114*ジェマをBOXに入れる
三毛猫小屋に着いたので、帰還先は間違いない筈だ。
索敵をかけると、ジェマが起きているようなので、2階のジェマの部屋をノックする。
「あ、お帰りなさい!」
すぐにジェマが顔を出した。血色が良い。
「ただいま。体は大丈夫そうかな」
「昨日より元気です。アリッチェにいるときとあまり変わらないです」
「良かった良かった。ランチ食べるけどジェマも食べる?」
ちょっと早い時間だけど、朝からバタバタしてたのでお腹が空いた。
「はい、食べます」
またおにぎりがいいと言われたので、おにぎりと豚汁セットにした。栄養が偏らないように副菜も出す。
ジェマは嵌ったらとことんそればかり食べるタイプだな。まあ、気持ちは解る。おにぎりは具材が色々あるから飽きないしね。
時々塩分過多じゃないかと心配になるが、12歳だ。成人病の歳でもあるまい。
食べながら、昨日からのことを詳しく話した。
「うわー、相変わらずカノンさんは凄すぎます」
「こっちに来てからトラブルメーカー属性が付いちゃったみたい。森に行くと何か拾ってくるらしい」
「私も遺跡見てみたいです」
「あーそうだねー。魔素に慣れたし、魔獣も殲滅したし、大丈夫かな。ちょっと行ってみる?」
「いいんですか?」
「この小屋も洞窟の入口の傍に場所移動したいし、夕方まで暇だし。ただ大きな部屋はかなり遠いから近くの小さい方だけね。大きい部屋に行くのは、急坂があって大変だから」
「はい。そっちも行きたいけど、多分今の体力だとカノンさんについていけないと思います。残念ですが諦めます」
実際そうでも無いけどね。腕力ならジェマの方が強そうだ。ただこの体は疲れないと云うアドバンテージがあるので、ズルをしている。
「それで明日明後日はギルド長たちを案内しないとならないから、市場休んでこっちにいるんだけど、ジェマはどうする? アリッチェ帰るなら送って行くし、ウベールで遊びたいなら街に行くよ」
「ここでいいです。DVD見てます」
船舶訓練DVDの他にも、アニメのDVDも送られてきて夢中で見ているようだ。アニメはお姫様系や名作劇場の類だ。
ジェマには翻訳アプリのチェック作業と云う仕事が運営から与えられているので、それの一環だ。
私もこっち来た頃ずっと小屋で海外ドラマのDVD見てたし、ハマる気持ちはよく解るよ。
「じゃあ小屋動かしてくるね」
と、外に出る。
小屋の保護膜やプロジェクションマッピングはそのままで、ジェマも小屋に入れたまま、小屋をBOXに仕舞た。
2km程度なので走った方が早そうな気がするが、ここはオフロードバイクだろう。
森の入口といえど、整地された舗装道路がある訳ではないので、狭い獣道があるだけだ。
洞窟の入口まで走っていくと、すぐに昨日の赤い印を見付けた。
この辺りは草がボーボーで、これから調査隊が沢山入って来ると邪魔になるだろう。辺り一帯を草刈りして整地される可能性があるので、もう少し山を登ったあたりに小屋を出して設置した。
火曜までは設置しておくが、それ以降はここに来る必要があるのかは不明。
浅い森ならジェマの魔獣討伐訓練にもいいかもしれないから、ウベールにいる間は置いておこうか。
小屋に入って、玄関に拠点登録をし直す。「ウベール洞窟」
「あれ? 忘れ物ですか?」
「もう小屋を洞窟の傍に動かしたよ」
ジェマがこっちを見ながら首を傾げる。
「ジェマにとっては一瞬だったと思うけど、小屋ごとBOXに入れて、バイクで移動してから小屋をまた出したの。15分位たってる」
「うそっ」
「本当だよー。動きやすい服に着替えておいで。洞窟に行こう」
「あ、はい、解りました」
少しして戻って来たジェマはジャージ姿だった。船の訓練のときはジャージなので、動きやすい=ジャージになっているらしい。
まぁ、間違いないよね。ジャージは動きやすい。ただこの辺りの人には馴染みが無いから、ジャージ姿では誰にも会えないが。今は誰もいないので問題なし。
明日明後日どんな服装をしようかな。女性冒険者の服装を真似ようと思ってたんだけど、滅多にいないので参考にならない。
