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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬
第一部

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121/122

119*年を取ると坂道が辛い

 小型と中型ばかりだったけど、30匹位いたので時間がかかった。

 来るならまとめて来いよ、バラバラになっていると時間かかるだろう。

 ちょっと大きな口を叩いてしまった。嘘です、反省してますから、来なくていいです。


 20分後に戻ってきたら、ギルド長たちはまだ狭い部屋の手前だった。

「おーカノン君、大丈夫だったか? 魔獣仕留めに行ったって聞いたけど」

「大丈夫でした。30匹位だったので」

「そっか。それなら余裕だな」


 ギルド長たちは昨日の話の500匹が頭にこびりついてるので、30匹を何とも思わないようだ。

 ハンターやギルド職員たちが「30匹? 余裕?」と口々に話してオロオロしている。

 大丈夫だよ、小型と中型だけだもん。


「いやあカノンちゃん、本当に遺跡だねー。凄いもの発見しちゃったねー」

 またチャラ男が手をつないで来ようとするので、思い切り振り払う。それなのに全く意に介さず、すぐくっ付いて来る。

「ウザっ、くっ付かないでください」

「人が多いから狭いじゃないか」


「そっち側いっぱい空いてますよね! そうだ、下の方はまだいいけど、この先20人も入ると危ないと思いますよ」

「そうだねー。少人数で分けて行こうか」

「この先広い空間が多いので、柱とか建てて補強した方がいいでしょうね」


 崩落して押し潰されたときのために、帰還キーホルダーはしっかり持っておかないと。

 一人だけ助かるのも心苦しいけど……と思ったが、こいつだけは私に触れている可能性が高いので一緒に帰還できるかもしれない。それはそれでめっちゃ腹立つな。

 悪意が無いと保護膜のポヨンが発動しないらしいけど、ターゲット設定出来るようにして欲しい。


「壁画の調査は時間がかかると思うので、先を急ぎませんか。まず今日中に一通り見学しましょう。調査は後日」

 みんな同意してくれたので、小さい方の遺跡部屋に入る。

 狭い部屋なので少人数ずつ入る。


「うわー何だこれー」

 声を上げる者、放心する者、人それぞれの反応だ。

 誰かが箱の蓋を開けて歓声を上げた。よくそんなに簡単に開ける勇気があるな。

 さっきのハンターの一人だった。やっぱり危険には慣れているのだろう。私にはとてもとても無理だ。


 チャラ男も好奇心で走って行き、私の手をようやく離してくれた。もう一生戻って来なくていいです。


 心外だが、チャラ男は意外と話が通じるし、私の意を汲んでくれることがあるし、一緒に悪だくみもしやすいし、ビジネス相手として考えると、ギルド長たちの中では一番話しやすい。ボーナさんよりも楽だ。

 だが、他の行動で全て無しだよ。あっち行けー!


 財宝をこのままにしておくのは不安だとなり、箱はウベール冒険長が預かることになった。


「この道ずっと登り坂で20分位歩きます。こっちの登りは然程急じゃないです」

 半分位はここに置いて、10人程で向かう。ギルド長たちは勿論すぐに見たいようなので、先発隊だ。


 色々喋りながら歩いていた一行だったが、次第に口数が少なくなり最後には無言になった。疲れたらしい。過去には歴戦の勇士だったかもしれないが、今はデスクワークが殆どのおっちゃんたちだ。

 この程度で疲れるようだと、あの急坂は無理だぞ。


 分かれ道に辿り着いた。

「ちょっと待っててください」

 索敵を掛けると上の部屋に小型魔獣がいたので、先に行って仕留めておく。

 どこか外からの通路があるみたいだ。

 戻ってきたら、みんなへばって床に座っていた。


「そこを降りると例の遺跡なんですが、急坂で辛いので、先に上の部屋に行きましょう。広いので休憩するにもそっちがいいと思います」


 立ちたくないようだったが、何とか立ち上がって私の後ろを付いて来る。

 チャラ男が私にもたれかかろうとするので避けた。お前は若いから元気な筈だ。


 少し歩くとすぐに広い部屋に着いた。何も無い空間なので、天井に光魔法を飛ばしておく。


「さっき魔鼠がいたのでそれだけ注意してください」


 いくら疲れていてもさすがに魔鼠にやられることは無いだろう。

 沢山食料を持っている身として、クッキーと飲み物を配って歩く。甘いものが苦手な人には、お煎餅を渡す。


「どこかに魔鼠が入って来る穴がある筈なんですよね」

 壁を探すが見付からない。


「カノンちゃん見付けた、あそこだ」

 チャラ男が立ち上がって、壁の一角を指差した。

 遠目には解らないが、近くでじっくり見ると確かに穴があった。


「えー凄い、よく見つけましたねー」

「もっと褒めて」

「どうして解ったんですか?」

「風の流れを探知したんだ」

「どうやってやるんですか?」

 しばらくチャラ男の教えを聞いて、私も実践してみる。なかなか難しい。


「練習すれば出来るようになるよ。頑張って」

「はい、頑張ります」


 さすが魔法ギルド長。こういうところはちゃんと先生っぽい。いつもこうだといいのにと思ってたら、チャラ男の手が私の腰に回っていた。


「ちょっと!」

「授業料授業料」

 現代日本ならセクハラで捕まるわ。

 しばらく休んだので、他の人たちも回復したようだ。


「先に出口に向かいましょうか。私は反対のルートでこっちから入って来たんですが」

 道を進むと封鎖した出口に着いた。


「誰も入って来ないように土魔法で封鎖しています。特に何も無いので戻りまーす。最初に来たときはこの道に魔鼠や魔蝙蝠などの小型魔獣が沢山いました。そしてさっき休憩した部屋には魔獣の代わりに大量の魔石が落ちてました。それが元々魔獣の死骸だったとすると、ここに小型魔獣が1,000匹ほどいたことになります」


