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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬
第一部

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108/121

106*帰還魔法のキーホルダー

 うちの子のジェマと美味しい夕食を食べた後、運営からプレゼントが届いていたので開けてみる。


 やったー届いたー!

 待ちに待った帰還魔法の魔道具だ。


 前回作動はしたけど、床に手を付いて魔力を流さなきゃならなのでしんどいとか、行きたい場所の数だけ魔法の絨毯を敷くから家中絨毯になるとかだったので、改良を依頼してあったのだ。


 さてさて絨毯は小さくなったかな。

 ウキウキ箱を開けると、絨毯が無かった。

 双方向アイテムバッグで保管場所に貼る小さな魔法陣シールに変わっていた。


 でもこんなに小さい魔法陣にしゃがんで魔力を流すのは余計に大変なのではと思ったら、前とは使い方も変わっているようだ。


 小屋の床に魔法陣シールを貼り、「アリッチェ」と言って魔力を流すと、『拠点1アリッチェ』として登録される。


 飛ぶときにどうするのかと思ったら、キーホルダーみたいな物があった。

 少し大き目のキーホルダーに、小ぶりなプレートが10個ぶら下がっていた。そのうちの一つに『拠点1』と書かれていた。

 キーホルダーの中心とアリッチェのプレートを重ねて魔力を流し、『アリッチェ 帰還』と唱えれば帰還できるらしい。


 実際に試してみることにした。


 外壁の外に出て索敵で周囲に誰もいないことを確認する。

 もうこっちの土地は私が借りている場所じゃないけど、少しだけ貸してね。


 隣の空地にもう一つの小屋を出して、見付からないようにすぐに保護膜で囲った。こっちの小屋にも玄関に拠点登録して、アリッチェ2とした。

 小屋の中で、キーホルダーを握って「アリッチェ 帰還」と唱えた。

「成功!」


 でも小屋1のコピーだから内装が同じで、今どっちにいるのか解りにくい。

 ウベールに行っても同じ内装は飽きるので、小屋1と小屋2の内装は変えた方がいいな。内装選ぶのに物凄く時間かかりそうだし、自分のセンスにも自信がないから、今度魂さんたちに頼んでおこう。


 とりあえず小屋2の玄関先に大きなネコのぬいぐるみを置いておいた。今はこれでいいや。

 そして何度も往復して繰り返し帰還魔法をチェックした。


「やった―」

 声を上げたらユイが反応した。

「どう? 大丈夫そう?」


「大丈夫っぽい。隣から隣に飛んでいるだけだから、都市間で本当に飛べるのか不安だけど。失敗して胴体がバラバラになったりとかしないよね」

「無い無い。失敗しても作動しないだけだから、その場に留まるだけ」


「失敗ってどういうときに起こるの?」

「基本あり得ない筈だけど、飛び先が存在しないとかかな。今登録していない拠点3のプレートの魔法陣起動させたような場合や、拠点1が火事で燃えたとか」


「この小屋って火事で燃えるの?」

「保護膜かけておけば普通は燃えないけど、想定以上だと何とも言えない。隕石とかドラゴンとかマグマとか」

「ドラゴンいないし」


「解んないよ。地球にだって、地下のマントルの中にドラゴン住んでいるかもしれないじゃん。それがネス湖に顔を出したのかもしれないじゃん。それと、小屋の中で起きた火事は解らないよ。天ぷら油で着火位なら燃え広がる前に再生魔法発動するけど、カノンの魔力量で最大のファイアボール撃たれて平気かは検証していない。今度やってみる?」


「それで家が燃えるなら、私の頑丈ボディもさすがに燃えると思うけど」

「一度検証してみよう」

「いいえ、大丈夫です。変なことを聞いてすみませんでした」


「解ればよろしい。あとさ、外から帰還するのやってみた?」

「外から?」

「保護膜の範囲外からも飛んでみて」


 言われた通り、小屋を出て外に出る。

 まずは索敵だ。大丈夫、周囲には誰もいない。目の前で人が消えて幽霊騒ぎになるのは御免だ。


 キーホルダーを握って「アリッチェ 帰還」と唱えた。

 ネコのぬいぐるみが無いので、ここは小屋1だ。


「大丈夫だよ」

「何か気付いたことはない?」


「え?……あれ? 外からは帰還できない筈じゃなかったっけ? 魔法の絨毯のときは、行きと帰りの両方に絨毯敷かないとならないから、外で飛んだ後でそこに絨毯が残るからダメだって言ってたよね」


