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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


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44*市場デビュー!

 いやあ、昨日はどうなることかと思ったが、魔力マッサージのおかげで朝から元気だ。

 実は治癒魔法以上の効果があったりしないか、これ。


 食べ物の屋台なら朝一でオープンした方がいいだろうが、私のは雑貨だ。

 みんな朝から頑張って働いているのにわざわざ雑貨買いに来る女子はおるまい。

 見に来るのはランチ食べ終わった後か夕方だろうと思っている。

 だから朝一で速攻店を出す必要は無い。


 売り子兼モデルも務めないとならないので、今日はちょっとオシャレにする。

 ただストンと下ろしていた茶髪ロングも、自分の商品でアレンジする。

 服装もいつもより少し異国人っぽさを出すために柄を足してみる。


 服装や髪型はこれでいいとして、問題は顔だ。

 前世の平面顔メイクに慣れているので、ちょっと化粧しただけで物凄くけばけばしくなる。こっちに来てからずっと挑戦しているけれど、どうしても上手くいかない。


 仕方ないので今日も、素材の良さを生かして、薄くリップを塗る程度で済ませた。

 今度イタリア女性のメイク動画を見て勉強しよう。




 市場に行く前に、冒険者ギルドの買取所に寄る。

 今日は少し遅くしたので、入り口の混み具合が前回比80%だった。


 ちょっとオシャレにしているので、もみくちゃにされなくて良かった。市場の帰りでもいいのだが、それだと逆に買取所が混んで待たされる。朝のうちに済ますのが一番だね。


 おっちゃんに前回と同じ30匹渡して、前回分の魔石を貰う。


 受付のイレーネさんが丁度一人終わったタイミングだったのに、帰るときに目が合ってしまった。

 愛想笑いして素通りしようとすると、


「ちょっとカノンー!」


「大声出さないでもらえます?」


 完全に呼び捨てになったな。最初逢ったときはキレイなお姉さんぶっていたクセに。


「何で依頼受けに来ないのよ」

「いや、次の人待ってるし、ねえ?」


 振り返って次の番のおじさんに微笑んで声を掛ける。


「いいのよ、ちょっと位待ったって、ねえ?」


 イレーネさんもおじさんに微笑んで声を掛ける。

 あ、おじさん。イレーネさんに話し掛けられてデレデレになったぞ。イレーネさん狙いか。でも今の笑みは勘違いですからね。


「ちゃんと買取所には納品したよ。今日から市場で屋台出すの。だから依頼は受けません」

「え、商人になるって本気だったの? 何よ、美味しいもの?」

「食べ物じゃない。雑貨だよ」


「なーんだ。魔熊の煮込みでも作るのかと思ったわよ。あれ、カノン、なんかいつもより可愛い格好してるじゃない」

「でしょ。だって売り子兼モデルだからね」

「モデル?」

 ああ、モデルは通じないか。


「これ、うちの商品なの」

 髪についているシュシュを指さす。


「えー可愛いじゃーん。私にも頂戴よ」

「いや、売り物だって言ってんじゃん。つーか、仕事してよ。列伸びてるよ。私が恨まれるから行くよー」

「勝手に行くなー」


 仕事しろよ。

 お待ち頂いていた皆さんに営業スマイルをしてから、冒険者ギルドを出た。

 ただでさえ一部の若者ハンターから怖がられたというのに、余計に悪評が広がると問題だ。




 市場に着いたら8時だ。

 まーこんなもんじゃなかろうか。まだ雑貨の出陣には十分早いと思うけど。

 入り口の安売店や飲食店の賑わいを見ながら、奥に向かって歩く。


 先日下見した通り、この辺りは客もまばらで、売っているものもしっかりした良品が多い。その分値が張るので、1個売れれば十分と思っている店も多い。

 うちの商品はそんなに高くないが、女性客狙いでこの場所を選んだ。


 自分の場所に進んでいくと、周囲の店主から客だと思われて声が掛かる。とりあえず愛想笑いで素通りした。


 食器屋さんの隣が私のスペースだ。


「こんにちはー」

