13*北海道貰いました
「おはようー」
動画見ながら朝食を食べていたら、いきなりユイのドアップになった。
「おはよう。びっくりするじゃないか」
「ちょうどいいところだった?」
「大丈夫。それよりユイに聞きたいことがあるんだけど」
「なーに?」
「なぜ私に、転生特典のチートスキルが無いのかな?」
「さてはお主、異世界アニメを見たな」
「みんな貰ってるのに、なぜ私だけ言葉も独学だし、魔法もまだ使えないの」
「みんなって誰だよ。その人たちは運営の管轄じゃないと思うんだけど。他の会社の転生と比較されてもねー。小屋をあげたし、物資も用意したし、転生体も良いものを用意したよ。十分ポイント高いと思うんだけどなぁ」
まあごもっともか。日本の食べ物も手に入るし、ネットも見られる。
今のところ魔王倒せとか言われてないし、ダンジョンの最下層に落とされてもいないので、他の人たちより条件は良いのかもしれない。
今のところはだけどね。この先何が起きるか解らないよ。
「でもドライヤーは何とかして欲しい」
「ああ、あのコード振り回して武器になってるやつね。こっちで見てて笑った」
「見てたんなら何とかしてよー」
「もう手配かけてるから、後でね」
「あ、チートっぽいのあったね。アイテムBOXありがとう!」
「あの荷物は運営にあるカノン用の倉庫に入っているんだよ」
「え? そうなの?」
亜空間とか異空間とかじゃないんだ。
「うん、広いからいっぱい入るよー。温度管理もされてるし、時間経過も遅いから、100年たっても腐らないと思う」
「熱いもの入れたら、冷めるのにどの位かかる?」
「さあ? 100年冷めないんじゃないの?」
「そりゃチートだわ。でもフォルダ名固すぎない?」
「総務省の日本標準商品分類をベースにしたから。自分で解りやすいように変えてもらっていいよー」
「すごいところ参考にしたな。でも全部直すの面倒だから、少しずつやる……」
やる気無くなってきたな。結構たくさんフォルダあったからキツそう。
「カノン、体の調子はどう?」
「うーん、ちょっと慣れてきた。昨日より楽」
「……あ、そう。じゃあ、30分位したらライラさん呼んでくるね」
真顔になったユイがビデオを切った。
仕事かな? 朝早く大変だね。
ドライヤーごときで時間を取って申し訳ないです。
中断していた動画の続きを再生して、勇者が魔王にコテンパンにされるのを見ながら、朝ごはんの続きをする。
今日は中華粥だ。ジョージ最高。おなかに優しいのいいね。
冷凍庫に肉まんや焼売もあったから、飲茶もできるね。ジョージありがとう。
片づけしてから、BOXの中の雑貨を色々取り出している間に、ライラ先生のローマ語講座の時間になった。
ノートとペンもスタンバイしたので、やる気ですよ。文法は地球のイタリア語に似ているが、発音が結構違うのがネックだ。
今日はレインディナのことを色々聞いた。やっぱり楽しい街らしい。いいねー夢が広がるよねー。
午前はローマ語の勉強、昼寝、午後はタブレットで第7の自習、ユイとお喋りしたり地球の動画やゲームしたり、優雅な引きこもり生活が一ヶ月続いた。
毎日仕事に行かなくても良い生活っていいねー。
一ヶ月も引きこもりなんてあり得ないと思ってたんだけど、案外快適よ。
アメリカのドラマにはまってしまったので、あっという間の一か月だった。シリーズ全部見終わるまで半年はこのままでもいいと思うな。
体は大分慣れてきた。全然動いていないので、寝る前にストレッチしている。
その程度でカロリー消費できるとも思えないが、この体太りにくいといいな。まだ15で成長期だし、大丈夫だと思いたい。
でも地球時代、16歳で10kg太ってその後戻らなくなったんだっけ。まずいまずいまずい。
ストレッチ始めようかと思った矢先、タブレットから音がした。
目をやると、メッセージが届いたようだ。誰かの誕生日はもういいよ。
日本G坂口より
『BOXに入れておきました』
おお、坂口さんだ。久しぶりー。なになに何かくれたの?
メッセージを開いてみる。
カノン様
お疲れ様です。
一ヶ月たちましたが、その後お体はいかがでしょうか。
ナビ担当からは驚異的な順応力だと聞いています。
外に出られる日も近いかもしれませんね。
さて先日、地球で北海道が爆発しました。
移住計画に役立つかもしれないので、こちらで引き取りました。
アイテムBOXに北海道1個入れておきましたので、お好きにお使い下さい。
使い方などご不明な点があればナビ担当にご相談下さい。
よろしくお願いします。
人類滅亡対策委員会 日本グループ
マネージャー 坂口翔吾
「え?」
もう一度読み返す。
「アイテムBOXに北海道1個入れておきました……は?」
「ユイーーーーー!」
タブレットに向かって大声で叫ぶ。
「うわー、うるさいうるさい、どうしたー?」
「え?え?え? 北海道爆発したって何?」
「あれ、何で知ってるの? その手のニュースは閲覧できない設定だと思ったけど」
やっぱり情報規制かかってるのね。
チャイルドモードかよ、って、そんなことはどうでもいいけど!
