↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
107/119

105*ローマの部長とチャラ男

 朝起きてタブレットを見ると、昨日のうちにボーナさんから、ビタミンCとお茶の受領書と入金連絡が届いていた。

 それと、ウベール商業ギルドへの紹介状ももう書いてくれていた。とても仕事が早い。


 ありがとうございましたの返事とべっこう飴を3つ入れておいた。

 飴だけ?と思うが、ボーナさんに商品をあげても義理堅くお金を払おうとするし、珍しい物だと商売の話になってしまうので、あげる物には気を遣う。


 中身が大したことない物だったとしても、パッケージや素材が気を惹いてしまう場合がある。商売人だよなあ。



 市場の帰りに、今日は魔法ギルドに呼ばれた。

 4日前に話したばかりなので、そんなに話が進展したとは思えない。説明書も渡したのに、一体私に何をさせる気だ。

 長くなると困るので、一旦小屋に戻ってジェマを置いてから、一人で魔法ギルドに来た。


 扉を開けるなり、「やっと来た!」とアルマさんに拘束されて、ギルド長室へ引きずられていく。

 アルマさんも馬鹿力キャラだったか。第7の女子は力強い。


「もうみんな待ってるんだから」

「え? みんなって誰?」

「失礼します。お連れしました」

 ギルド長の他に、男性が二人も部屋にいた。


 ドアの隙間から私だけ入れて、アルマさんは帰ってしまった。

 えー、待ってー。ジェマも置いてきてしまったし、私の味方はー。


「お待たせしました。カノン・スドーです」

 日本だったら名刺を配るタイミングだが、こっちには名刺が無いらしい。人の名前覚えるの苦手だから、名刺あると便利なんだよね。普及させようか。あっ、紙と印刷の問題があったんだった。


「カノンちゃーん、名前も可愛いねー。ほら座ってー、ここ、ここ」

 んんん?

 ギルド長はこんな喋り方したりしない。

 この能天気な軽薄な話し方は、聞き覚えがあるんですが!


 そっちに目を向けると、やっぱりー、ウベールで会ったあのチャラ男だ。

 ウベールの魔法ギルド長で、貴族らしく、奥さんが3人もいるのに女にだらしないと云うあの男だ。道理でアルマさんが速攻逃げる筈だ。


 アリッチェのギルド長の隣に逃げた。


「えーどうゆうことー。俺よりそんなごっつい方がいいって言うのー?」

 ギルド長は好みのタイプとは全く違うが、このチャラ男よりは100万倍マシだ。


 ところで、もう一人の男がいた。ずっと下を向いて、先日ギルド長に渡した説明書を読んでいる。私には興味が無いらしく、ちらと見ただけですぐ説明書に戻っていった。


「カノン、紹介する。こちらローマ本部の魔法研究部部長のガブリエラ・カタエーニ。ガブリエラ、この子が説明書を書いたカノンだ。解らないことがあったら聞いてくれ」


 ガブリエラさんがやっと顔を上げた。30過ぎ位、本部の部長ならもっといってるかもしれない。


「よろしく。魔法陣のここの記述は何て書いてるんだい?」

 説明書を指差して、早速聞いてきた。


「すみません。それはまだ解読できていない箇所で、動作には特別意味の無い記述の様に思えるんですよね。他にも余計な記述が多いんです。これとかこことか」

「ああ、私も気になっていたところだ」

「でも値を代入しているのに、使わないなんてことあるでしょうか?」

「やっぱり値を代入してるのか? そしてこっちに飛ぶんだな」

「そうなんです。でもただ回って戻って来るだけなんですよ」

「本当だ。やはり解らない」

「他の者が見ても解らないように、わざと不要な式を入れているのかもしれません」

「あり得るな。当時は魔法使い同士でも、魔法の盗用が多くあったらしいから」

「もしくは、この魔法陣は未完成で、この後別の動きがある予定だったのかも」

「ほう。それは新しい説だ。アイテムバッグがまだまだ進化する予定だったのかも。いいな、それは」


 ガブリエラさんは根っからの研究者のようだ。私に理解できる部分の質問で良かった。

 分析部の説明書読んでもチンプンカンプンだったもんな。

 プログラムフロー的なものなら何となくイメージ出来る。


「ねーねー、何で二人の世界に入っちゃってるわけー? ガブリエラも今日はそんな話する予定じゃないでしょう」

 チャラ男が前から喚く。


 そういえば知りたくもないけど、この男の名前を教えて貰わなかった。ついでに未だにギルド長の名前も知らない。

 この部屋の2/3の名前を知らずにどうやって乗り切ろう。両方ともギルド長なのがまた困ったな。

 ガブリエラさんだって今は覚えているけど、明日になったら忘れる自信があるし、既に苗字は覚えてない。


 確かにチャラ男の言う通り、今日は魔法陣の記述を勉強する会は止めて欲しい。こんなところから付き合っていたら、今日中に帰れるかも解らない。


 隣のギルド長を見詰めて仕切りを促すが、アイコンタクトが全く通じないらしく、じっと見詰め返された。


「えーと、今日呼ばれた理由は? 魔法ギルド内で話し合って方針を決めて頂くようにお願いした筈ですが」


「そうもいかんだろう。作った本人を紹介しておかないと。それにローマから人が来るなんて滅多にないんだから」


「そうですよね。月曜に話したのに、どうしてこんなに早くアリッチェに? もしかしてあの帰還魔法の魔法陣が作動したんですか? 航空機とかあるんですか? まさか飛行魔法とか?!」