 何だかみんなゾワゾワした気持ち悪そうな顔になる。気持ちはよく解るよー。


「あっ、そのとき拾った魔石や討伐した魔獣は私が貰っちゃっていいんですか?」

 ウベール冒険長に聞く。


「ああ、それは君の物で問題ない。但し、珍しい物ならギルドで買い取らせて欲しい。昨日の魔虎とか欲しいな」


「虎って食べられるんですか?」

「剝製にしたがる貴族が多いだろうな」

「ええー」


 剥製を愛でる気持ちは解らない。剥製があった夜の学校だけでも怖かったのに。

 おまけに精悍な顔つきの虎ならともかく、魔獣になった凶悪な顔の魔虎だ。ウベール冒険長だって間近で見て気絶しかけただろうが。


「さっきの宝石も私が取っていたら私の物になったんですか?」


「うーん、そこは難しいな。この後揉める内容になるから保留にさせてくれ。冒険者ギルドはこの土地を管理する州や領主の物だというし、魔法ギルドは遺跡は国の物だというし、発見者は発見した者の物だという。おまけに君は両方に所属しているから、どちらかが取り込むことも出来ない。三分の一が一番良い解決法だが、そうもいかないだろうな」


「なるほどー。私は宝石は要らないけど魔石が欲しいって、決める上の人に伝えておいてください」

「魔石はもう千個も拾ったんだろう?」

「いいえ、これから行くところに沢山魔石があるんですよ。……では皆さん行きましょうか」


 十分休憩も取って、さっきの分かれ道にやって来た。

「ここの坂がかなり急です。下りる方は何とかいけると思いますが、上りは辛い方もいると思いますね。洞窟に傷をつけてもいいならロープ張りますが、どうしましょう」


「どれどれ、ちょっと見てくる」

 チャラ男が先行して坂を見に行った。まだ若いので膝は平気だろう。

 しばらくしてゼーゼー息を吐きながら戻って来た。


「おじさんたちはきっと無理だ。僕も途中までしか降りてないのに、このザマだ。前転して坂を転げ落ちるかと思ったよ。階段を作った方がいいと思うが、時間がかかるからまずはロープにしようか。カノンちゃんロープ持ってるの?」

「持ってます」

 何故か沢山持ってます。


 エスカレーターとか設置したいけど、動力源どうするんだと思うし、相当重いだろうから洞窟耐えられないだろうね。

 問題点がクリア出来たとして、エスカレーターを「祖父の形見です」と言うことを考えると笑えるな。


 一本のロープじゃ辛いので、間にポールが沢山ついたロープを取り出す。

 土を掘ってポールを差し込むと、チャラ男が土を被せて固めていく。流れ作業で完成した。途中にいくつかあった横穴にも特に何もいなかったので、土魔法で全部埋めた。


 ロープに保護膜を掛けて、防護と劣化防止の魔法を付与しておいた。

 浄化もしておけば、魔獣避けにいいかもしれない。浄化も追加した。


「完成です。急坂は変わらないけど、ロープはしっかり掴まっても動かないようにしたから大丈夫です。では頑張って行きましょう」


 索敵に反応は無いが、魔獣の危険性を考えて、私が先行する。

 おおっ、両手でロープを掴むととても下りやすい。いいねいいね。


 下に着いたので光魔法を打ち上げておくと、坂道の壁にも緑のキラキラが見えた。

 と云うことはさっき柱を埋めるために掘った土にも入っているかな。BOXの中から取り出すと、そこにも緑のキラキラがあった。おお、ラッキー。またこっそり仕舞った。


 2人目、3人目、下り坂で勢いのついたおっさんたちが、コロコロと部屋に落ちてくる。

 みんな天井の緑のキラキラに目を見張る。


「これは何なんでしょうね」

「これが魔石です。どなたか何の魔石か知らないですか?」

 誰も見たことが無いらしい。意外と簡単に解ると思ったのに残念。


「あ、そうだ。先に白状しておきます」

 部屋の一角にみんなを呼んだ。

「ここだけ色が違うんですが、削ったのは私です。一体どの位までキラキラが続いてるんだろうと、気になって1m位掘ってみたんですが、ずっとキラキラの石でした」


「1m以上あるのか、一体何なんだ」


「崩れたら困るので別の土を埋めて補強してあります。調査のときに疑問に思うと困るので、早目に白状しておきました。沢山あるので許してください」


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