102*デモ続き
「そうかそうか。それで物はあるのか?」
小さながま口ポーチを取り出した。
「これです」
「え? これがアイテムバッグ? ちっちゃーい。それに何か可愛い」
「こんな小さいのに魔法陣貼れるのか?」
「内袋に貼ってます」
魔法陣を描いた紙を出す。
「これが従来の魔法陣で、これが新しい魔法陣です。要らない記述が沢山あったので消して小さくすることが出来ました。これだったらポケットにも入るし、持ち歩き楽ですよね」
「ほーお。でも失くしそうだな」
「本人以外が開けない設定をすることが出来ます。落としても勝手に使われなくなります。家族も開けなくなりますが」
「それはちょっと難しいところか。でも家族にも見せたくない物もあるしなぁ」
「えーギルド長、そんなのあるんですか?」
「まあ、そこは商品とするときに話し合いですね。もう一つ、大きな特徴があります。アイテムバッグに入れた物は今まで魔法ギルドのどこかに保管されていましたが……」
「え? ギルドの中に?」
ギルド長もアルマさんも目を丸くした。ギルド員でも知らないのか。
「具体的な場所は解らないのですが。古くから変わっていないとすれば、地下遺跡とかかもしれませんね」
「おー、ギルド本部に地下があるぞ。俺のバッグの中身もそこにあるってことか」
「場所は解りませんよ、私も」
「確かに空中にある訳じゃないんだから、どこかに保管されている筈だよな。それ本部の奴らは知ってんのかな?」
「知らないと思う。そんな話聞いたことない」
「管理者はいる筈なので、一部の秘匿事項かもしれませんね。それで、このがま口は保管場所を変更出来るんです」
「ん? ローマじゃなくアリッチェにとかか?」
「変更出来たとき、一番使い勝手がいいのは、自宅でしょうね」
「なんで自宅にある物を、わざわざアイテムバッグに入れないといけないんだよ」
「家の倉庫にある物を全部持ち歩けるんですよ。従来のアイテムバッグは容量が決まっていたので、大きな物は入れられませんでした。でもこれは保管場所の設定が出来るので、広い倉庫を保存場所にするとそれだけの量が収納出来ます」
「えーすごい」
「それと先程の話ですが、アイテムバッグを落として見付からないとき、誰かに取られなくても、中身を取り戻すことはもう出来ないですよね? でも家の倉庫が保管場所なら、バッグを落としても中身は家の倉庫にあるままです。落としたことに気付いたらダッシュで家に帰って、魔法陣剥がせばいいだけです」
「おーなんてこった。確かにそうだ」
「ギルド長さっきそのがま口にコイン入れてましたよね? 今も入ってます?」
ギルド長はがま口を開けて覗き込んだ。
「あるぞ。ほら」
取り出して見せる。普通の銀貨だ。
「もう一回入れて下さい」
「おう、入れた」
「実はそのがま口の保管場所は、この箱の中に設定してるんです」
私の隣に置いた荷物から、布を取って箱を晒す。
箱の蓋を開けて見せた。
「銀貨だー」
箱から銀貨を取り出して見せる。
ギルド長はがま口を覗いて「無くなった! 俺のだ、それ返せ」
「そういうことなんです」
二人は色んな物を入れて箱を覗いて出して納得する。
「おー凄いなこれは」
「私も欲しいです」
「多分一番の問題は、従来の物は管理料で年間レンタルで10万デナリ貰えていたのが、貰えなくなります。みんな自宅にしちゃうでしょうから」
「それは問題だな、魔法ギルドはアイテムバッグの収入が大きく占めていたから」
「商品にするときは、どこまで機能を付けるかがポイントですね。逆に今アイテムバッグの保管場所を管理している人たちは、維持費がかさむから、もう管理したくないと思っている可能性もありますけどね」
「あるかも。もう保管場所の掃除したくないとか思っていそう」
「はい! 今のが一つ目の商品でした。個人で使うなら問題ないって言ってたので、ジェマに持たせてます。うちの同居人で、さっきギルドに連れてきた子です」
「屋台の売り子の女の子ですね」
「そうです。ではここからが本題なのですが」
声を潜めて話す。
「今の話だけでもびっくりなんですが、まだあるんですね」
「よし、聞こう」
まずさっきのがま口を回収して、箱に入れたものを避ける。
そして新しいがま口2つを取り出し、箱の床に魔法陣シールを貼り直した。
「何をやってるんだ?」
がま口を1つずつギルド長とアルマさんに持たせた。
「保管場所はさっきと同じこの箱です。勿論これも大きな箱や部屋を指定することが可能です」
赤いガラス玉をアルマさんに、青いガラス玉をギルド長に渡す。