「いらっしゃいませ」

 食器屋さんのお姉さん。


「あ、隣なんです。今日からどうぞよろしくお願いいたします」

「あら商人なの? こちらこそよろしくお願いします」

 私のスペースにはみ出た荷物を避けてくれた。ずっと空地だったみたいだから、大丈夫ですよ。


 サイズは計ったから大丈夫よね。収まるよね。

 アイテムバッグから屋台を取り出した。そのままスペースにポンと収まった。

 うわーギリギリだった。敷地面積ギリギリ。隣が角で良かったわ。


 お隣の姉さんはいきなり大きいのが出て来て、びっくりしていた。

 向かいのおばさんからも「うわっ」と言う声が聞こえたので、「よろしくお願いします」と頭を下げる。

 屋台だけなら他の人もアイテムバッグから出しているだろうけど、ターフテントがある分、かなり大きく感じるのだろう。

 やっぱり水色の屋根は目立つ。


「雨の日便利ねー」

 隣のお姉さんが話しかけてきた。30代位のお姉さんだ。元32からすると、同年代で話しやすそう。


「そうなんです。そのために設置しまして」

「雨降ったら私も入れてくれる?」

「もちろん。どうぞ入ってください」


「もう設置終わりなんだ。アイテムバッグ便利ねー」

「便利ですよ。帰りもこのまま持って帰れますから」

 お姉さんのところは食器とか鍋とか重いものが多そうだ。アイテムバッグあると楽なのにね。


「うちは屋台を入り口で借りてるから、商品だけ持ってきてるのよ。でも商品だけでも重いし、毎日並べるのも大変だし、あると便利よね」


「鍋とか重いですよね」

「アイテムバッグ買っても、屋台が無いし、両方買うと破産しちゃうわ」


 アイテムバッグも年10万デナリだし、屋台は作ると高いだろうからね。


「私も屋台とテントは貰いものです」

 北海道さんから。


「あー良かったわねー。でもすごくキレイじゃない。新品じゃないの?」

「中古だと思いますが、キレイになりました」

 微妙な返事をしておく。


「何だかよく解らない商品が多いけど。え? これって鏡?」

 お姉さんの声に、お向かいのおばさんたちも興味津々で寄ってきた。


「ヘアアクセサリーなんです。こんな感じで。似合うかどうか鏡で見てもらおうと思って」

 自分の髪についたシュシュやヘアクリップを指さしながら説明する。


「へーいいわね。前に見た鏡はこんなにキレイに映らなかったわよ」

「でもよく見えすぎると皴まで映るよ」

「あははっ若作りしてもバレてるよ」

「何このー」


「鏡も売ってるの? 3,000デナリかー。ちょっと高いわね」

「そうねー欲しいけど。これは? どうやって使うの?」


 元気なお母さんたちに、商品の説明をする。みんな自分の店ほったらかしで集まってきていた。


「ねー何で動物が沢山いるの? これも売ってるの? 何に使うの?」

 一人のお母さんが飾り付けに使ったマスコットを見て聞いてきた。


「可愛いから飾っているだけです。もし欲しい方がいたら売りますよ」


「きゃー熊がいるよ」「きゃー本当だ」

「あれ? 熊ダメですか? 可愛くないですか?」


「あんた何言ってるのよ。熊なんて人を襲うのよ。毎年村とか襲われてるんだから」

「確かにそうですね。これは避けておきますね。他の動物は大丈夫ですか?」

「その方がいいわ。クマに家族殺された人もいるから、嫌がるわよ」


 慌てて熊は隠した。

 可愛いと思うけど、気持ちは解る。日本でも可愛い熊グッズを見ると、実物とは大分違うよなと思っていたので。個人的にはネズミやカエルもダメだ。キャラクターと乖離がありすぎる。


 他の動物は大丈夫そうだけど、「リスなんてどこが可愛いのよ」と言われたので、端っこにいたリスも引っ込める。

 えー、リスは可愛くないですか? こっちじゃリスも害獣で畑を荒らすし病気を広めるので嫌われているそうだ。魔リスの顔怖いもんね。


 お母さん方は一通り商品を見て説明を聞いて、満足したように帰っていった。


 結局みんな何も買わない。財布の紐が固い商人のお母さんたちだった。

 全部説明させておいてー。


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