39*魔熊30頭はダメだってさ
翌朝から残りの商品も面倒なのは外注に出しながら選別して、商品が揃った。
後は、ディスプレイだ。
庭に出しっぱなしの屋台に、商品を並べていく。
うーん、どうもセンスが無いな。ディスプレイも魂さんに外注した方が良いのだろうか。きっと前世で雑貨屋さんをしていた人もいるだろう。
でも、こんな小さな空間だって私の店である。商人デビューなのだ。
センスが無くても自分でやらなくてどうしよう。
子供の頃は可愛い雑貨に囲まれるのが夢だった。
海の見えるカフェに雑貨を置いてのんびり人生を楽しみたかったものだ。いや、今でも許されるならそうしたい。
いつか出来るか解らない雑貨カフェの第一歩の屋台である。頑張ってディスプレイしなければ。
なんて意気込んでみたものの、センスが上がる訳もなし。
BOX検索してたら、可愛い小さな動物のマスコットがヒットしたので、それをあちこちに置いてみた。
「おお、いいね、可愛い。これできっと女子は寄って来るはず。とりあえず完成したー」
肝心の値付けがまだだが、それは明日商業ギルドでボーナさんに相談した後だ。
とりあえずグループ化して、そのままアイテムバッグに収納した。これで市場でターフテントを建てる必要はなく、そのまま出し入れできるので便利である。
アイテムバッグにもまだ余裕があるようなので、私が座る椅子や膝掛け、補充用の商品も入れた。
「あと何が必要かなぁ」
昔フリマをやったときのことを思い出す。
ランチと飲み物とおやつ、あと釣銭がいるな。
ランチはサンドイッチでいいや。北海道のパン屋さんが沢山あるので、パンの在庫はまだまだある。
飲み物は、さすがにペットボトルはまだ早いな。
プラスチックも第7で出す宣言をしたばかりだが、ペットボトルは物珍しすぎる。これで飲んでいたら、不思議そうな顔でみんな見るに違いない。
春先でもずっと外にいると寒いだろうから暖かい飲み物がいいな。そうなると魔法瓶か。銀色の飾りの無い魔法瓶を探して、コーヒーと紅茶を一本ずつ入れた。
それでも冷めるからBOXに入れておくけど、飲むときはアイテムバッグから出すフリをしよう。アイテムバッグに手を入れた状態で、BOXから取り出しを選ぶとアイテムバッグの入り口に出てくる。スムーズに取り出す練習をせねば。
でも、『魔法』瓶か。
実際に火魔法を付与とかで、熱いままで保つことが出来そうだよね。火が点くと容器が溶けちゃうけど、水魔法や風魔法との組み合わせで出来ないだろうか。
そういう魔道具がありそうなので、今度魔法ギルドに行ったときに聞いてみよう。
えーと、次におやつ。
これは大事だね。一番大事といってもいいよ。
口の中にパクっと入れるなら何でもいいだろうけど、人に見られても大丈夫なものがいい。
すぐ傷むものはダメだから生菓子は却下。チョコとかも匂いでバレそう。甘いチョコはこの国にはまだ存在していない。焼菓子ならアリかな。あとドライフルーツを持っていこう。
釣銭は崩さないと無いから、明日町で買い物をするか、商業ギルドに両替出来ないか尋ねてみよう。
毎朝5時に鐘で起こされるのもやっと慣れてきた。
保護膜で音を遮断することも出来るのだが、そうすると私のことだから昼まで寝ていそうだ。
身支度を整えてお出掛けの準備をする。
今日の服装は町娘パート5。
いわゆる私服の制服化で、ユイにコーディネートしてもらった服をとっかえひっかえ着ている。
とは言え、この国ではオシャレな方だと思う。
庶民は3着位しか服を持っていないそうなので、オシャレに気を使う余裕はないらしい。
それというのも、綿がまだこの国に普及していないから。毛織物と麻がメインで、絹は高級品なので貴族の物。綿はまだ殆どアジアから流れてきていない。
産業革命前なので服は手縫いだ。大量生産出来ないので買うとかなり高い。
BOXに入っている加工品のうちで、一番多いのは服だろう。これだけの服を安く市場で売れば大変儲かるだろうが、一生アリッチェから出してもらえなくなりそうなので、絶対封印だ。
そのうちコネクションを築いてから然るべきルートで細々と流通していきたい。
まずは冒険者ギルド。
受付は朝一が激混みだが、逆に買取所は人が少ない筈だ。
但しギルドの入り口は表にしか無いので、受付スペースを横切らないと買取所に辿り着けない。
聞いていた通り凄い人出だ。朝一に良い条件の仕事が張り出されるらしく、壁の求人票に沢山の人たちが群がっている。
男率が物凄く高くて筋肉率も高い。
ビキニアーマーの女性冒険者は都市伝説だから。
心臓を無防備に晒してどうする。肌を見せないのが基本です。寒いしね。女傭兵っぽい人も一度見掛けたが、男性冒険者に負けない位ガタイが良くてしっかり着込んでたよ。
後は、町の中の仕事を探す町娘が数人。こちらも勿論肌見せなし。
人をかき分けフロアを何とか抜けた。
買取所に並ぶ人は誰もいない。やっぱり朝は狙い目だ。
でも毎回あれをくぐるのは厄介なので、裏口が欲しい。
「おはようございます」
買取所のおっちゃんが、笑顔の私を見てぎょっとした顔をする。えーこんなに美少女なのにひどい。
「また来たか」
「だってギルド長がちょっとずつ持って来いって言うんだもん」
「こないだの魔熊の魔石だ。持ってけ」
「ああ、ありがとう。やっぱり魔熊は魔石も大きいね」
「そりゃあんなに体も大きいからな。今日は何匹だ?」
「逆に何匹だったらいいの?」
「お前どんだけ持ってるんだ。30匹位だろうな」
「大きいの? 小さいの? 魔熊30頭もアリ?」
「無いわ! そんなに持ってるのか?」
「いやー冗談ですって」
あるけど。
大中小織り交ぜて30匹納品した。今回魔熊は1頭だ。
「じゃあ、2~3日に一度くらい、30匹納品することにするわ」
「うん、その位だったら何とかなるかな」
魔石は解体後貰う約束で精算してもらう。
市場の方はそんな利益にならないだろうし、ハンター一本で生きていった方がずっと儲かるな。
とはいえ、そんな人生は嫌だ。
たまに魔石拾いには行かなきゃならないけど、魔獣にはなるべく近付きたくない。
「じゃあありがとう。おっちゃんまた来るね」
名前も知らないので、おっちゃん呼びが定着してしまった。だって外見もおっちゃんっぽいんだもん。
ギルド長とイレーネさんに見つからないように、急いでギルドを出る。
セーフ。
見つかったかもしれないが、引き留められなかったのでセーフ。




