36*魔獣って高いんだ
「屋台設備の貸し出しも出来ますが、別途料金がかかります。普通の屋台だと、一ヶ月2万デナリ位です」
屋台はBOX探せばあるだろう。飲食じゃないから普通の机でもいいし。
「はい、屋台は何とかなりそうです。一つお聞きしたいのですが、商業ギルドでもアイテムバッグってありますか?」
「はい、ございますよ。お持ちしますか?」
「そのバッグに屋台って入りますか? 手で持っていくのは大変なので。屋台は毎日仕舞うんですよね? 出しっぱなしはダメですよね?」
「ええ、出しっぱなしだと盗難の恐れがあるので、皆さんお持ち帰りになられていますね。商会が貸し出す場合は、市場に屋台置き場があるので、移動は少なくて楽です。アイテムバッグの件ですが、一区画分の小さなサイズの屋台なら入りますよ」
「それなら良かったです。解体して入れる必要が無いと、設営も早く済みますね」
「お求めになりますか?」
「今度買おうと思いますが、今日は保留で」
必要ないけど、今度一つ買った方が良さそうだ。毎回こっちのバッグに入るのか入らないのか考えるのが大変だから。
冒険者ギルドには、この国のアイテムバッグより大きいサイズを持っているのが既にバレたが、限度がある。魔熊40頭入らないなんて。
魔獣が売れたら、バッグ買いにこよう。
魔法ギルドにも30万払わないとならないし、商業ギルドも年会費かかりそうだし。日本円なら沢山持ってるんだけどね。
「今空いている区画がこちらですね」
地図で説明してもらう。
「この辺りが一番賑わっているエリアですね。だから料金もお高くなりますが」
「人が集まるのはいいんですが、飲食店が傍にあると商品に匂いが付きそうで」
「そうですよね。こっちの方も人通りがあります」
「女性用の服飾品を扱っている店舗はありますか? 女性が集まりやすい区画は?」
「この辺ですかね。衣料品店がここにあります。そしてここは飲食ですが、女性に人気のフルーツの店なので、匂いは殆ど無いと思いますよ」
「いいですね」
「そうすると、ここかここ。8万と10万になります」
迷ったが10万の方を選択した。10万かー、結構かかったが、日本基準で考えると、月10万は安いか。ただ元取れるかが全く解らない。
「商品の内容とか値段付けとか相談に来てもいいですか?」
「勿論ですよ。いつでも聞きに来てください」
「ありがとうございます。この国初めてなので、基準がよく解らなくて」
「大丈夫です。私はずっと住んでますから、頼りにしてください」
わー良かったー。キャリアウーマンタイプには可愛がられるべし。
「あと商業ギルドの登録ですね。北に50km位いったところに交易港があるので、この町も商人が多いです。ローマ帝国内は、商業ギルドに加盟していると、どの町も通行料がかからず出入りが出来ます。それだけ商人は優遇されています。但し、実績があってのこと。一定以上の取引が無い場合は、次回更新でワンランクダウンになります。また禁制商品を扱ったり、法に触れる行為を行った場合は罰せられます。州によって法は異なるので注意してください」
「禁制商品って?」
「そのことをまとめた冊子がありますので、こちらをじっくり読んでおいてくださいね。知らなかったでは済まされませんので」
「はい、解りました」
「カノンさんの場合は、売る前に私に見せに来て頂ければ、お教えしますよ」
「ありがとうございますー」
冊子をパラパラ捲る。塩も禁制なんだ。塩は国が販売してること多いもんね。後でじっくり読んでおこう。
「えーと、小規模小売店舗の扱いになるので、登録料10万デナリ、年会費30万デナリで合計40万デナリ。あと屋台の出店料が10万デナリなので、50万デナリですね。屋台は10日前までに登録か更新かの手続きが必要です」
「なるほど。支払いは今日じゃなくてもいいですか? これから冒険者ギルドで報酬の受け取りする予定なので」
「大丈夫ですよ。屋台を実際に始める3日前にお支払い頂ければ」
「解りました。あー50万かー」
「ごめんなさいね、高くて」
「いえその位かなとは思ってたんですけど、一括とは思わなくて」
「分割にしますか? 審査があるので、結果に時間がかかりますが」
「いえ、大丈夫です。ここで商品の買取も可能なんですよね。宝石も売れますか?」
「勿論です。しっかりした鑑定士もおります」
「だったら足りないときは手持ちの宝石を売りに来ます。支払いした3日後には屋台を始められるんですね?」
「早くて3日ですね。来月1日から始めたいということも可能です」
「解りました。また来ます」
「あ、私はボーナです。ここのギルド長をやっています。次回もまた私宛に来てください」
「え、ギルド長?」
それを聞いて私はバタンと机に突っ伏した。
「どうしました? カノンさん」
「いえ、すみません。昨日から魔法ギルド長と会って、冒険者ギルド長と会って、こちらで3人目なんです」
「あら、そうなんですか? それは凄い偶然ですね。二人とも変わった人だったでしょう。困ったことがあったら相談して下さいね」
やっぱり二人とも変な人だったか。
私はよろよろと立ち上がって、礼をして商業ギルドを後にした。
道理でボーナさんの前だけ客がいない筈だ。ギルド長に直接話しかけたりしないよね、普通は。
しっかりしたキャリアウーマンタイプだと思ってたら、まさかのギルド長だった。他の二人と違って、まともで優しそうだから良かったけど。何故こんなに引きが強いんだろう。
転生体強くしすぎた問題?
