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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬
第一部

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110/122

108*ジェマの魔力修行

「貸家じゃなくて土地を探してるんだって? 私としては、防犯がしっかりした宿にでも泊まって欲しいところだが」

「カノンさんは魔法で家が建てられるそうです。お風呂付の家が建てたいそうで」


 お兄さんが横からおじいちゃんに話す。そういえば受付のお兄さんは、ずっと資料を抱えたまま立っていた。資料置いたらいいのに。


「はい、宿より安全な家を建てますのでご安心ください」

「そうか。待たせて悪かったな。じゃあ、物件を見せてやりなさい」


 お兄さんがやってきて、資料を広げていくつか物件を紹介してくれる。

 しかし家と違って間取図も無く、土地の形だけなのでどれがいいのかさっぱり解らない。


 おじいちゃんギルド長が、ここは治安が悪い、隣が飲食店だからうるさい、日当たりが悪い、大家の性格が悪い、などポンポン弾いていく。


 えーと、借りるのこっちなんだけど? と思うが、地元の人の意見を聞いた方が間違いないだろう。普通の不動産屋ならそんなこと教えてくれないもんね。


 中心部に近い方がギルドへ便利だが、その分門から離れてしまうので外に出るのは不便だ。場所もどっちがいいのかは何とも言えないな。


 眺めている間に候補が3つに絞られていた。いずれも治安が良いとされる区域にあり、割と近いらしい。単純に面積に応じて値段が変わっているようだ。希望ギリギリのサイズから、2倍近くありそうなサイズまで。どれも契約期間は2年間だ。


 タブレットで場所を確認して、周囲の写真を見る。どの土地も家を建てるには問題なさそうだった。

 一応この作業中は、私が手帳にメモを取っているように周囲からは見えているらしい。


「どれも問題なさそうなので、一番安いのにします」

 丁度ここから一番近いのが安いので良かった。移動は帰還魔法が多いだろうが、そうもいかないときも出て来るだろう。

 おじいちゃんギルド長の好意で、初期費用はまけて貰った。


 2年間で230万デナリだった。

 アリッチェの廃倉庫跡に比べると2倍以上だ。大きな街で中心に近いのでこれは仕方がない。殆ど住まない気もするが、将来的によく通うことになるかもしれない。


 契約書を交わして、色々と説明を聞く。

「もう今日にでも家を建ててしまって大丈夫ですか?」


「そんなにすぐ建てられるんですね。それじゃあ、現地にご案内しましょう」

「ありがとうございます。ギルド長もありがとうございました。来月引っ越した後ご挨拶に寄ります」


 10分位歩いて現地に着いた。ついて来たので、ギルドを出た後に右に曲がったか左に曲がったのかも覚えていないが、私には頼れるジェマがついているので大丈夫だろう。

 タブレットで見た光景が広がっていた。

 安いからだけではなく、隣も空地で小さな物置だけなのが良かった。高い外壁の四角い建物が建ったとしても、あまり圧迫感を感じないだろう。


 案内してくれたお兄さんにありがとうを告げても帰る素振りが無い。どうも家が建つところが見たいらしい。

 見ても面白くないし、埃まみれになりますよと言うと、ジェマと一緒に慌てて走っていった。


 この間も風で土埃はセーブしてたし、音も長時間続く騒音は無いので、近所迷惑と云うほどではないだろう。一時的に少し響くと思うので、ごめんなさい。


 先日と同じ要領で、雑草や小石を除去し整地を行い圧力を掛けて地固めする。

 うん、地味な光景だ。やはりお兄さんが見てても面白くなかったと思う。


 内側に外壁用の溝を1m掘り、BOXの中で先日の残りの石を外壁に加工しようとしたら、既に出来ていた。

 魂さんの建築チームが、先回りしてやってくれたらしい。


 確かに先日も、外壁加工した後に溝に嵌るように歪みとか補正して貰ったけどさ。

全部やらなくても良くない? 私がやろうと思ってたのにーと思ったけれど、プロが作った方が間違いないよね。

 そう自分を慰めながら、外壁をBOXから出して溝に落とす。

 完璧だよ、さすがプロの仕事。


 溝を内から外から埋めて固める。外壁の中に家と庭を配置して、保護膜を掛ける。

 外壁のドアは侵入されないように土魔法でロックしていたが、それだとジェマが一人で入れなくなるので、日本製の防犯に強い鍵にした。長期で不在の場合には土魔法で固定しておこう。


 完成したのでジェマを迎えに行く。ギルドのお兄さんは帰ったようで良かった。



 今日明日のミッションは、

 ①ジェマのボートの訓練

 ②拠点探し

 ③家を建てる

と、全て完了したので、残りはもう空き時間だ。

 お茶を飲みながら、作戦会議をする。


 その前にジェマに突っ込まれた。

「ウベールでは屋台はやらないんですか?」

「別にやってもいいんだけど、ここにいるの長くて1ヶ月位なんだよ。半年以内にレインディアに行かないといけないから」

「ああ、そうでした」


「大きな街だから観光したいし。ギルドの片付いていない案件で呼ばれそうだし。アイテムバッグとか魔キリンとかビタミンCとか。アリッチェに呼ばれることもあると思うんだよね」

