37*廃倉庫に小屋を建てる
早速商業ギルドにとんぼ返りをして、借金を払った。
借金ではないけれど。
「え、もう来たの?」
ボーナさんにも驚かれた。
「意外に買取額が高かったので、さっさと払ってしまいたくて、速攻来ました」
「50万も稼ぐなんて凄いものを捕まえたのねー」
魔熊なんて言ったら、今いる商人全員に振り返られそうなので言わないぞ。
「では、手続きしちゃいますね。屋台はどうします? いつから始めます?」
「準備もあるので、5日後にします。あ、明後日商品持ってきていいですか? 相場とか教えてください」
「解ったわ。待ってるわね。それでは屋台の手続きの書類と場所の地図ね。それと、ギルドの証明書とバッジ。バッジは目立つところに付けておいてね」
バッジが3つになってしまった(魔法ギルドのはまだだけど)。毎日3つも付け外しするのが面倒だから、付けやすい仕様を考えよう。
「それと、アイテムバッグも一つ下さい」
20cm×30cmくらいの革製の巾着袋だった。黒、茶、黄があったので、明るい黄を選んだ。
そういえば冒険者ギルドでもこれを腰に付けている人が多かった。
「10万デナリになります。こちらが契約書です。よく目を通してください。一年更新になりますので、お支払いは年会費と一緒のタイミングでいいですか?」
「あれ、買取じゃないんですか?」
「ローマ帝国は買取は無いんですよ。年契約ですが、途中で解約したい場合は、日割りで返金されることになっています。国のどこの商業ギルドでも受け付けていますが、バッグの中身は予め出しておいてください」
そっか、買取だと思い込んでいた。確かに10万デナリは安いもんね。
カモフラージュのためだったけど、毎年10万も払うのは勿体ない。
うーん、とりあえず来年の更新までに考えようか。
「アイテムバッグは目に見えるところに掛けて下さいね。コートやストールなどで隠していると、物盗りと疑われてしまいますから。逆に背中側だとスリに遭う可能性がありますので、前でしっかり持っててくださいね」
そうか。ちょっと大きめだから腰に付けると歩くのに邪魔だなと思ってたけど、色々あるんだな。市場に行くときは気を付けよう。
カモフラージュ用だから屋台しか入れる気は無いけど、屋台盗まれると困る。
「ありがとうございます。明後日また来ます!」
ボーナさんに挨拶してから、市場に寄る。
自分のスペースを確認して、タブレットで色んな角度から写真を撮った。
まだ第7には写真なんて無いから、変な格好して立ち止まっている人がいる程度にしか思われないだろう。
場所は確かに良さそうだ。お昼も近くなって、人も増え始めている。
それほど稼ぎは期待していないけれど、元は取らなくちゃね。
周囲の店をちょっと見て金額相場を確認する。競合店は無さそうだ。
情報はこんなところでいいかな。
明後日また来るので、何かあれば見に来よう。
市場の裏手を歩いていると、北側に倉庫街が見えた。北門から出た先に港町があるらしいので、この町に来る商品が倉庫に納められるのだろう。どんなものか散策がてらちょっと覗いてみようかな。
時間帯のせいなのか人通りもまばらで、倉庫の門はどれもしっかり閉められて、荷物を運んでいる人はいない。町と同じクリーム色の石で建てられた倉庫だ。かなり年季が入っているらしく、近くで見るとひび割れていたり、壁の表面が崩れていたりする。
奥にとりわけボロボロの大きな倉庫があった。
ドアも取り払われ、壁や屋根にはあちこち穴が開いている。中を覗いたが、木材が何本か転がっているだけで何も無い。
使ってないのであれば借りられないかな。
市場から歩くとちょっと遠いが、そこは致し方ない。
周囲をしばらく歩いていると、荷運びのおじさんに遭遇した。
聞いてみたが、おじさんにもどこの会社の倉庫か解らないらしい。
管理室に行って聞いてみろと言われたので、北門手前の管理室まで歩いて行った。
「こんにちは」
営業スマイルで、管理室のおじさんに声を掛ける。
超絶美少女になったので、営業スマイルはとても効果的だ。おじさんにはよく利く気がする。
「あっちの奥の方にボロボロの倉庫がありますよね。ドアも無くて、壁や屋根にも穴が開いている大きな倉庫。あそこって使ってるんですか?」
「昔火事があってああなったんだけど、取り壊すのが大変なんで放置されてるんだ。何も使ってないよ」
「じゃあ私が使ってもいいですか?」
「あんなとこ何に使う気だ」
魔法使いの認定証を出して見せる。
「魔法の練習がしたいので、広い場所が欲しいんです。外は魔獣が怖いので」
魔熊を屠った女が言う台詞じゃないのは解っているが、か弱い女に見せておかねば。
「火魔法とか使われたら、周りの倉庫も危険だろうが」
「絶対に火魔法なんて使いません。火だけじゃなくて攻撃魔法全部使いません。お約束します」
「本当だろうな」
おじさんが睨んでくるので、こちらも目力で見つめ返す。
「でもタダで貸す訳にはいかないぞ。一月10万でどうだ?」
「えー、壁も屋根も壊れているのに? 雨降ったらずぶ濡れですよ。ドアも無いから人も入り放題だしー」
「うーん、いつまで借りたいんだ?」
どうしよう。この町にどの位いるかはまだ決めていないんだけど、屋台も1か月以上することは決まったから2~3ヶ月かな。
「3ヶ月貸して欲しいです」
「そうだなー。じゃあ3ヶ月で10万ならどうだ? もし周りに迷惑かけたらすぐに出て行ってもらうぞ。攻撃魔法じゃなくても大きな音を出すのも禁止だぞ。あと困ったことになっても助けられないからな」
「えー使っていないんでしょう? もうちょっとまけてくれても」
「ダメだ」
営業スマイルでも無理そうなので、これで手を打つ。宿代考えたら十分だ。
私の魔法使いの認定証の番号と名前を教えて、10万支払い手続き完了となった。お金はあっと言う間に無くなるな。
「本当に面倒は起こすなよ」
「大丈夫ですよ」
「返すときは、壊して更地にしてくれてもいいぞ」
「それ思い切り攻撃魔法が必要なんですけど」
解体費用を浮かす気だな。
メテオ一発でどお?