女性はロングスカートが基本だが、山道でスカート穿く訳にはいかないので、地味な山ガールルックでいいかな。パンツの上からお尻が隠れるミニスカートを穿こうか。色は黒系でかなり地味な山ガールだ。
今はジェマしかいないので、どんな格好でも良し。ジャージのジェマと一緒に出掛ける。
ドアを開けると、風景が若干変わったことにジェマも気付いたらしい。
「本当だ。前とちょっと場所が違いますね」
でも同じ森なので、微妙な変化だよね。ジェマが前の景色を覚えていただけ凄いと思う。
「足元滑るから気を付けてね」
「立入禁止って書いてますよ」
「私が書いたからいいんだよ」
土魔法で固めたところを取り外し、脇に置いておく。
周囲と洞窟の中の索敵を行い、魔獣の気配は無かったので、安心してジェマと一緒に中に入った。
天井に光魔法を浮かべる。
「わぁ」
ジェマが声を上げるが、ここは少し広いだけのただの土穴だ。
「こっちだよ。魔素は大丈夫かな。頭痛は吐き気は平気? 具合悪くなったらすぐに言うんだよ」
「大丈夫です」
眉間に皺は寄っていないので、大丈夫そうだ。
自分の動きと共に、天井の光魔法も一緒に移動させる。
道に入るとすぐに壁画が現れた。左右の壁に絵が描かれている。
「これが壁画。何を描かれているのかよく解らないけどね」
「本当ですね。これは馬っぽいですね。馬に人が乗ってるのかな。こっちは皆で何かを押しているみたい」
「調査隊がいずれ何が書いてあるのか解明してくれるよ。この道ずっと絵が続くんだよね。そしてしばらくいくと、部屋に着く」
結局子供の落書きでしたーってこともあるかもしれないけど。
こんな遺跡に入るのは初めてなので、実は私もワクワクしている。
ジェマも時々「あっ、鳥!」「お姫様かな」「ネコさんっぽい」と呟いている。
「さあ、部屋に着いたよー」
「何ですかこれー」
お、びっくりしてる、びっくりしてる。
壁画はさっきとあまり変わらないが、床の魔法陣と、部屋の真ん中の大きな箱。
天井のキラキラが無いのは残念だ。
やっぱりこっちを先に見るとおおっと思うね。あっちの大きいのを先に見てしまうと、ショボさを感じてしまうのだが。やっぱり明日の案内もこっちからだ。
中央の箱にジェマが近寄って行ったので、箱の蓋を開けて中を見せてあげた。
ミイラや魔獣はいない。魔石は運営が持って行ったので、入っているのは金と宝石だ。金はちょっといびつな金貨で、宝石は色取り取りの石が入っていたが、カットの技術はあまり高くない。丸く磨いたカボションが多い。金貨から年代とか解るんじゃないかな。
ジェマは初めて見たお宝に口をポカンと開けていた。
でも確かに内容量が少ない。やっぱり魔獣とか入っていて風化した可能性があるな。
あれ? 少ないと私が盗んだ疑いが持たれるんじゃない? 盗んでないからね!
んーでも、運営が魔石盗んでるし、そもそもこの箱コピーで、現物は運営が持ってるし、私が盗んだと云っても過言ではないだろう。
まずいな、噓発見器にかけられたらめっちゃ動揺しそうだ。その前にチャラ男とかに見透かされそうだけど。
うぐぐ。私は盗んでないもん。盗んだのは運営だもん。
しばらく部屋を見て回ってジェマも満足したようなので、引き返すことにした。
「この先が広いんだけどね。転びそうな急坂だから道が整備されないと通るのが大変」
おっさんたちは大丈夫だろうか。
通路も狭いところあるし、筋肉ダルマとか通れるかな。
ゆっくり歩いて小屋に戻って来た。
「わーなんか不思議な感じの場所でした」
「そうだねー私も遺跡見たの初めてだからびっくりしたよ」
「カノンさんも初めてなんですか?」
「ただ石を積んだだけみたいな遺跡は見たことあるけど、昔の人が石を積みましたと聞いても感動が無いよね。壁画とか実際に見るの初めてだから感動した」
「魔法陣は何描かれているか解りました?」
「全然解らない。ユイたちが今頃頑張って調べてるよ」
「ユイさん凄い」
正確にはユイでは無くて分析部や甲田さんだろうが、全員ジェマに紹介する訳にもいかないのでユイで良い。
洞窟に結構長居していたが、まだ14時だった。
早くてもギルド長たちは16時頃までは来ないだろうから、ジェマと一緒におやつを食べながらまったりして過ごした。




