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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


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38*シュシュに殺される

 早速今日から使っていいことになったので、廃倉庫に戻る。


 中に入ると、確かに火事の跡がある。壁があちこち黒く変色している。

 とにかく床が埃だらけで汚いので、倉庫内部全体に浄化魔法を施した。


 外側には手を付けない。廃倉庫がいきなりピカピカになったら、みんな覗きに来るだろうから。


 まずは入口から遠い奥の方に小屋を設置。その横に広場も設置する。そしてグループ化して、保護膜とプロジェクションマッピングを付与。これで何も見えなくなった。


 誰か倉庫に入ってきても小屋には気付かず、近寄ってもふんわり弾かれて何も無いと錯覚を起こす。



 やったー、愛しの我が家。

 たった一日留守にしただけだが、もう小屋無しでは生きていけないのを痛感した。


 あんな狭くて暗い宿は無理だ。この小屋も狭いけど、前世の1LDKとほぼ変わらないので、私には十分だ。


 軽めのランチを食べて、もうちょっとゴロゴロしたい気持ちを振り払って準備を始める。



 まずは、倉庫の偽装工作をしなくては。

 管理室のおじさんはきっと危ない魔法を使っていないかと倉庫を見に来るだろう。


 小屋の反対側にテントを張って、野営セットや生活用品などを色々置いておく。ここで寝泊まりしている感が出るように、盗まれてもいい物だけ置く。

 貴重品はアイテムバッグで持ち歩いている設定にしておけば良いだろう。事実だし。


 一人でテントを張るなんて初めての経験だったので、上手くいかなくて何度も泣きそうになった。設置簡単なタイプを選んだのだけど、全然簡単じゃない。


 冒険者は野営とか多いんだろうか。BOXに相当量のアウトドアグッズが入っているので、いずれ販売できるといいな。



 偽装工作がほぼ終わったので、小屋に戻って今度は屋台の準備だ。

 といいつつ、まずはティータイム。テント設置で荒んだ心をコーヒーとスイーツで宥める。

 こういうことをしているから、時間があっと言う間に過ぎていくんだよね。



 まずは屋台設備を考えよう。

 前世某通販サイト出身のパワハラリーダーのおかげで、BOX検索がかなり優秀になったので、サイズを指定して屋台設備を検索。

 お客さんも私も濡れずに済む広い屋根の屋台はなかなか無かったので、屋根はターフテントにすることにした。

 その下に陳列台付きのワゴンを設置する。


 方針が決まったので、庭でまたターフテントの設置をする。

 さっきのテントに比べたら、今度は楽ちんだ。これなら一人でも設置できる。市場は石畳だったので、ペグは挿せないだろうから、足に重りをセットする。


 アイボリー色ばかりの町で目立ちたいけど目立ちすぎたくはないので、ターフは水色にした。青空を思わせる爽やかな色だ。


 棚も置いてお店っぽくなったので、屋台は一旦ここまで。



 次はいよいよ商品の選定だ。


 漂流してこの土地に辿り着いた設定の私が、大きな物をどんどん販売するのはちょっとまずい。

 時間経過が遅いバッグなんて無いので、食品はダメ。

 商人や貴族に目を付けられると嫌なので、珍しいものもダメ。


 3ヶ月以内に町を出る予定なので、その後町の人たちが買えなくなっても困らないものが良い。

 町を出るのを引き留められたり、後を追われても困る。使って無くなる消耗品はダメ。


 小さくて軽くて安くて長持ちするもの。

 そんな理由で選んだ商品がこれだ。


 ヘアアクセサリー。

 この国の女性はみんな髪が長いから、需要はある筈。

 ヘアピン、ヘアゴム、シュシュ、ヘアクリップ、手鏡、櫛、安全ピン。


 どれも簡素な物を販売する予定だ。小さい物ばかりなので、大量に持っていても然程怪しまれないだろう。価格も安いが、ちょっとだけ高め設定にしたい。


 懸念点は二つ。


 一つ目は手鏡。

 100円ショップにあるシンプルな小さい物だけにする予定だが、この国では庶民は鏡を持っていない。

 ギルドの鏡を見たが、あまりキレイに映らなかった。100円商品でもあれよりいい物だろう。他の商人が買い占めに来られると困る。

 でもヘアグッズ売る以上、女の子には鏡ぐらい持っていて欲しいんだよね。


 二つ目はゴム。

 ヘアゴムやシュシュで使うゴム。この国には無いので、便利で重宝されると思う。

 これも商人に押し寄せられると困るが、髪を結ぶ以外にゴムの有益性を見出せる商人がいるかどうか。



 明後日、商業ギルドでボーナさんに値付けを相談しよう。

 販売商品が決まったので、具体的な商品の選別に入る。


 タブレットの写真を見てもよく解らないので、実物を見て判断したいと、BOXからシュシュを取り出した。


 すると、小屋がシュシュで埋まった。




 マジで死ぬかと思ったよ!