「アルマさんがま口に入れてください。はい、箱に入りましたね。アルマさん、がま口覗いたら入ってますか?」
「入ってます」
「ギルド長も自分のがま口を覗いてください。赤いガラス玉入ってますか?」
「入ってる。え、何でこっちからも解るんだ?」
「じゃあ青いガラス玉も入れてください。お二人ともがま口の中に2つ入ってますか?」
「入ってる」「ある」
「じゃあ、この箱の中は」
「あるー。どういうこと?」
「アルマさん、今度は青いガラス玉を出してください」
「はい。えー、私が入れてないのに、取れた」
「ギルド長、赤を出してください」
「おー、二人で使えるってことなのか? 夫婦で同じアイテムバッグが使えるってことなんだな」
「そういう使い方も出来ます」
「じゃあ、どう使うんだ?」
「ギルドに本部と結ぶ魔法の連絡箱ありますよね? あれです」
「おー、そういうことか! でもあれはがま口じゃないぞ」
「がま口じゃなくて箱です。今までは箱の大きさに入る物しか運べませんでしたが、保管場所を大きくすれば沢山の物が運べるようになるんです」
「そうか、本部から馬で運んで来なくても良くなるんだ」
「保管場所はローマとアリッチェどっちに置いてもいいです。全然別なところでもいいです」
「この間試験の道具が壊れて取り寄せたときに、これ欲しかったー。あの輸送でいくらしたと思います? 時間かかって試験に間に合わないところだったし」
「ローマとアリッチェだけじゃなくてもいいんですよ。アリッチェとウベールにも置けますし、全支部間で連絡網が作れます。例えば今までウベールと連絡取りたいときは直接行くか、誰かに手紙を持って行って貰うか、一旦ローマに送ってローマからウベールに送って貰う、と云う流れだったと思うんですが、直接繋げるのですぐに手紙の往復が出来ます。箱の前で待っていれば、まるで会話しているが如く手紙のやりとりが出来るでしょう」
「ほうほうほう、凄く便利だな!」
「出張とか減るんじゃないですか?」
「商業ギルドはどうでしょう? 今私、アリッチェからレインディナに商品の輸送を頼まれているんですが、もしこれが既に設置されていれば大量の荷物を運ぶときも行く必要なくなるんですよ。レインディナまで陸路や海路で運ぶと、日数も料金もかかりますよね。生ものも運べない。でもこれを設置したら?」
「うわー、めちゃくちゃ利益出るな。でもそれされたら商人が仕事無くなって困るんじゃないか?」
「ギルドだけじゃなくて商人が持ってたら? インドまで仕入れに行く必要も無くなります。海賊に襲われることも船が難破することも無くなる。船さえもいらなくなる。経費も掛からないし商品も沢山出回るから安くなるでしょうね。アルマさん、砂糖が沢山入って来るよ」
「是非やりましょう!」
「でも一番のメリットは連絡です。遠くの村から魔獣に襲われたって連絡があれば、すぐにハンターが飛んでいける。疫病が発生したら、薬をすぐに送れるし、こちらも早目に準備できる。隣の国から台風が来るから気を付けてって連絡が来る。今までは各ギルド毎にローマを介してしか情報伝達出来なかったけれど、色んなところと結んでおけば早いです。連絡箱はギルドに置いてありましたが、がま口は持ち歩けるんですよ。魔獣の動きが怪しいから調べてきてってがま口を渡すと、現地から情報を送ってくれる。帰って来る時間が不要だから早く動けます」
「そうか、辺境の砦に設置しておけば、敵国が攻めてきてもすぐに連絡出来るな」
「まあ、そこは微妙なラインではありますね」
「どうしてですか?」
「攻められる連絡はいいですが、攻める連絡にも使えますからね。あそこの砦手薄だから今行けとか」
「ああ」
「軍事利用は出来るだけ避けたいので、そういうライン引きは商品化の際考える必要があります。それに、商人に持たせたとき、砂糖が沢山入って来るメリットはありますが、外国の諜報も紛れ込む可能性があります。密輸もし放題になります。自分も外国の商人なので何とも言えませんが。まあ、すごく便利ですが、定めることが沢山あります」
「そうだなー。これは時間かかるな。魔法ギルドだけって訳にはいかん」
「そうです。これを踏まえての、連名発表で利益半々でいいの理由です」
「面倒なことは丸投げしたいってことだな」
「あはは、よくお解りで。私としては、個人で使用してもいいならそれだけでいいので。ギルドの支部間の連絡なんて自分に関係ないのでどうでもいいです」
「言い切ったな、こいつ」




