101*アイテムバッグのデモ
いつもの月曜がやってきた。
折角週休二日にしたのに、いつもより忙しい土日だったな。
昼まで寝ているとかの選択肢が欲しいが、勝手にエルゼダンテの森まで行ってしまったのは私だった。
アールレイの森で終わらせておけば、優に半日は眠れただろう。
色々白い目で見られたけれど、正直に言おう。
アールレイの森では満足出来なかったんだよ。
もうエルゼダンテの森位のレベルじゃないと満足できない自分がいるの。
血生臭いのは嫌がるクセに、魔熊を屠らないと満足出来ない女になったんだよ、どうしてくれる。
その上に魔熊じゃ満足出来なくなって、魔キリンまで倒してしまった。
動物園とかで見るとでっかいけど可愛いよ、癒しの筈だよ。
今のところラスボスは魔キリンだ。
市場の屋台の売り子では満足できない体になったらしいので、売り子はジェマに任せて、護衛をすることにした。
先週みたいな奴らが来たら速攻捕獲して懸賞金を稼ぐことにしよう。
市場を魔キリンが襲った際にはすぐに行動できるようにシミュレートしよう。
「カノンさん」
刺客か? 後ろを取られた。
振り向くと魔法ギルドのアルマさんだった。
「何だアルマさんか」
「何だって酷いじゃないですか」
「いや、ジェマを守る護衛ごっこをしてたから」
「こんな忙しい状況で、よく暇なこと出来ますね。お店手伝ってあげて下さい」
屋台の行列が長くなっていた。
「しかと心得た」
「大丈夫ですか? カノンさん、今晩空いてます?」
「ん? デートのお誘い? 彼氏いるって言ったじゃん」
「デートじゃないです。ギルド長が呼んでます」
「それは断ってもいいやつ? デートじゃないよね」
「いや、ギルド長に話あるって言ってたのカノンさんじゃないですか。ギルド長が先週ずっと待ってました。ちょっと可哀想でした」
「聞いといてとは言った記憶はあるけど、会いに行くとは言ってないよ」
「構って欲しい年頃なんですよ」
「あの筋肉だるまが? アルマさんの彼氏ってギルド長じゃないよね」
「何言ってるんですか? あるわけないじゃないですか。しばきますよ」
「やめて」
絶対に勝てない気がする。と云うことは魔キリンよりアルマさんは強い。
魔キリンも動けなくしたところをヘッドショットしただけなので、どの位の強さかさっぱり解らないが。組み手をしたら確実に負けるだろう。
腕力には自信が無いので、もしかしたら魔リスにも負けるかもしれないな。うっちゃり!
「解った。夕方行くよ。連絡ありがとう」
「今度お菓子よろしくお願いします」
無駄話をしてたら、また列が長くなっていたので、慌ててジェマを手伝う。
夕方は屋台も落ち着いたので良かった。
帰り支度をしながらジェマに尋ねる。
「今日は魔法ギルドに呼ばれてて、ちょっと長くなるかもしれないんだ。ジェマ、先に帰ってる?」
「またギルドのロビーで待ってます」
「一緒に話聞いててもいいんだけど」
ジェマは大きくかぶりを振る。
「難しい話聞いてると疲れるのでいいです。ロビーで文字の勉強してます」
魔法ギルドならそんな変な人もいないので、ジェマを一人にしても大丈夫だろう。
商業ギルドは絶対無理。
冒険者ギルドも本当は絶対無理だけど、イレーネさんが目を光らせてくれるから安心だ。
魔法ギルドに入ると、すぐにアルマさんに見付かった。ギルド長を呼びに行ってくれる。
冒険者ギルドや商業ギルドと違って、ここはマイペースと云うかゆったりした雰囲気だ。
ジェマが勉強すると云うので、紙を取り出した。
「そうだ、外で書くときはこの紙を使って。こっちの方がノートより品質悪く見えるでしょう?」
「はい、こっちの方がいいと思います」
役所や学校から古い茶色っぽい紙が沢山発掘されたそうだ。リサイクルに回そうとしていたが、真っ白なコピー用紙よりこっちの方が利用価値がありそうと云うことで、前線に戻って来た。
結構量があるのでボーナさんに回してもいいんだけど、B5なんだよね。
やっぱりビジネス文書はA4に統一すべきでしょう。B5でギルドの書類統一された後で、A4を沢山流通させたら二度手間になってしまう。それは前職事務としては容認できないことだ。
B5の紙も合成を使うとA4にサイズ変更出来るが、1枚ずつ作業しなければならない。いくら魂さんだからと云っても、そんな鬼仕事させる訳にはいかないわ。
と云うことでこの紙は、規格に拘らないところで使っていこう。
古い紙とは云っても、今のローマの紙に比べるとこれでもまだまだ品質が良い方だ。これでも攫われる可能性はあると思われる。
「あと暇だったらこれで遊んでて」
懐かしの知恵の輪だ。鉄を曲げただけなので、あっても不思議な商品ではないだろう。
一人で遊べるおもちゃを探したが、この時代に持ち込めそうな物はなかなか無い。
袋の中から一番簡単な知恵の輪を取って実践してみる。
「こうやって全然外れないのに……外れた!」
「えー見えなかった。どうやったんですかー」
「それはジェマが考えてよ、色々あるから暇なときに遊んでてね」
袋に戻してジェマに渡した。一番簡単なのをやって見せたけど、他のはきっと私には外せないと思うな。
遊び道具なんて全然持ってなかったと思うので、こんな物でもジェマにとっては楽しい筈だ。
丁度アルマさんがやってきて、「ギルド長室にどうぞ」と云うので、ついていく。
「こんにちはー」
「おお、やっと来たか。いつ来るかと待ってたんだからな。座れ座れ」
アルマさんがお茶を淹れてくれたので、私はお茶菓子のクッキーを出す。
やった!とアルマさんが喜び、ギルド長の隣に陣取る。
「で、魔法陣解読したって?」
「解読までは出来てないです。解らないところ沢山あります。でも一部変更したら動いたので、使って問題ないのかなと思って」
「本部に聞いてみた。個人で使うんなら別に問題ないそうだ。ただ売るならちょっと利益欲しいそうだ」
「うわっ、清々しくて逆に好感持てますね、魔法ギルドって正直もっとめんどくさいかと思ってました」
「出来れば半分欲しいそうだ。めんどくさい奴もいるぞ」
「えー半分って図々しくないですか? 自分たち全然解読できてないクセに」
アルマさんがクッキーをポリポリ食べながら口を尖らせる。
「あと個人名や商店名で売られると魔法ギルドの体裁が悪いので、連名にして欲しいそうだ」
「図々しい」
ポリポリポリポリ。早めにクッキーの追加補充をした方が良さそうだ。
「正直私も名前出して目を付けられるのが嫌なので、隠れ蓑が欲しいです。魔法ギルドなら願ってもないです。実際の商品の定価や内容に依りますが、半額は妥当な線じゃないでしょうか。魔法ギルドは内容が解らなくても従来の商品を持っていたし、私も一から作れと言われても無理だったので、共同開発で良いと思います。但し、今日持ってきたのはかなりデリケートな物なので、まず世に出すかどうかの話し合いが先に必要です」
「成程。しかし成人したばかりには見えんな」
中の人は32歳。
「親が商人だったので」
これも嘘じゃない。父親が大手スーパーに勤めていた。
商品開発だったけど、スーパーだから商人で間違いないよね。