 北海道じゅうのシュシュの量、侮ってはいけない。ふわっとしているあいつらを侮ってはいけない。

 目も鼻も口もシュシュに塞がれ、息が出来ないなか、何とか周囲のシュシュをBOXに戻せた。

 ハーハーゼーゼー。魔熊なんかよりシュシュの方が怖いです。


 よく考えたら、ショートボブだった私でも、長かったときの名残りで10個以上持っていたし、店にある分考えたらそりゃあ沢山あるよね。

 北海道の分類作業はまだまだなので、全部終わった後だったら本気で死んでいたと思う。


 やっぱり気軽に(全部出す)とか(じゃがいも1トン)とか指定しちゃいけないの勉強になったわ。

 マジで死ぬ。


 落ち着いてからシュシュを100個指定で出して、今回売るの/高そうだからいずれお金持ちに売るの/不要なものに分ける。


 不要フォルダに入れると、運営の担当者が地球や他の惑星で売れるかを分類してくれるようだ。売れたものは、BOXの中の日本円に加算される。運営でも不要な物は分解されリサイクル、もしくは分子まで分解され土に還る。


 ちなみに、BOXの中の日本円は、数十兆円ある。

 現金社会じゃなくなってきたから、銀行の大金庫にもそんなに現金は無いけど、あるところにはまだまだあるもんだよね。一般家庭のタンス預金も相当らしいよ。


 でもこのお金は日本では使えない。

 当時北海道にあったお札だが、避難するときにみんな持って逃げた筈だからね。ほぼ本州に存在するお札な訳だ。

 同じお札番号が2枚存在すると偽札だと思われるだろうし、仮に上手く偽装出来たとしても、これだけのお金を日本に落としたら経済が完全にパンクする。


 じゃあ数十兆円どうやって使うのさと言うと、運営内で使って良いことになった。

 例えばジョージの食堂。あれの飲み食いは、数十兆円から払う。一生食べても食べ切れないね。


 飲食物以外も、地球上の商品が色々データベース化されているので、DBにあるものは買える。ネットショップでいいなと思った物も、DB化されていれば買える。

 若干地球より高くなるが、手数料と思えば問題ない。

 でも大抵の物は北海道にあったから、買ってまで欲しい物ってあまり無いんだよね。


 DB化されているので、スカイツリーも欲しければ買えるらしいよ。どこに建てるんじゃ。


 それと、人件費に使われている。

 北海道の資材を分解&選別&データベース化のために雇った魂さんたち千人分の人件費だ。

 魂さんたちは100倍速部屋で働いているので、こちらの一日に対して魂さんたちは百日以上働いている計算だ。

 そして魂さんへの給与は3千円/日の契約になった。衣住は不要だが、作業体に入ると食事が可能なので、一食千円の計算らしい。

 魂さんが貯金しても意味はないし、物を買っても来世には持っていけないので、食に使うしかお金の使い道はない。


 千人×3千円×百倍(運営時間)で、毎日3億円人件費にかかっている。

 ひえー毎日3億円。めっちゃくちゃ大企業じゃん。

 でも、数十兆円あるんだから、たかが3億って気もする。

 たかが3億、一度言ってみたかった言葉だよね。


 日々の北海道分解作業で、不要な物は運営判断で地球へ販売してるので、結局3億以上の元は取れている。


「第7に不要ってどんなものがあるの?」

 ユイに聞くと、

「第7に持ち込んで欲しくないもの、地球みたいに第7も人類滅亡に繋がりそうなもの」

「成程。怪しいの沢山ありそう」


「あとね、コレクターグッズとか。アイドルやアニメや鉄道や色んなグッズ。第7で売ろうとしても誰も買ってくれないでしょ。地球の方が高値で売れる」


「そりゃそうだ。美術品とか骨董品とかはどうなの?」

「ゴッホが2枚出てきたら大変でしょ。第7の王族や貴族に高値で売れるかもしれないから取ってあるよ」

「私が王族に売りに行かないといけないってことでしょー。絶対嫌だからね!」



 頑張ってシュシユの選別を続けて、当座販売する分は決定した。


 そしてヘアピンだ。

 普通の黒い鉄のヘアピン。この国には黒と茶と金の髪色がいるので、黒と茶と金のヘアピンを用意する。


 残念ながら元地球なので、アニメの様なピンクや水色の髪色はいない。私の髪色は薄茶だ。描き分けが難しいから、第7はアニメ化には向かないね。アホ毛にされるのも嫌だ。


 ヘアピンは色ごとに10本ずつOPP袋に入れる。


 勿論OPP袋もこの国には無いが、そこまでは気にしないことにした。

 プラスチックを秘匿すると、殆ど売る物が無くなってしまう。全ての物を詰め替えして売るなんてやってられないよ。


 例え紙袋に変えたところで、紙の品質にびっくりされるだろう。木箱や陶器の箱なんて使ったら、箱代の方が高くなる。

 ホッカイドーにはこういう透明な樹脂素材があるんですよでプラスチックを押し切るつもりだ。


 ちまちまOPP袋に入れていたが、疲れた。

 こういう細かい作業は向いてない。


 結局魂さんたちに外注を出すことにした。ヘアピン10本、安全ピン10本、ヘアゴム5本セットを各100セットずつ作ってもらうよう依頼する。多いけど、余ったら次の町でも売るだろうからいいよ。


 サンプルを5分以上かけて作ったのに、依頼してからものの5分で納品された。


 さすが百倍の時を生きる魂さんたち。ありがとうございました。今後も頼ることにしよう。


 本日の作業は、これにて終了。


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