厄除けしといた方が良かったんじゃないのかね。
それより商業ギルドに50万、魔法ギルドに30万デナリ。いきなり詰んだよ。
日本円じゃダメですかね。
宝石はいっぱい持ってるけれど、どの宝石が売っても問題なさそうな最適解か解らない。
昨日の買取なんてたかが知れてるだろうし、どうしようかなぁ。
「おー嬢ちゃん、来たか。査定済んでるぞ。合計59万デナリになったから、ここにサインしてくれ」
はい?
昨日の続きで冒険者ギルドに来たら、思わぬ金額を告げられた。
買取所のおっちゃんに明細書を貰う。
買取合計70万から手数料7万と魔石引取分4万を引いて59万デナリだった。
魔鹿が15万、魔山羊が20万もの値が付いた。
「あまりにキレイだったからどれも満額で買い取らせてもらったわ。普通だったら刀傷でボロボロになってる筈なんだけどな。革がそのまま使えるから良かったわ。で、手数料っていうのは税金分、10%取られる。これでいいか?」
「鹿と山羊ってこんなに高いの?」
「革もそうだけど角が高い」
「そうなんだー。魔熊は?」
「魔熊は満額で50万」
「今すぐ出す。昨日の2頭出す。他には? おっちゃん、どれだけ余裕ある?」
「待て待て待て。査定は終わったけど、まだ解体中だ。今日は魔熊2頭だけにしてくれ」
いきなり金策の目途が付いてしまった。
げっそりとしたおっちゃんを残して、ほくほく顔で帰る。
でも魔鼠も小さいのに一匹千デナリって結構貰えるね。
昨日の男子50匹って言ってから魔鼠だったとしても、5万になるじゃん。10%引かれても4.5万。日当4.5万、月20日働いたら90万ってめちゃくちゃ美味しいね、ハンター。
毛皮に傷が多いと単価下がるんだっけ。酷いと買い取れないって話だった。
それに危険多いから保険も無いし、怪我しても個人の責任だもんね、何とも言えないかな。
帰りも受付素通りして帰ろうと思ったら、イレーネさんに止められた。
「何を素通りしようとしてんの?」
「えーだって受付通さなくていいって言ったのイレーネさんじゃん」
「昨日登録に来た、純真な可愛い女の子はどこ行ったの?」
「そっちも、有能なアイドル受付嬢の外面はもう剝がれてますから」
「有能だし」
「いや、有能受付嬢は、人を投げ飛ばしたりしませんから」
「人によるわ。魔熊は納品したんでしょうね。ギルド長がうるさいから」
「買取のおっちゃんは嫌がってたけど押し付けてきましたよ」
「よし。明日も頼むわ」
「毎日煮込みはいらないでしょうが。ギルド長一人で2頭も食べるの?」
「仕事受けて行かないの?」
「あー私、商人になることにしたので」
「なんでーーー???」
「さよーならー」
イレーネさんの叫び声を後に、笑いながら走り去った、してやったりー。
ドアを開けたら、丁度昨日の男子とすれ違った。月給90万の男か。親しくなっておいた方がいいかも。
でもぎょっとした顔をされたので、残念ながら親しくなれそうにもない。
私のモテ期―帰ってきてー!




