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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


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40*ヘアグッズの値付け交渉

 本日のメインイベントは、頑張って準備した屋台の相談だ。

 『こんなもの売れませんね』なんて言われたらどうしよう。


 商業ギルドも冒険者ギルドと同じようにごった返していた。

 どちらも男率が高いが、匂いが違う。

 冒険者ギルドは体育系の部室だが、商業ギルドはタバコ部屋な感じ。

 匂いに関しては、魔法ギルドが一番良かったかな。女子多かったし。

 範囲浄化魔法をここでも唱えてやりたい気分だが、そのまま船に乗せられどこかの国に連れて行かれそうなので自粛する。


 目当てのボーナさんの前には、やはり誰も座っていない。よし。

 ギルド長に直接声掛けるなんて、普通は出来ないんだろうな。何も知らない小娘で良かった。



「ボーナさんおはようございます」

「あら、カノンさん、おはようございます」

 書類から顔を上げて、にっこり笑ってくれた。名前まで憶えてくれてる。嬉しい。


 やっぱり3ギルド長の中ではボーナさん推しだな。

 まぁ、今のところ商業ギルドに一番貢いでいますが。


「市場の屋台の件で、値段のご相談に来たんですが。今お忙しいですよね?」

「いいえ、大丈夫ですよ。座ってください」

 目の前の座席を勧められたので、腰を下ろす。


 アイテムバッグから商品を一通り取り出した。

「こんな感じなんですが。髪をまとめるヘアピン、ヘアゴム、シュシュ。これは伸び縮みするので、髪をまとめやすいんです。ヘアゴムの周りに布を被せたのがシュシュです。あとヘアクリップは、ここを押すと開くので、ここに髪を挟みます。それと……」


「ちょっと待ってください。よく見たいので奥に行きましょう」

 私が机の上に出したものを、ささっと自分の腕で全部抱えて、ボーナさんが歩いて行った。慌てて後を追う。

 廊下を歩いて奥の部屋に入る。



 またギルド長の部屋だ。

 広くて清潔感のある部屋で、何だかいい匂いがする。さっきのホールとは空気が違って美味しい。


「あ、座って。お茶飲む?」

 急にボーナさんの口調が変わった。親戚のお姉さんみたいな気軽さがある。

「ありがとうございます」


「さっき淹れたお茶だから、少し温くなっちゃったけど」

「大丈夫です、ありがとうございます」


 折角淹れて頂いた紅茶だが、正直あんまり美味しくない。

 ギルド長が飲んでいるものだから良い物なんだろうけど、船の輸送の問題かなぁ。めっちゃ渋い。


「あーびっくりした。ちょっと受付で気軽に出す物じゃないわよ。色んな人が見てるから。若い商人を騙して奪い取ろうとする奴も結構いるんだから、気を付けてね」

「あ、はい」


「じゃあちょっと最初から説明してね。何これー」

 急にうきうきな感じになったボーナさん、可愛いな。


「ヘアピンはこんなんです」

 自分の髪を留めているのを指す。

「どうやって付けるの?」

 付けるところを見せてあげる。


「留めておけば下を向いても髪が落ちて来ないので便利ですよ。あと、髪を結う際にも使います」

「なるほど! 書類仕事するときにも便利ね。買うわ」


「あはは、ありがとうございます」

「似たようなのはあるけど、こんなにしっかり留まらないで落ちてくるのよ。端っこも丸くて痛くないから頭に刺さらなくていいわ」

 この国の人は頭に刺さるヘアピンをしているのか。それは大変だ。


「それにこの波打っているのも意味があるのよね」

「よく解らないですが、多分髪をしっかり留めるのではないかと」


「そうよね。こんな小さいものに、めちゃくちゃ手間かけてるのね。痛くないようにヤスリかけてるのも凄い。丁寧な職人さんが作ったのねー」


 多分、機械で大量生産だと思う。20本100円で売っていたものに、人手が入っているとは思えない。


「黒と茶色と金色?! え? 金で出来てるの?」

「いいえ、違います。金色のメッキですよ。中身は鉄です」


「金のメッキ? 高いじゃないの」

「違います。金は使っていないです。別の安い金属です」


「とてもキレイね。こんな金属初めて見たわ。多分うちの国では採れない金属なのね。カノンちゃん、手に入る?」

 あれ、ちゃん呼びになった。


「いやあ、このヘアピンならまだ持ってますけど、原料は手に入らないです」

「そうなの。残念だわー」


 うーん、いきなり一品目から面倒な話になってきたぞ。

 多分亜鉛だからこの国にもあると思うけど、亜鉛メッキの方法なんて聞かれても答えられないのでこれ以上は無理。


「金色のヘアピンは市場で売らない方がいいですかね? ヘアクリップも金色の物がありますが」


「そうね! カノンちゃんが誘拐されると困るから。売るなら私相手だけにして」

 目をキラキラさせて急に手を握ってきたぞ、この人。

 さっきまでのキャリアウーマンっぷりはどうした。


「あーじゃあ金色の物は控えておきます」

「売ってくれる?」

「とりあえずそれは後でまとめて……」ゴニョゴニョ。


「そうねー。他の物も見てからにしましょう。これは?」

 やっと二つ目の商品だ。今日は長くなりそうだなー。



 夕方にやっと解放された。

 なんか痩せた気がする。

 ランチは奢ってもらってちゃんと食べた。話を止めたくなかったようで、気付いたら部屋に2人分の食事が用意されていた。


 とりあえず金額はこうなった。

 ヘアピンは10本セット 500デナリ(黒・茶のみ)

