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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


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33/87

32*モテ期は一瞬だけだった

 8人待ちかー、結構並びそうだな。

 男性ばかりなので、その中にいるのが違和感がある。

 これって絡まれるケースかなー。無いといいなー。


「ここ来るのは初めて?」

 前の男性が振り返って言った。

 さっきのイレーネさんとの会話を聞いたのだろう。登録したての冒険者だと気づいたに違いない。


 でも絡んできた訳ではなく笑顔だ。『嬢ちゃんは家に帰ってママのおっぱいでも飲んでな』とか言われなくて良かった。


「そうなんです。いい町ですね」

「そうだろー、ご飯も美味しいしいい所だよ。女の子のハンターって珍しいね」

「まだハンターするかどうかは決めかねているんですが、魔法使いなんです」


「あ、やっぱり? そんな感じした」

 その前にいた男性も振り返って言う。

 結構二人とも若いな。10代後半~20すぎかな。ハンターは体力仕事だろうから若い人が多いようだ。


「ソロ? 仲間はいないの?」

「はい、今は一人です」


「魔法使いで一人は危ないじゃん、前衛いらない? 今度一緒に行かない?」

「こら、お前、何誘ってるんだよ。こいつはダメだよ、危ないから」

「そんなことねーって」


「俺」「オレ」

 気付いたら、他の子たちも話に参加していた。


 やばい、私モテてる? こんなこと無かったから、どう返していいか解らないわ。

 モテイベント到来と思ったが、イタリア男子は誘うのがマナーらしいしな。本気にしちゃいかん。


「あれ、みんなソロなんですか?」

「いや、うち3人」「うち5人」「4人。魔法使い募集中」「今ソロ。じゃ、俺だな」「お前彼女いるだろ」


「どの辺で活動してるんですか?」

 仲間を作ろうとは思っていないが情報収集は必要だ。


「北門から出て、西に行ったところの草原が捕まえやすいよ。歩くと片道1時間位。明日行く?」

「あーそっちにも魔獣いるんですね」


「どこで魔獣狩ってきたの?」

「南に行ったエルゼダンテの森ってところです」


 言った瞬間、みんなの表情が急に固まった。向こうにいる窓口のおじさんまでが、ばっと顔を上げてこっちを凝視した。

 え、遠いから?

 確かに歩きじゃ森の入り口まででも一日かかるもんね。バイクだったから半日で来たけど。


「……へー、あー南門から行くともう一つ森あるよね。……あっちなんじゃ?」

「あー、あるある、アールレイの森、あっちも魔獣出るらしい。そうだよ多分」

 男子たちはみんなで頷いた。


「そうなんだ。結構危険なんですね、この辺」

「そうだよ、一人は危ないよ」「誘おうとしてるんじゃねーよ」


「そうだ、受付のアイテムバッグ買おうか悩んでるんですが、どの位入ります?」

「え? バッグ持ってないの?」


「持ってるんですけど、私のあんまり入らないので、ここのはどうなのかなーと思って」

 大噓付きだ。北海道位余裕で入る。


「めちゃ沢山入るよ。今日も50匹位入ってる」

 おおー50匹か。じゃ、沢山出しても怪しまれないな。小さいって言っちゃったから、40匹位にしようかな。


 色々と聞いていたら、3番目まで来ていた。後ろにも5人以上並んでいる。


「あ、先いいよ。俺の量多いから時間かかる」

「あーでも私も40匹位いると思うんですけど」

「いいよいいよ、レディファースト」


 二人の男子が先を譲ってくれる。これで断るのも申し訳ないか。

「ありがとうございます」


「今度一緒に狩りに行こーね」「町案内してあげるよ」

 好意は嬉しいけど、元32歳のお姉さんとしては、ちょっと若すぎてノリが無理。

 とりあえず笑って誤魔化す。


 窓口のおじさんにバッジを見せて名前を告げる。

「初めてか。ここに全部出してくれるか?」

「えーと40匹位いると思うんですが」


 様子見で小さいの30匹、大きいの10匹にしよう。

 魔鼠15、魔リス8、魔兎7、魔猿1,魔狼5、魔鹿1、魔山羊1,魔熊1

 あれ、1匹足りなかった。魔熊もう1匹追加する。


「もう置けないから!」

 下を見ながらBOXから取り出していたので、前を見てなかった。


 買取所がいっぱいになっていて、おじさんが魔獣の下で潰れていた。


 最後に出した魔熊がカウンターから滑り落ちて、こっち側に落ちた。


「あ」


 男子たちがうわーっと逃げていく。

 あ、私のモテ期が……。


「何ですか?! どうしました?」

 男子たちの悲鳴を聞いて、先程の受付のイレーネさんが走って来た。


 落ちている魔熊と、カウンター前に突っ立っている私を交互に見る。

 やばい、見付かった。


 とりあえず魔熊に潰されていたおじさんを救出すべく、魔熊をBOXに戻す。

 こっちに落ちている魔熊も回収した。


「魔山羊も避けた方がいいですかー? 大丈夫ですかー?」

「……ああ、大丈夫だけど、今日の解体は無理だからな。あと、買い取り額もすぐには出ないから、待っててもらっていいか?」

「はい、後で大丈夫です。商業ギルドに行ってくるので、夕方にまた来ますね」


 買取のおじちゃんに頭を下げて立ち去ろうとしたら、目の前を阻まれた。

 がしっと両肩を掴まれる。


「お嬢さんちょっと来てもらいましょうか」

 イレーネさん、どこにそんな力がっ。イレーネさんに引きずられて、受付の裏に連行されていく。


 さっきまで私をちやほやしてくれた男子たちが、隅の方で固まって震えている。


 完全にモテ期は過ぎ去ったな。


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