「忙しいですね」


「あとウベールの南西にある森が、結構魔素が濃いらしいんだ。そこの傍でこの間みたいにジェマの魔力訓練するといいかもね。魔素に慣れたら、魔法の練習を始めたいね」

「あの頭痛いやつですね」

 ジェマは頭を押さえて泣きそうな顔をした。


「ああ、ごめん。辛かった? 魔法やめる?」

「いえ、大丈夫です! 頭が痛いのは最初だけだったので、耐えられます。その後魔法が使えるようになるなら頑張れます!」

 心配したが、思ったよりジェマの魔法への意気込みは大きいようだった。


「でも本当に魔法使えるかどうかは解らないからね。魔素に慣れても使えない人は多いし」

「それはそれで仕方がありません。まずは魔素に慣れるのが優先ですよね。カノンさん、今からその森に行きませんか?」


「え? これから魔素の訓練したいってこと? ウベールの街楽しみにしてたのに、行かなくていいの?」

「ウベールは来月いくらでも見て回れます。あ、でも、カノンさん行きたいところがあったらどうぞ」


 魔道具屋さん行きたいと思ってたけど、別に今日じゃなくてもいいし、ジェマのやる気を潰してはいけない。


 魔素に慣れさえすれば魔法の訓練は家でも出来るので森に行かなくても良い。

 家だと水弾とか土弾は撃てないけど、ジェマを私みたいな魔熊狩り専用魔法使いにする気は無いので、そっちはほどほどにしよう。

 火種とか飲料水とか浄化とか治癒とか、生活に役立ちそうな魔法がいいと思う。


 私も最初はそういう魔法を習っていた筈だったのに、どこをどう間違えた?


「解った。じゃあ、合宿に出掛けようか」

「行きましょう!」

 地図を見て森までのルートを確認する。

 車に乗り換えて1時間位で着きそうだ。


 森の名前はウベールの森だった。解りやすいね。

 エルゼダンテほどでは無いが結構大きい。高いところは標高800mほどあるらしい。もう登山だね。


 さすがにこの間みたいに森を走り抜けるのは無理そうだが、ジェマが家で頑張っている間、魔石拾いも兼ねて少し奥まで見に行こうかな。


 ランチを食べてから西門を目指す。

 アリッチェは門が2つしかないが、こっちは東西南北とあって、借りた土地は西門に近い場所にあった。

 またギルド証をちらっと見る程度で通してくれた。

 人目の無いところで車に乗り換え、森を目指す。


 車に乗るのもジェマは結構慣れてきたようだ。スピードを上げても怯えるどころか欠伸している。私も車に結構慣れてきた。


 あんなにノロノロ運転していたのに、今では50km/hも出せる。速くないじゃんと思うが、これは道の問題だ。街灯や信号も無く舗装されていない畦道で、どこから動物や人が飛び出して来るか解らないから、100km/hとか出せる筈が無い。50km/hでももう限界よ。


 魔素が濃くなって来た。前回のアールレイの森より濃い。あそこには魔獣も殆どいなかったが、こっちの方が多そうだ。エルゼダンテの森ほどではないが。


「だいぶ魔素が濃くなって来たけど、今のところ大丈夫?」

「はい」

 ジェマを見ると、眉間に皴が寄っていた。耐えられるけどちょっと痛いって感じかな。


 森に入ってすぐの辺りに新しい小屋を出して設置した。

 誰かに見られると困るので、保護膜かけてプロジェクションマッピングしておく。

 ウベールの森で拠点登録した。


「食べ物はー冷蔵庫にいっぱい入ってるから大丈夫だね。何でも食べていいからね」

「アイテムバッグにもおにぎりが入ってます」

「ちゃんと野菜も摂るんだよー」


 眉間に皴の寄っているジェマの前に、ネコのぬいぐるみを5個BOXから出した。


「わー、ネコさんだ」

「どれが可愛いと思う?」

と聞くと、ジェマは長く悩んでから三毛を選んだ。

「これが一番可愛いと思います」

「一つじゃなくてもいいよ」

「いいえ。これが可愛いです」


 残りを仕舞ってから、三毛のぬいぐるみをジェマに手渡した。

「ジェマのベッドに連れて行って」

「え?」

「頭痛いときぎゅーっとすると、少し和らぐからね」

「本当ですか?」

「うん、今日はずっと傍にいるように」


 信じたのか信じていないのか解らないが、ジェマはネコのぬいぐるみをぎゅーっとしている。


 もう12歳だが、まだ子供に見える小さなジェマ。母の温もりも覚えておらず、父も2年前に他界して一人で生きてきた。

 この世界の平民の子供は、こんなフワフワしたぬいぐるみを持つことなんて無いだろう。

 ジェマに気付かれないように後ろからそっと治癒魔法を投げておく。

 気休めにしか過ぎないが、頑張って。


 玄関にも目印のでかい三毛猫を置いておいた。

「遅くなりそうだったら、また森の中で小屋建ててそっちで寝るから、ジェマも気にしないで寝ててね。ネコさん、ジェマを頼んだよー」


「カノンさんも気を付けて下さい」


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