 目を輝かせた私に、ガブリエラさんが顔を上げる。


「こうくうきって何ですか? たまたまレコンダまで出張で来てたんで、アリッチェに行って来いと言われただけですよ。そう言えばここにも帰還魔法の魔法陣あったんでしたね。あれは何百年も埃被ったままでしょう」


 ギルド長が目を逸らす。私も目を逸らした。


「まさかあなたの国には、飛行魔法が存在するんですか?」

 ガブリエラさんが研究者の目で、逸らした筈の私の目を見据えた。


「無いです無いです。うちの国は魔素が薄いので、みんな魔法使えないんです」


「それなのに上級魔法使いなんですか?」


 ガブリエラさんの襟元には、私より小さいバッジがあった。中級かな。魔法使えるのと研究者は別だしね。

 うちのギルド長は初級バッジ。魔法使えるのと管理職は別だしね。

 チャラ男は……上級かよ。一緒にされたくない。


「あーはい。インドからエジプトに来る船の中で教えて貰いました」

「え? そんな僅かな時間でですか?」

「いいえ、2ヶ月以上ありましたよ。それに、漂流した場所が魔獣の住む森だったので、命からがら逃げることで、上達したみたいです」


「カノンはとんでもない魔力量だぞ」

と、横からギルド長。

「伝説の大木を倒したしねー」

と、チャラ男。伝説って何よ、伝説って。

「エルゼダンテの森で伝説の魔熊も倒した」

 もう伝説はいいって。


「もういいから、二人とも黙って! 本題は?! 無かったら早く帰りたいんだけど」

 ギルド長をギロリと睨む。


「まあ、保管場所を選べるのはとてもいいと思うけど、これは保安上の理由からも魔法ギルド一択でしょう。今回初めて保管先がローマの魔法ギルドの中にあることが解ったけど、どこにあるかどう管理しているのか解らないので、これはガブリエラに調べて貰おう。その場所にまだ余裕があるなら、新しいアイテムバッグも保管するようにしよう。まずは保管サイズを選べるようにしたらどうかな。サイズが大きくなれば料金が高くなっても使いたい人は出てくる」


 話を進めたのは、何とチャラ男だった。普通に喋ることも出来るらしい。


「私もそう思います。禁制品を入れて町に入ったり犯罪に使われると困る。バッグに入れた物が魔法ギルドにあるなら、それを差し押さえることも出来ますね」


 私の言葉に、ニヤッと笑ってチャラ男が口を開く。

「今のアイテムバッグだって何を入れているか解らないんだ。保管場所が突き止められれば、色々と知ることが出来るだろう」


 うわっ、表面チャラ男だけど、中身は腹黒男だった。


「保管場所が手元にあると云うことは、持っている奴全員の秘密を押さえているのと同義だね」

「私はそんな目的でアイテムバッグを作ったわけではないですからね!」


「ふふん、カノンちゃんの秘密もすぐに解るよ」

「残念ながら私のバッグの保管先は別の国です」

 海外に口座があって、開示請求は受け付けませんって感じかな。


「まあ、集まった証拠の使用方法はまた別途考えるとして、アイテムバッグは容量が選べるだけでも需要は伸びると思う。あと本人しか使えないのはオプションとして入れられるようにしたらどうだろう?」


「本人が亡くなったり身体の自由が利かない場合は、家族が開示請求できる仕組みも欲しいです」

「それを本人が許可するかどうかも、契約時の選択に入れよう」


 チャラ男が話しながらメモを取っていく。

 私はオブザーバーの筈だったのに、気付けば何故か二人で留意点の洗い出しを行っていた。


 こっちのギルド長は座っているだけだ。

 ガブリエラさんは、まだ魔法陣のページから顔を上げない。

 何なんだ、この二人は。


 まあガブリエラさんは研究者だし、アイテムバッグの保管先を見付ける大きな仕事もあるのでまあいい。


 ギルド長は置物か? 熊の置物にして、冒険者ギルド長の部屋に持って行くぞ。


 双方向アイテムバッグに関しても、確認事項を検討していき、やはり第一弾は魔法ギルド内でテスト稼働するのが良さそうだと云うことになった。


 今日の話し合いはこれで終了。

 ガブリエラさんもチャラ男も、2~3日はアリッチェに滞在する予定らしい。

 また呼ばれないように、さっさと逃げよう。


 やっと帰れるーと思っていると、チャラ男が顔を近づけてきた。うわっ、思わず遠のく。


「カノンちゃん、夕食どうするのー? 魔熊の煮込みが美味しい店があるんだけどどお?」


「それ多分私が仕留めた魔熊です。あと家で子供がお腹空かして待っているので早く帰ります」


「え? 魔熊……子供……」

 チャラ男が思考停止している間に、走って逃げる。


 ジェマは未成年だから子供で間違いない。

 それに私の子供とは誰も言ってないぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。