14*カニ料理が無いんですけど
「BOX開いて。アハハ本当だ、北海道1個入ってる。……ここで右クリックして」
ユイの言う通りに画面を進める。
「分解ってあるでしょう。これを選択」
「分解!」
わー、画面に出てたフォルダが増えた。
粗原料及びエネルギー源/加工基礎材及び中間製品/生産用設備機器及びエネルギー機器
名前固いな、何入っているのか解らないよ。
粗原料及びエネルギー源を選択すると、
生き物/動物粗製品/植物粗製品/金属鉱物/非金属鉱物及び岩石/石炭及び石炭製品/原油及び石油製品/電力、ガス及び用水/その他の粗原料及びエネルギー源
なるほどねー北海道なんだから色々あるよね。
生き物って人間とか入っていないよね?
恐る恐る選択してみた。
牛/馬/めん羊/やぎ/豚/うさぎ/家きん及びその卵/種繭及び蚕種/その他の生き物
一応念のため、その他の生き物→他に分類されない生き物 を選択して人間がいないことを確認した。
「ねー、生きている動物がいるみたいなんだけど、このままで大丈夫? 死なないの?」
「大丈夫だよー。いらなかったらこっちで引き取るけど。でも第7で酪農やることになるかもしれないし、持ってた方がいいんじゃないの?」
「多分やらないと思うけど。でも倉庫の中で飼われてちゃ可哀想じゃない?」
「ほぼ時止まっている状態だから、動物たちは気付いてないよ。お腹も空いてないし、まだ北海道の牧場にいると思ってるんじゃないの」
「一応取っておくか。自分で酪農しなくても他に頼むかもしれないし。馬車使うときに馬必要だろうし」
そんな数要らないと思うけど。
わー、北海道を貰ってしまった。
めっちゃチートじゃない?
こんなに沢山どうすればいいの?
金属、鉱物、岩石とかそりゃあ大量だよね。数字見ても一体どの位あるのか想像つかない。
土なんているの? と思うけど、埋め立てしたり塀作ったり道路舗装したりするよね。北海道ほどは要らない筈だが、私の後任が土木技師だったりしたら役立ててくれそう。
石油、石炭あるねー。昔は採掘してたんだもんね。そりゃまだ残っているよね。
でも、地球では掘りすぎて破滅を招いたわけだし、第7に石油の存在とか教えていいんだろうか。
沢山掘り始めてしまったら同じ末路を招くよね。悩むねー。
しかし500年後に大量の日本人がやってきたら、一気に第7の採掘始めるだろうし。石油とかはちょっと保留案件。
「じゃあ、何かあったらまた呼んで。私、坂口さんと大事なお話があるので」
BOXの中を見て沈黙してしまった私を見て、ユイが声を掛ける。
「うん。言葉が足りないですってカノンが言ってたって伝えておいて」
笑いながら私も答えた。
つい北海道に気を取られてスルーしてしまったけど、さっきのメールの坂口さんの肩書、人類滅亡対策委員会って何よ。
対策委員会って最初に聞いたけど、その前に『人類滅亡』が付いていたのか。
物騒な部署名だな。
まあ、出向しているけど、私も人類滅亡対策委員会に所属しているってことね。
名刺を出す日が来ないことを祈ろう。
BOXの中身の確認に戻る。
化学薬品とか全然解らんわ。危険物も沢山ありそうだけど、処分して良いのかも解らないので結局保留。将来何か作るときに「ああ、硫酸が必要だった」とかなるかもしれないしね。何に使うのか解らないけど。
鉄とか金とか出てきたよ。これは必要だよね。この世界錬金術師とかいるのかしら。
機器類、殆ど解らないカテゴリだからスルーする。リフトとかあるけど使うの?
山登るときあったら便利? それより誰が設置するんだという話だよね。
トラクターとか出てきた。これは必要。異世界モノには必要。あーでも石油のあり方をやっぱり考えないと。
電車とか出てきたけど、今はまだいいや。
車は欲しいねー。ペーパードライバーだけど。
この世界って車ないよね。石油問題もあるし、やっぱり保留で。でもこんなに台数は要らないと思うの。
あ! 北海道といったら、農業だよね。じゃがいもとか大量にあるよね。
いっぱいあったけどトンで言われても解らない。
『じゃがいも1個』を出したら、1トン出てこられたら非常に困る。
んーでも、農産加工食品はどうしてこんなに少ないんだろう?
工場やスーパーとかにも沢山あると思うんだけど。どうしてだろう?
