、人だかりの始まりは私の店だった。慌てて屋台を出して、裏手に回る。


「すみません、お待たせしました。前の方からどうぞ」

「遅いじゃないの。6時から待ってるんだから」

「えー4時間も待ってくれたんですか?」

 何で??


「いや、一度帰ったわよ。いつも10時位からって聞いたから9時過ぎにまた来たのよ」

「申し訳ありません。でもどうしてうちの店を?」


「ドンナに聞いたのよ。すっごく便利な物があるって。伸びる紐ってどれ?」

「ヘアゴムですね。これを布で包んだのがシュシュです」


「青いのだったんだけど」

「ヘアゴムは黒と茶しか無いので、多分シュシュの方かと。でもどちらも伸びる紐ですよ。シュシュの方が布で包んである分、華やかでいいですよね」


 隣の客からも声が掛かる。


「お姉さん。パチンと留めるのってどれ?」

「ヘアクリップでしょうか? こんな感じでは?」

「いや、こんなゴテゴテしてなかったわよ」

「だったら小さい方かも。小さいヘアクリップはシンプルです。大きいのに比べて挟む量は少ないんですけど」


「ちょっとちょっとお姉さん、これいくら」

「あ、はーい。これは全部500デナリです」

「これちょーだい」

「ありがとうございます」


「これもちょーだい」

「ありがとうございます」


「飴はいくらから貰えるの?」

「3,000デナリ以上お買い上げの方に、おまけしています」

「じゃ、もう1個買うわ」

「飴って何の話?」


「ねー、まだー? 私の方が先に来てたんだけど」

「私の方が先だよ。ちょっとそこの店覗いてただけだから」

「お姉さん、これの色違いはないの?」

「ちょっと付けてみていい?」


 わー、こっちもカオスきたー。やっぱりゴーレムの売り子欲しいー。


 何でこんなことになってんの? 全員ドンナさん発信? ドンナさんって誰のこと?

 あー先週、広告塔になりそうなお喋りなおばちゃんいたな、あの人かもしれん。


 やっぱりクチコミって凄いわ。まだ6日間しか店やってないのに、どうした一体。

 商品が少なくなっていたので、慌てて補充する。


「いらっしゃいませー」

 その後もお客さんが止まることなく、いつもなら16時に帰るけど、最後のお客さんたちに粘られたので17時になった。


 どれだけ売れたのか全然解らない。帰ってから数えよう。

 新しい客が来ないうちに、慌てて店を仕舞う。


 隣のクラリッサさんや周囲の店の人たちに迷惑をお掛けしたので、べっこう飴を配って回った。



 帰りに商業ギルドの前で丁度ボーナさんとすれ違った。


「あっ、びっくり! ボーナさん、先週はありがとうございました。いっぱい買って頂いて申し訳ないです」

「いいのよ、あんなの。で、お客さん来てる?」

「それが今日大変で。お客さん全然止まらなくって」


「あら、宣伝しすぎたかしら?」

「ええー、犯人ボーナさんですか?」

「宣伝したのに犯人ってひどいんじゃない?」


「ありがとうございました」

「はーい、頑張ってねー」


 ボーナさんかよー。


 先週は暇持て余していたけど、忙しすぎるのも大変だな。

 もし明日も続くようなら何か考えないとな。

 明日はちょっと早めに来るか。



「わー疲れたー」

 小屋に戻るなり、ベッドに倒れ込んだ。


 接客と会計を一人でするのはきつい。今日は一体何人接客しただろうか。


「ユイ、魂さんを売り子で雇ったりできないのー?」

「地球の魂さんたちだから、第7に入れることは出来ないって言ってるじゃん」

「私は来てるじゃん」


「カノンは出向だから例外です。カノン並みに条件満たす魂さんが現れれば、派遣も可能だろうけど、そのときには転生体の用意や魔素に慣れることから始めなきゃならないから、カノンと同じ位時間かかるよ。果たしてエルゼダンテの森から抜け出せるかな」


「ダメじゃーん。あと次回のスタートはエルゼダンテの森やめてあげて」


 ベッドに突っ伏しながら、バタ足をする。


 日本と違ってこっちは売り子も椅子に座っていることが多い。

 私も椅子を持参して座っているんだけど、さすがにあんなに押し寄せて来られると座る暇が無かった。

 放っておくと明日むくみそうなので、治癒っと。


「売り子くらい第7で雇えばいいじゃん」

「はい?」

「冒険者ギルドで売り子の求人出せばいいんじゃないの?」


「そうだった! お金は稼いでいるから雇えるんだ。売り子ならそんなにスキル要らないしね。ユイありがとうー。早速明日行ってみるわ」


「いいえどういたしまして」


 商品の説明に時間をとられるのがきつい。

 何度も同じことを言い続けなくちゃならないので、いっそ録音してやろうかと思ったほどだ。


 商品の説明動画を流すのはやらかしすぎなので、ここはPOPではなかろうか。


 ヘアクリップやヘアピンをつけた女の子のイラストを商品の横に展示すると、解りやすいんじゃないかな。


「魂さんに前世イラストレーターとかいないかな? 商品のPOP作って欲しいんだけど」

「そうねー千人もいれば絵の上手い人もいるよ」

「じゃあイメージを書いて後で送るね」


 とは言ったものの、工作スキルが無くて土魔法に苦労していることを忘れていた。

 イメージを絵にすることが出来ずに。接客よりも今日一番苦労することになった。

 そもそも絵心があれば自分でPOP描けたわ。


 結局屋台の写真を撮って、実際の商品を添付して、後はお任せで依頼した。私が考えるより、センスのある人が考えてくれた方が絶対に間違いない。


 但し、日本みたいなキラキラしたPOPが出来ると困るので、紙質や使用する色を指定し、印刷ではなく手描きをお願いする。


 ついでに、先日頼んだヘアピンなどのOPP袋封入を追加で1,000セットずつ発注した。さすがに多いが、数年は持つでしょう。

 新しい街に行ったときとかの販促グッズでも使えそうだしね。


 魂さんたちは100倍速なので、明朝には全て完成するそうだ。POP楽しみ。


 後は売上の集計や商品の補充で遅くなったので、魔法練習はまた今度。


 今日は勿論過去一番の売上だったよ。


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