 ヘアゴムは5個セット 500デナリ

 シュシュ小 500デナリ

 シュシュ大 1000~2000デナリ

 ヘアクリップ小 1000デナリ

 ヘアクリップ大 2000~3000デナリ

 子供用ヘアアクセ 500~2000デナリ

 手鏡 3000デナリ

 櫛 2000デナリ

 安全ピン10本セット 1000デナリ(銀のみ)


 思ったより高くなった。外食でも一食500デナリで食べられるので、比較するとかなり高く感じる。

 殆ど100円ショップ産で、その原価も実際は掛かっていないので、申し訳ない気がする。


 ゴムや手鏡には勿論、ボーナさんはかなりの食いつきを見せた。

 手鏡は一時1万デナリまで跳ね上がったが、「小さいから小さいから装飾も何もないから」とボーナさんを宥めて価格を下げた。


 どっちが売る方なんだか。

 でも市場で1万デナリは売れないだろう。3,000デナリでも厳しい。とりあえず様子見ですね。


 ボーナさんが色々気に入ってくれたみたいなので、持ってきたサンプルを渡そうとしたら断られた。


「それはダメよ。商人なんだから無料で渡しちゃダメ。お店開いたら私も買いに行くわね」



 市場を開く準備はこれで出来たが、明々後日からなので、思わぬ休みが2日も出来てしまった。何しようかなー。

 小屋に引きこもって連ドラの続きを観るのもいいな。

 町の中心は一通り見たので、特に行くところもない。郊外は家や畑ばかりだ。


 今日はもう日が暮れるので大人しく小屋に戻って、値札などを作成した。10本セットなどはOPP袋だが、他は包装なしだ。


 そのまま手渡しでいいだろう。日本風に包装する気は毛頭ないが、割れ物だったりするとそのまま手渡しとはいかないだろう。そういう意味でも小さくて軽いものは楽で良い。


 釣銭用の小銭もボーナさんが両替してくれた。用意したのは1,000デナリの銀貨と100デナリの白銅貨だけだ。それ以上大きな額を出す人はいないだろう。



 タブレットで、食堂の日替わり定食をチェックしてたら、ユイの顔が大写しになった。

「わーびっくりしたー」


「いい加減慣れてよ。何十回このやり取りしてんのよ」

「いきなりは慣れないから。先に声掛けるとかしてよ。それに今までと違って人前だったら困るからね」


「そこは大丈夫。ちゃんとカノンの周囲に誰もいないことは確認しています。バスルームに男が隠れていないのもチェック済だよー」

「それは残念と言うべきか」


「留守宅にいたら怖いって。あ、そういえばこないだの管理室のおじさんが倉庫見に来てたよ。テントに声掛けてたけど、カノンいないからすぐ帰ったけど」


「勝手にテント開けたりはしなかったんだね」

「それは大丈夫だったー。テントの隣のBBQコンロ見て首捻ってたけど」

「あはは、さすがに一人BBQやってるのは不自然だったか」


「まー用事あるっていうより、心配して見に来たって感じだった。きっといい人だと思う」

「うん、今度顔出しておこう」


「そうだねーご飯決まった? 私も食堂に行くから一緒に食べよう」

 一緒に食べるといっても、タブレット越しの話だ。


 ジョージのおすすめメニューを見る。今日は魚にしようかな。アクアパッツァ大好き。

 注文してBOXから取り出すと、タブレットの中のユイが早くも料理に手を付けようとしていた。


 ユイの職場は食堂の隣なのか? 一歩も動いていない私より早いってどういうことなのか。

 瞬間移動? 部屋に依って時間の流れが異なると言っていたが、そのせいなのか。


「テレポートの魔法もあるの?」


「こないだの話? 帰還魔法は大分確認できたよ。自宅の複数設置も出来るらしい」


「え、本当? 助かる。ここから市場まで結構歩くんだよ。商業ギルドも市場から10分位だから、ここと市場と商業ギルドに設置して帰還魔法使えば超楽」

「どんだけぐーたらする気だ。市場と商業ギルドにも自宅が無いと設置出来ないわ。10分位歩け歩け」


「市場の屋台を自宅と認識させることは出来ないの?」

「屋根がターフだから屋内判定が厳しい。それに夜間市場に屋台置いておけないんじゃなかったっけ?」


「ああそうだった。毎回屋台撤去しないとならないんだった。行きは無理か。でも小屋に自宅設定しておけば、帰れるってことだね。早く帰還魔法覚えたい!」


「あーそうですね。ところで明日明後日はカノン暇なんだよね」

「えー何?」


 何だか嫌な気がする。


「いやちょっと動画を見て欲しくて」

「動画? 何の? ここで見られるの?」

「うん、今用意してるから楽しみにしてて」

 海外ドラマ見ようと思ってたのに、きっと違う動画だよね。


「ご馳走様でした。じゃあ明日の朝ねー!」

「明日ねー」


 まだ食事中の私を残してユイは行ってしまった。忙しいんだね。


 何の動画だろう。全く思いつかない。はてさて。


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