あ、BOX見ないと。BOX。
フォルダ何になるの? 総務省の日本標準商品分類では、北海道はどれに分類されますか?
心配するまでもなく、フォルダ外の一番上にドドンと『北海道 1個』とあった。
いやいやおかしいおかしい。
北海道って1個って数えるものなの?
いくら倉庫が広いって言ってたけど、北海道なんて入る大きさなの?
だだっ広い部屋に、北海道がポツンと置かれている姿を想像したよ。
それより北海道爆発した件を確認せねば。
爆発したってことは、あの形で収容されているわけじゃないのかな。木っ端みじん? うわー。
「BOXに北海道1個入ってるんですが。どういうことなの?」
「あーそういうことか。こっちで引き取りましたって言ってたわ、この間」
こっちの焦り具合に対し、ユイは至って平静な顔付きだ。
「まーとにかく落ち着いて。北海道が爆発したわけじゃなく、羊蹄山が爆発したの」
「羊蹄山?」
「札幌の南西にあるニセコとか洞爺湖に近い山でね。千年噴火してなかったから油断してたんだけど、最近噴火しまして。最初は小さな噴火で被害も然程じゃなかったんだけど、丁度時期が悪いことに巨大台風が北海道に接近して。不幸が重なったよね。大噴火と台風が一度に来た。ヤバいのは毒性のある火山ガスで、大量の軽石と共に台風に乗って一番人の多い札幌を襲ったの」
「ぎゃー大変じゃない! 被害は? 北海道壊滅ってこと?」
「さすがに麓で逃げ遅れた人に被害は出てしまったので、死者7名負傷者43名」
「え? あ? もっと大変な状態かと思った。被害者には申し訳ないけど思ったより……」
ほっとした。でもそれで、北海道貰ったってどういうこと?
「一ヶ月前から地震や小噴火が頻発していたので、政府も大噴火に備えて警戒していた。こっちでも北海道コピペして調べたら内部がかなり不味いことが解ったので、政府高官や気象庁長官や学者など偉い人たちに、北海道ヤバいから脱出するようにと意識下で圧力を掛けた」
「神託ってやつ?」
「いや、単なる夢枕。危険映像を夢に流して、起きた瞬間に『輸送対策を大至急立てなければ!』と思わせるようにした」
「お告げじゃないんだね。運営こええ。でも伝えてくれてありがとう」
「運良くというか運悪くというか、物凄く歩みの鈍い台風で、北海道上陸までに一週間時間を稼げたのね。通り道の本州には結構台風被害が出たんだけど、それは置いといて北海道の話ね。政府も災害時の輸送プランは持っているんだけど、札幌直撃はまずかった。札幌と周辺300万人脱出計画だもん。さすがに想定外」
「300万人かー、暴動が起きるね。パニック映画にならなかった?」
「ホント大人しい日本人で良かったよね。みんな大人しく並んでくれてたよ。騒いでいたのなんてほんの少し」
「国民性!」
「新幹線・特急・輸送艦・客船・飛行機・バス、あらゆる輸送機を北海道に集約させて、ピストン輸送で本州に運びまくって300万人脱出完了」
「すごい。グッジョブだね」
「台風収まって一ヶ月ほど待てば、羊蹄山近辺以外は戻れると踏んでいたみたいだけど、火山ガスの量が半端じゃないので、しばらくは無理らしい。噴火活動はしばらく続き、大規模地震や近くの山も連鎖して大変危険な状況になることが解った。ガスが酷いので多分5年位は立ち入り禁止だよって、また偉い人に夢枕で圧力をかけてある」
「5年かー現地大変だね」
「自然災害だし、運営が手を出すか上は揉めたらしいけどね。ただ300万人は結構な数だから、なるべく手を出さないという方針で夢枕だけ認められたらしい」
「そっかー。命だけでも助かって良かったよね」
「それで調査のためコピーした北海道が余っちゃった訳よ。土木部の方は小さい島は要らないって処分しようとしたから、坂口さんが貰ってきたらしい」
北海道って小さい島だっけ? まぁ地球レベルで考えれば小さいんだろうけど。
私ははーっと大きなため息をついてから大声を上げた。
「そんな大変な状況を『北海道爆発しました。BOXに北海道入れておきました』だけで説明済ましちゃう坂口さんって何?!」
「そうだよ! 説明を私に丸投げすんなよ!」
「北海道を1個と数えていいのか! あ、北海道のコピーは火山ガスとか大丈夫なの?」
「危ないのは除去済だから問題ない」
「じゃあ、使えってどう使うの? 使い方はユイに聞けって書いてるけど」
「何で私に押し付けてるの? 後で文句言っておかなきゃ」
「一応上司なんじゃ……」
「関係ねーっす!」
ユイさん頼もしい強い。私はユイの味方だよー。
やっとタイトル詐欺にならずに『北海道貰いました』
北海道にお住まいの皆様、不穏な話でお気を悪くさせたらごめんなさい。
これから北海道グルメもたまに登場しますので、楽しみにしていてくださいね。
北海道まるごと持ってるなんて、全人類の夢ですね。
興味持ってもらえたら、ブックマークして頂けると嬉しいです(*^^*)
北海道欲しいなーと思ったら、ぜひまた遊びに来てください。