「そう。でも今回は手に絨毯を握っているのと同じだから、飛んだ後に何も残らない。つまり、拠点シール貼っていない場所からでも帰還できる。その逆は無理だけどね」


「わー。じゃあ今でも市場から帰還魔法で小屋に戻って来れるんだ!」

「いや、出来るけど、市場じゃさすがに人が見てるでしょう」

「そうだった。人のいないところまで行くと結構歩くな。歩いて帰って来た方が早いかも」

「使う前には必ず索敵を心掛けてね」

「解った」


「あと、カノンに掴まっていればジェマも一緒に飛べる筈だから試してみて」

「え、そうなの? 掴まるってどの程度? 何人まで可能?」


「触れていればOKな筈だけど、服の端っこ掴んだだけで一緒に飛ぶかは解らないな。手を握るとか腕に掴まるとかした方がいいよ。人数制限は特に無いけど、全員がカノンに掴まること想像すると嫌じゃない?」

「うん、めっちゃ嫌」


「それなら全員BOXに入れてカノンだけ飛んだ方が間違いないと思う」


 そっか、その手があったか。BOXに入れられた人は、一年十年経っていても一瞬らしいので、気付かないらしい。もう完全犯罪出来るよね。


 まあ私の場合は、運営に常時監視されているから、人の道を外れるようなことは出来ないだろうけど。


 ちなみに今BOXの一部をアイテムバッグで共有しているジェマとボーナさんのがま口バッグにも、人を入れることは可能だが、入れた瞬間に運営から押し返されるそうだ。操作ミスやちょっと好奇心で入れてしまうケースが無いとは限らないからね。



 それはさておき、帰還魔法の検証の続きだ。

 ジェマを呼んで、二人で飛べるのかテストを行う。


「……と云うわけで、帰還魔法のテストを行います。ジェマ、私の手を掴んで」

「え、えっと、よく解ってないんですが……」

「大丈夫、軽く握ってればいいよ。失敗しても隣の家だ」

 プレートを掴んで魔力を流す。


「アリッチェ2 帰還!」

 一瞬で移動した。ジェマが私に縋り付く。

「きゃー! びっくりした! 急に目の前にネコさんが!」

 大きなネコのぬいぐるみを見てジェマがびっくりする。

「可愛いーーー」


 あれ? もしかしてジェマは、自分たちが小屋を移動したのではなく、ネコがいきなり目の前に現れたと思っていないか?


「違うよ、ジェマ。外見てみて」

ジェマはドアを開けて外を見る。左右を見て首を傾げる。

「え? いつもの景色ですよね?」


「違うよ。いつもはドアを開けたら壁が見えるじゃん。壁のドアをもう一つ開けないと外が見えないでしょう?」

「そうだ! そうだった。壁が無くなった?」

「右を見てみて」


 ジェマは素直に右を見て外壁を確認すると、慌てて外に出て行った。

 右の外壁にドアが付いているのを見てから、こっちを見てむき出しの小屋がもう一つあるらしいことを確認する。

「ええ? どういうことなんですか?」


 混乱中のジェマを、小屋2の玄関に戻し、今度は「アリッチェ 帰還!」と唱えた。

「え? え? ネコさんは?」

「まーねー、ネコ気になるよねー。外見てごらんよ」


 ジェマはドアを開けて、今度は壁があることに気付く。

 壁のドアを開けてジェマを外に連れて行く。さっきと同じ景色があり、今度は壁がある方の前に立っていた。


 ジェマは涙声になって、私の手をギュッと握った。

「どういうことなのか全然解らないです。何が起きたんですか? ネコさんはどこに行ったんですか?」


 そのまま外を歩いて行って、小屋2のドアを開く。

「ほら、ここにネコがいるよ」

「ネコさーーーん!」


「解った? つまり、いつもの小屋の隣に、ネコがいる小屋を建てました」

「はい」


「いつもの小屋から魔法でネコ小屋に移動しました」

「魔法?」

「そう。そしてまた、ネコ小屋からいつもの小屋に魔法で移動しました」

「すごい! カノンさんってすごい!」


「いや、私じゃないよ。この魔道具だよ。ユイと仲間たちが作ってくれたんだ」

 手の中にある帰還キーホルダーを見せた。


「ユイさんすごい! これも秘密ですね」

「とりあえず秘密だねー。いずれ商品化されるかもしれないけど、これはかなり高額になりそうだ」

「なります! 絶対なります!」


「だよねー。じゃ、秘密で。いつもの小屋にもう一度戻ろう。アリッチェ 帰還」

 エフェクトも無いので一瞬だが、ネコがいない。戻ったようだ。


「ネコさん……」

 ジェマはネコ好きなのだろうか。


「ネコは多分明日また会えるよー。手伝ってくれてありがとう」

 明日はこの小屋をアリッチェに置いておくので、小屋2で寝ることになる。


 外に出て、小屋2を撤収して、魂さんに内装の変更を依頼する。


 今までは前世の私の部屋の家具が殆どだったので、自分としては落ち着くが決してオシャレじゃない部屋だった。

 魂さんの中には前世インテリアコーディネーターもいそうだから、コーディネート例を5つ位出して貰おう。


 これからエンジーナやレインディナに建てる家にも使えるし、家具なんてBOXにめっちゃくちゃ入ってるからね。


『よろしくお願いします』

 魂さんへメッセージを書いて、今日は早目に就寝。


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