食料品や衣類なども随分少ない気がする。
もっと進めていくと、理由が分かった。
建造物フォルダを開くと、
一戸建ての住宅、長屋、共同住宅、日用品の販売店舗、百貨店、飲食店、食堂……
うわ、いきなり細かくなったな。
そういうことか。つまり建造物の中にまだ入ったままなのだ。
さっきの分解は、屋外にあった物を分解しただけなのだ。
きっともっと分解すれば個々に分かれるんだろうけど、全部分解したら収拾つかなくなりそうな気がするから、試しに一つだけ。
飲食店は絶対に分解したいよね。美味しそうなところは無いかな。
そしてフォルダを開けたことを反省した。
北海道には2万軒の飲食店があるらしいよ。ずらーっと出てくるが、この中からどれを選べと!
ちょっと共同住宅恐くなってきた。
多分アパート+マンションの軒数が出てくるよね。
そしてそれを分解すると、101佐藤家、102山田家とか続くわけだ。
101佐藤家を分解したら全て物になるの? キッチンとかリビングとかに分かれないよね。机の中の物も一個ずつ分解しないとならないの?
101佐藤家のリビングに飾ってあるマトリョーシカの中に、ダイヤの指輪が入ってたとしたら、何回分解しないとゲットできないわけ?
分類するのって私じゃないよね?!
北海道の分類だけで人生終わる気がするんですけどー。
一生この小屋から出られないのではないでしょうか。
とりあえず101佐藤家は忘れて、飲食店を探す。
カニ料理の料亭を見付けたので、ほくほく顔で分解を試みる。
何度か分解を続けた結果、食べ物レベルまでの分解に成功した。
これで毎日カニが食べられるぞーと思ったのだが、思ったよりカニ料理が少ない。生簀のカニは結構いるが、料理が少ない。
私のカニの刺身、カニの天婦羅、焼きガニに、カニの甲羅揚げ、カニの炊き込みご飯、カニ鍋、カニ寿司、カニ雑炊はどこ?
理由が解ってしまった。
飲食店は客のオーダーありきだ。
多分北海道コピーした瞬間、お店にいた客は一組位しかいなかったのだろう。時間帯が悪かった。
しかし客がいっぱいいても食べられていたらカニ料理は存在しない。他の客の食べ掛けなんて嫌だもんね。
つまり、生の食材は沢山あっても、客が箸をつける前の出来立て料理は殆ど無いのだ。
それはカニ料亭に関わらず、北海道全土の飲食店でも同じことだ。
大きなため息をつき、突っ伏した。もう起き上がる気にはなれない
「どうしたの? 具合悪くなった?」
ユイが戻ってきたようだ。
「いや、人生に絶望していた」
「なになに? 北海道の話?」
「うん、北海道の飲食店には美味しいごはんが無い! 海の幸山の幸が食べられると思っていたのに!」
「えー沢山あると思うよ? 北海道取り出すときに周囲の海もくっついている筈だから、魚とかもあると思うよ。遠洋は無理だけど」
「そうじゃないの。それは嬉しいけど、自分でカニ捌かないといけないでしょう。カニ捌くの面倒くさいんだよ。食べるとき無言になるどころの話じゃないよ。捌くときはその倍以上の時間無言だよ。私は誰かが食べやすいように捌いて茹でたり焼いてくれたものが食べたかった。でも出来上がった料理は、どの店にも殆ど無いんだよ」
「何で?」
「注文を受けない限り、料理人は作らないからだよ」
「そりゃそうだ」
「だけど自分で捌くのは嫌だ」
「わがままな奴め。異世界グルメは定番なんですけど」
「いや絶対無理だし。あんなに短時間で色んな料理作るほど手際良くないし、一緒に旅する大食漢のドラゴンの分まで大量に作るほど体力ないし、そのジャンルはもう飽和してますので私に入る余地はありません」
「カノン、この一ヶ月で随分と異世界アニメに馴染んだみたいだね」
暇だったからなー。
「それと分解って超面倒。お店一軒ずつ分解して、冷蔵庫や戸棚や中身の入っているものは、それごとに分解しないとならない。冷蔵庫の中に箱があって、その中にタッパーがあったりすると、延々分解しないとならない。それと出たものを分類してタグ付けして、不要なものをゴミ箱に入れなければならない。逆に分解しすぎると、容器と粉や液体に分かれてしまったり、下手すると分子レベルまで分解されてしまう。絶対北海道の分解だけで、私の今回の人生終わると思うんですけど」
「それで突っ伏してたんだね」
「うー無理―」




